6話 魔法授業 Ⅰ
椅子に座り、浅井と話す。
今は8:40だ。8:45から学校は始まるのであと5分ほど自由時間である。
「あと5分で始まるのに・・・福井徹也ってやついなくね?」
「だよな。何か嫌な予感がする」
「嫌な予感ってなんだよ?」
ドアが開き、先生が入ってきた。
和澄先生だった。その手には縄が握られており、それは廊下まで伸びていた。
「痛いぃぃ!先生!そろそろ許してください!」
縄の先にいたのはさっきの木を倒した新入生だった。
「えー、それでは1Aを担当することになった和澄悔だ。授業はポ◯モ・・・じゃなくて魔法がメインだ。1年間よろしく。何か聞きたいことはあるか?」
雪乃が手を上げた。
「はい、そこの銀髪」
「如月雪乃です。銀髪はやめてください」
「すまんすまん」
「まぁいいですけど」
「それで?質問があるんだろ?」
「はい!和澄先生は特殊技能持ってるんですか?」
「特殊技能ってなに?」
浅井が質問した。
「特殊技能っていうのは生まれつき人間がもつ、特別な能力ですね。魔法との大きな違いは魔力や魔法陣が必要ないことです。持っていたとしても発現できないまま亡くなる方もいます。」
「どうやったら持ってるって分かるんだ?」
「戦ってる最中に稀に発現出来ることがあるんです。それ以外で判断する方法はありません」
「雪乃さんの"読心術"も特殊技能だったっけ?」
凌大が口を挟んだ。
「そうですね!私の場合は生まれつき発現してたんですけどね!」
笑みを浮かべながら答えた。
「先生はあるんですか?」
「あぁ、一応ある」
「どんな能力なんですか?性能は?発現した時期は?
教えてください!」
「教えるつもりはない」
「ケチ!」
雪乃が頬を膨らませた。
「あのーそろそろ縄を外してくれませんかね?」
完全に忘れ去られていた福井が寂しげにつぶやいた。
「退学になるはずだったのを縄で縛るだけにしてあげたんだ。俺の優しさに感謝しろ」
「いやいや、全然優しくないでしょ・・・・・・いって!更にきつく縛らないでくださいよ!」
先生は福井を更にきつく縛り上げ、天井に吊るした。
「えー、こいつはほっといて朝のSHRを始める!」
「え?このまま?」
「ここは基本的に魔法練習や模擬戦といった授業をする。たまに依頼が入ってくるから、そのときは俺とお前ら5人で依頼をこなすといった形になる。まぁ頑張れよ」
「依頼ってどんな感じになんの?」
浅井が聞いた。
「悪さをしている反魔術師、略して反魔師を倒す、もしくは捕まえるのが普通だな」
「めんどくさそー」
「そういうな。俺だってめんどくさいんだ。話はここまで!魔法練習に移るぞ」
「「「はい」」」
「・・・・・・ぐー」
まだ寝てたのかよあいつ
ほっといたらいつかは起きるだろ。そう思い、みんなと一緒に教室を離れた。
「・・・・・・俺は?」
天井に吊るされたままの福井が悲しそうにつぶやいた。
-第一魔法訓練所-
「それでは授業を始める」
教室から運動場のように広い場所に移動してきた。
「この中で魔法が使えるやついるか?」
「私は一応使えます!」
雪乃が元気よく答えた。
「よし、授業は全部お前に任せる」
「え?先生は授業してくださらないんですか?」
「俺は忙しいんだ授業なんてする暇はない」
そう言いながらスマホを取り出し、画面をいじり始めた。
「先生、何か任務でも受けているんですか?」
凌大が気になって質問した。授業を放棄してまでやらなければならないことなのなら、任務を受けているのかもしれない。凌大はそう考えた。
少ししてから先生は答えた。
「ポ◯モンGOだ」
「え?」
いまなんて?いや、ありえない。聞き間違えだろう。そう思い再び聞き直した。
「もう一度聞きますけど、今何してます?」
「ポ◯モンGOだ」
聞き間違いじゃなかったー
呆れた表情で先生を見つめる。
「授業中に先生がそんなことしてていいんですか?」
「いいんだよ。これもどこにも属していない野生の術師を仲間に加えるという大事な仕事だ」
「・・・それ、都合の良いように言い換えているだけですよね?先生なんですからせめてそういうことをやるのは教えることを教えてからにしてくださいよ」
「はいはい、わかりましたよ」
めんどくさそうに返事をしてからスマホをポケットにしまった。
「じゃあ、何から教えてほしい?」
「魔法の発動の仕方を教えてください」
「分かった。ついてこい」
「はい!」
凌大はわくわくしながら先生について行った。
何やら的があるところの前まで案内された。的は計5つあり、魔法をぶつけた形跡があった。少し遅れてから浅井、雪乃もついてきた。
「見ての通りこれは的だ。これに魔法をぶつけてもらう。」
そう言いながら手の平に魔法陣を作り、水を生成した。
「魔法は魔法陣を魔力で描くことで発動する。魔法陣を描ける場所は自分の魔力があるところなら、どこでも描けるんだ。」
生成した水を凌大の後ろにある木にぶつけた。
「あの水は俺の魔力でできている。当然今も魔力を保っている。あの水をよく見とけ」
木にぶつけたあたりから魔法陣が出現した。そして水を生成し、的に向かって撃ち出された。
ビチャッっと音をたてて、的の中心部分に命中した。
先生は説明を続ける。
「今みたいに自分の身体の近く以外でも、わざと攻撃を外すことで離れた場所からも魔法を発動させることも可能になる」
「へぇー、それは知らなかったです!」
雪乃が関心したように言った。
「魔法陣を描くには自分の魔力を理解する必要がある。これをつけろ」
そう言って何かを投げ渡してきた。
それは時計のような形をしたものだった。
「これに魔力を流せば魔力の属性、種類が瞬時にわかる」
「魔力を流すってどうやるんですか?」
先生は簡単そうに言うが、それができれば苦労はしないのだ。
「全身に流れている血液を集めるようなイメージでやれ。そうすれば意外と簡単に魔力を集められる」
ベルトを腕に巻き、機械の電源を入れた。そして、画面に表示された魔力測定を選択し、測定ボタンをおした。
血液を集めるようなイメージ…手、足、頭、胸、腹、そこにある全神経を測定器に注ぐ。
『測定完了しました。ベルトを外してください。』
どうやらこれで測れたらしい。結果を確認するために再び画面を操作し、結果を選択した。
属性 火/火
「先生、これは?」
先生にこの画面をみせる
「火属性中の火っていう種類のようだな。火力としては全属性内で最高レベルを誇る」
「へぇー、よく分かんないけど当たりっぽいですね」
ハズレではなかったようなので一先は安心だ。
「浅井ーお前は何だった?」
そう聞くと、画面を見せてきた。
属性 光/雷
「雷属性の光っていう種類らしい」
「なんかすごそうの名前だね」
「だよなぁ!俺も気に入ってるぜ!」
「私はこんな感じでしたよ」
属性 自然/土
「土属性の自然か」
「これって強いんですかね?」
心配そうに聞いてきた。
「土属性の自然か、珍しいな。捕獲に特化してる属性だな。全ての属性、種類の中で唯一、回復系の魔法が使えるんだ」
先生が説明した。
「なるほど!回復魔法が使えるんですね!」
嬉しいそうに言った。
「それじゃあ属性もわかったことだし、練習に移るぞ」
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