若き日の独裁者
アドルフ・ヒトラー。
それは、世界最悪の独裁者であり、ナチスという組織を率いたでもある存在で、歴史オタクではない人間でも、その名を知らない者はいないと言って良いほどに、悪い意味で有名な人間だ。
そんな人物が.......いや、その独裁者の若き日の姿がこれかよ!?
どうりで見覚えがあると思ったわ!!
というか、めっちゃイケメンだなオイ!!
「ど、どうかしました?」
「あ、いや、何でもない」
そういえば.....アドルフ・ヒトラーって、昔、画家を目指していたんだっけ?
なら、美大を目指してもおかしくはない....か。
ん?ちょっと待てよ。
ひょっとして...........俺、独裁者の運命を変えちゃったのか!?
あのビー玉は問題ないと言っていたとはいえ、いざやらかすと、めっちゃ焦るわ!!
「それじゃあ、アドルフって呼んでも良いか?」
「はい!!」
まさか、こんなところでヒトラーに出会えるとは.....人生、何が起こるか分からないもんだな。
「ところで....イオリの家ってどこですかね?」
「ゔっ!?」
やっべ!?タイムスリップしてきたから、泊まるところがない!?
「じ、実は.....泊まるところを探してて.......」
申し訳なさそうに、俺がそう言うと.....アドルフはしばらく考えた後、こう言った。
「だったら、僕の下宿先に行きませんか?」
「え?」
それは、思っていない提案だった。
「それは助かるけど......大丈夫、なのか?」
心配そうに、俺がそう言うと......アドルフは、ニコッと笑った後、こう言った。
「大丈夫ですよ。下宿先の人はとても優しいんです。それに、その人は賑やかなのが好きな人なんです。ですから、大丈夫ですよ」
アドルフがそこまで言うのなら、良い人なのか?
「.......じゃあ、行ってみるか」
そう言った後、俺はアドルフと共に下宿先に向かったのだった。
☆☆☆
「あら〜!!いらっしゃい!!」
橋のところから移動した後、今現在の俺は、下宿先の人こと、オリビアさんに歓迎されていた。
確かに、この人は良い人そうだな。
「初めまして、イオリと言います。どうぞよろしくお願いします」
「イオリ.....素敵な響きの名前ね!!ようこそ!!私の家へ!!と言っても、私とアドルフくんしか居ないけど.....とにかく、私のことはお母さんと思ってくれればいいわ」
......うん、この人を敵に回すと厄介なことになりそうだ。
「じゃあ、イオリくんの部屋を案内するわね」
そう言った後、案内されたのは.....ベッド・机・クローゼット、それから、本棚のある質素な部屋だった。
あ、そっか。
まだこの時代には、テレビが無かったな。
「どう?いいでしょう?」
「はい!!ありがとうございます!!」
「フフッ、おだてても何も出ないわよ」
そう言った後、部屋から出るオリビアさん。
「こういう部屋に、アドルフが住んでいるのか.......」
俺がそう言うと、アドルフは苦笑しながら、こう言った。
「僕の部屋は、画材やスケッチだらけだから、汚いと思いますよ」
「え、見たい」
結局、下宿先の内見がてら、俺はアドルフの部屋に行ったんだけど......
「おぉ.....」
その部屋は、アドルフの言っていた通り、画材や絵だらけになっていた。
「美大の受験生って感じの部屋だな」
「そうですかね?」
少しだけ照れながら、そう呟くアドルフ。
「それで......その、僕的には、漫画を描くのはいいんですけど...........どんな漫画を描くんですか?」
「そうだな.....とりあえずは、日常漫画でも描こうとは思うけど」
「....けど?」
「ぶっちゃけ言えば、絵はアドルフの方が上だから、俺はストーリー担当になるわ」
俺がそう言うと、アドルフは呆然とした後
「え....えぇ!?」
と、驚いていた。
.....そんなに驚くか?
「てことは....イオリさんが物語を考えて、僕は絵を描く..........てことですか!?」
「うん、そうだよ」
「いやいやいや!!無理ですって!!」
首を横にブンブンと振りながら、そう言うアドルフ。
本当に謙虚だな〜。
「さっきも言った通り、僕は人物デッサンが苦手なんです!!だから」
「だから、漫画のキャラが描けない.....ということですか?」
俺がそう尋ねると、アドルフはコクリと頷いた。
う〜む.....だったら
「どこかの工房に、ポージング用の人形の製作を依頼して、完成するまでの間に、ストーリーを考える......ていうのはどうだ?」
これで無理だったら、別の方法を考えるしかないな。
そう思っていたら、アドルフはしばらく考えた後......こう言った。
「.......それなら、何とかなりそうですね」
それならイケるのかよ!!
「よし、それじゃあ決まりだな」
太ももをパンと叩きながら、そう言う俺。
ちょうどその時、オリビアさんの声が聞こえた。
「アドルフくん、イオリくん、ご飯が出来たわよ〜」
どうやら、夕食が出来たことを伝えたかったらしい。
「分かりました!!」
「すぐ行きます!!」
そんなこんなで、1907年のドイツでの一日を終える、俺のだった。
ちなみに....今日の夕食は、グヤージュという煮込み料理とザワークラウト、それから、パンで、味はとても美味しかった。
白米......いつかは食べられるかな?
グヤージュ
ドイツの料理の一つで、いわゆる、煮込み料理の一つ。
例えるなら、シチュー的な食べ物らしい。
主に、牛肉とタマネギ、それからパプリカが入ってるとか。