20話 一回戦
スクリーンには俺の名前が映されていた。どうやら一回戦目に選ばれたらしい。
他の人の試合を見てから戦いたかったけど、仕方ない。さっさと試合場所に行くか。
俺はそう思い、席を立った。
「君、一回戦目に選ばれたようだな」
ふと、横から声が聞こえてきた。声の方向に顔を向けると、そこには福井がいた。
「なんだよ?」
「いや、ただ一言言わせてもらおうと思ってね」
福井はニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべながらこちらを見てくる。
正直言って少々気味が悪い。あと、試合に遅れそうだ。用事ならさっさとしてほしい。
怪訝そうな顔をしているのが自分でも分かるが、相手は福井だ。別に問題はない。逆にそっちのほうが良いとも言える。
少しして、福井は再び口を開いた。
「ドンマイw」
「あっそ」
そう福井に言い放った後、俺はさっさと試合場所に向かった。
「お前、相変わらず性格悪いな」
二人の会話を聞いていた浅井は苦笑いを浮かべながら福井に話しかけた。
「いやいやいや、君!何を言ってるのかな。僕は最高に優しい男だよ?」
「・・・なるほど、話しかける気力も失せたよ」
「なんでやねん」
浅井は再びスクリーンの方に向き、対戦表を眺め始めた。
その顔は呆れの色で染まっていた。
「――――――っと、ここから入れば良いのかな?」
凌大は試合のステージとなる場所への入場のための廊下にまで来ていた。
後は入場の合図がでたら入場し、テキトーに戦って勝てば良いのだ。
これは凌大にとっては初めての正式な魔法勝負。彼はやる気に満ちていた。
「あとは待機か、暇だな」
そうつぶやいた後、ため息を吐いて、用意されていた待機用ベンチに座り込んだ。
『さぁ、両選手準備が出来たようだな!それでは一回戦目をはじめるッ!両選手入場ッ!』
司会者がクセのある声でそう叫んだ。すると、試合ステージの両端から一回戦目の選手が入場を始めた。
二人の選手は堂々と歩みを進め、やがて定位置へとついた。
その立ち姿からでも両者の強さは何となく分かる。
観客の中には強い魔術師を見つけようとこの会場まで足を運んだものもいるのだ。
つまりもうすでに、魔術師としての品定めは始まっていると言えるだろう。
だが、凌大はそんなことは微塵も気にしてなどいなかった。
その視線は真っ直ぐと対戦相手へと向けられる。
対戦相手と目があった。
視線に気づいた相手はこちらをじっと見つめてきた。恐らく強さを見定めているのだろう。
だが、目でわかる強さなんてどうでもいい。魔法の技術は見た目なんかで判断できないからな。
俺は目を閉じ、静かに戦闘態勢へと入る。それに気づいた相手も慌てて構え始めた。
『一回戦 阿賀 義蜜 対 石津 凌大 試合開始ッ!』
試合開始の合図が司会の口から放たれる。それと同時に二人は魔法陣を描き始めた。
空中にそれぞれの魔法陣が描かれる。発動が速かったのは凌大のほうだった。
「中級魔法 炎柱」
魔法陣が回り始め、炎柱が阿賀に向かって放たれた。
「え、ちょ、はぁ!?中級魔法!?」
阿賀は予想外の出来事に目を丸くした。
この大会は初級昇格試験だ。ほとんど魔法の初心者しかいない。
だから使われる魔法はほとんど初級の簡単な魔法なのだ。中級魔法が使えるやつなんてそうそういない。いたとしても5年に一回程度だ。
つまり、目の前にいる相手は5年に一度の天才ということになる。
ついてねぇなぁ。
心の中でそうつぶやき、両手を上げた。
「降参!俺の負けだ」
痛い目見るぐらいならさっさと降参する。試験は来年もあるんだ。別に今受からないといけないわけでもない。
来年また受ければいいさ。
阿賀はそう考え、降参を選んだ。
目の前の炎柱は、阿賀が降参すると段々と小さくなっていき、やがて消滅した。
凌大は驚きを隠せないでいた。
え?これだけで勝てんの??
予想以上に楽勝で勝てた。この大会はそんなにレベルが高くないのかもしれない。
このレベルなら、俺でも優勝狙えるか?いや、それは楽観視し過ぎか。
なにはともあれ一回戦目は勝利だ。今はそれでいい。
観客席からは拍手が起こった。
『一回戦目決着!勝者 石津 凌大です!』
司会の人がそう叫ぶと、観客席もより一層騒がしくなった。戦った両選手への称賛の言葉が投げかけられる。
凌大は阿賀の方に向き直り、姿勢を正した。向こうもこちらに合わせて姿勢を正す。
そして両者お辞儀をした。
「「ありがとうございました!!」」
そう言い合った後に、両選手は退場した。
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