18話 久遠の君へ
各々の休日を過ごした後、今日はついに初級昇格試験当日となった。
試験会場では緊張、不安、やる気など、様々な感情を感じている人々で溢れかえっていた。
凌大たちは推薦によって本選からの出場となる。本戦に出場できるのは予選の上位20名と推薦枠10名の計30名だ。この中からさらに絞られ、上位10名に初級への昇格が認められる。
初級昇格試験の幕が開けられた。
「ん、あ?あぁ、朝か」
和澄は暖かな日差しを感じて目が覚めた。目の前に広がる光景はいつもと同じ我が家の風景だ。いわゆる和風の家というやつだ。
障子、襖、畳などなど、最近見ることは少なくなってきたものがたくさんある。
布団から抜け出し、玄関へと向かう。歩くたびにギシギシと畳が音を鳴らす。その足並みに迷いはなかった。
ズカズカと玄関まで歩いていき、ガチャリとドアを開け、外へと出ていった。
チャポン、
蛇口をひねり、バケツへと水を注いでいく。水に勢いはなく、チョロチョロとでるだけだ。それも仕方がないことだろう。なにせここは山奥なのだから。
和澄が向かったのは山奥にあるお墓だ。いつもこの時期には墓参りに行くことにしている。勿論、この時期にすることには特別な意味があってのことだ。
水がいっぱいに入ったバケツとひしゃくを手に持ち、とあるお墓の前に立つ。
和澄は墓石に水をかけた。
「お前知ってるか?今日は初級昇格試験!魔術師の夢のイベントだ」
水を注ぎながら、和澄は少しだけ悲しそうな表情をした。
「今回は俺の生徒たちも出場するんだぜ!今年の1年生はみんな優秀だよ」
墓石の上にかけられた水は下へ下へと流れていく。最後にはポタポタと地面へと落ちていった。まるで涙のように。
和澄は墓石に手をのせた。
「なぁ、浩太。俺の生徒たちの活躍、ちゃんと見とけよ」
和澄はしみじみとつぶやいた。
「イヤッフー!」
片手を上に上げて、ジャンプしながら叫んでいるこのお調子者は俺の友達、浅井俊だ。
俺たちは今、初級昇格試験の会場の入口にいる。見渡す限り人、人、人。初級昇格試験を観戦しにきた客と出場者で埋め尽くされていた。
「なぁ、凌大!ついに俺が初級魔術師になる日がきたぜ」
「まだ始まってすら無いのにか?」
「俺等ならよゆーよゆー」
そう言いながらニカッと笑った。
まったく、こいつは朝からテンション高いな。ついていけねーよ。
そんなことを考えていると、不意に後ろから肩を叩かれた。誰だ?と思い、振り返るとそこにいたのは和澄先生だった。相変わらずボサッとした髪の毛だ。
「よお、みんな、昨日はよく寝れたか?」
「昨日は緊張してよく寝れませんでしたよ」
凌大が返答した。その後、和澄の顔をじっと見つめた。
「先生こそよく寝れたんですか?くまがありますけど・・・」
先生の目の下にはくまがあり、目もウトウトしている。どう見ても寝不足のようにしか思えなかい。いつもだらしないけど、こんなことは今までなかったのだ。
先生は笑って答えた。
「あぁ、2時間も寝たから大丈夫さ」
「いや、寝てなさすぎですよ!もう少し寝ないと!」
ピースをしてニカッと笑い、問題なさそうに言ったが、どう考えても2時間は少ないだろう。凌大は和澄を心配そう見つめる。
「大丈夫だ。心配そうな顔をするんじゃない」
「そうだよ、凌大。先生の体調よりも試験を気にしろよ」
浅井がフォローしたが、それは逆効果だったようだ。和澄がものすごい剣幕で浅井を睨みつけた。
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