2話 出会い Ⅱ
身内が亡くなったのに何も感じない。そんな自分に嫌気が差してきた。
「俺、魔法高等学校に入学しようと思います。」
そう決心したのは父親がどんな人だったのか、どんな功績を残したのかを知ろうという心からだった。
全く知らない相手のことになにか感じることなんてあるわけがない。それが当たり前。
だが、それを当たり前だと考える自分に嫌気が差す。
ならば、魔法高等学校に入学し、父親のことを知ろう、そう考えた。
「本気?二言はないね?」
「はい!自分なりに覚悟はできているつもりです」
男性は笑いながら言った
「いいな。俺にはそういうめんどくさいことからは逃げるという選択肢しかないからなぁ。少し君が羨ましいよ」
「逃げるってどこに?」
浅井がどうでもいいことにツッコんだ。
「公園のベンチに座って夢の中に逃げ込むのさ。」
…え?ということはまさか…
「もしかして授業サボって公園で寝てたんですか?」
「お前はアホか?今は夏休みだぞ?授業なんかない。ただ学校の業務をサボっただけだ」
「それ十分アウトなんじゃ…」
「仕事より自由が優先だよな!」
……浅井お前やっぱり思考回路狂ってるだろ。
そう思いながら男性に視線を向ける。
「そう言えばまだ名前を聞いてなかったですね」
「ん?あぁそうだったかな?」
「和澄悔だ。先生と呼んでくれ。お兄さんでもいいぞ」
「そのくだりまだ続いてたんですね」
苦笑いしながら言った。
「俺は石津凌大、こっちは浅井俊ですね。」
軽く自己紹介と雑談をした。
「よし、入学すると決まったことだし魔法高等学校について説明しようじゃないか」
「魔法高等学校ってどこにあるんだ?」
浅井が質問した。
「魔法高等学校は全国で計3か所ある。青森県と京都府と鹿児島県だな。正式名称は青森県立魔法高等学校、京都府立魔法高等学校、鹿児島県立魔法高等学校だな。ここから一番近いのは鹿児島県立魔法高等学校だからそこに入学することになるな」
「ふーん」
和澄は話を続けた。
「魔法高等学校を経営しているのは魔法研究庁とか言ういわゆる役所ってやつだな。お偉いさんとでも思っておけばいい。まぁお偉いさんの話はおいといて、魔法高等学校の教育の目的を詳しく話すとするか。魔法高等学校ってのはなさっきも言ったが、正しい魔法の使い方を学ぶところだ。だが、もっと詳しく言うと魔法から人々を守るためにあるとも言える」
「なんか矛盾してません?」
「目には目をと言うだろ?魔法には魔法をぶつけろってことだ」
「つまり魔法を悪用する人がいると?」
「正解だ。要するに魔法を悪用するのを防ぐためと魔法を悪用する人から一般人を守るために存在していると言えるな。ちなみに悪用する奴らのことを反魔術師という」
なんかよくわからないが、魔術師にも正しい者と悪い者の2種類いるらしい。
「魔法高等学校の話はこのくらいだな。魔力や魔法については後々話そうか」
「鹿児島県立魔法高等学校ってどこにあるんですか?」
一番気になっていたことを聞いた。もし遠いところにあるのであれば通うことは不可能であるからだ。
「んー山の中だけどいいところだ」
「山の中って、ここからじゃ通うの無理じゃないですか?」
「大丈夫だ。寮があるからな」
寮があるのなら問題はないか。
入学の日は先生が案内してくれるからこの公園に集合する。
最終的にそう決まった。
その後解散し、母に魔法高等学校に入学したいことを告げると
「父親と同じ仕事につきたいんだね」
と嬉しそうにした。予想外の反応だったが、許可を取ることはできた。
そして時は2023年春に戻る。