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16話 初級昇格試験 前夜祭 【前編】

 「では会議を始める」


 とある山の中、秘密裏に会議が行われていた。

 そこにいるのは柄が悪そうだが、魔術師と思われる人達だ。

 一人のリーダーらしきものがホワイトボードの前に立ち、説明をしている。


 「明日、初級昇格試験があるのは知ってるな」

 

 リーダーらしきものはホワイトボードに文字を書き始めた。


 書き終えると黒板をバンッ、と叩いた。

 「今回任務は初級昇格試験の本戦に出場したものの殲滅だ」


 そこに集まっていた魔術師たちは全員、反魔術師協会に所属している反魔師だった。今回は任務の説明を受けるために集まったようだ。


 「どうせガキばっかりだろ、そんなのほっとけばいいじゃねぇか」

 「そうだ!ガキ共殺っても何も面白くねぇ」


 反魔師たちから不満が漏れる。

 さっき話した二人だけではなく、その他大勢もほとんど不満があるようだった。中には怒りをあらわにするものもいた。


 「静粛に!これは三条百済様からの直々の任務だ!拒否権はない」

 

 そう言ってもまだ反魔師たちの気持ちは不満で溢れていた。なんでそんなしょうもないことを俺達がやらないといけないのかと言いたげだ。


 ここに今集まっている者たちはそれなりに階級の高い者たちだ。

 全員中級以上。上級も数名いる。いつもは手応えのある任務ばかりこなしている。そのため、この任務の内容に納得がいかないのだろう。


 「三条様が言うにはこの任務で絶対に抹消しないといけないものが二人いるらしい」

 そう言いながら、ホワイトボードに二枚の写真を貼り付けた。


「この二人だ。一人は石津凌大(いしつりょうた)という赤い眼のガキだ。もう一人は和澄悔(わずみかい)という教師らしい」


 反魔師たちはその写真を食い入るように見つめ、驚いたような表情を浮かべてある単語をつぶやいた。


 「魔赤眼(ませきがん)!!」


 その赤い眼はまさしく魔眼、魔赤眼だった。

 そもそも魔眼というものはこの世で一人しか持たない。正確に言うと魔赤眼、魔青眼、魔黄眼をそれぞれ一人ずつが持つ。この世で同じ種類の魔眼を持つものが二人も存在することはありえない。

 魔眼は持ち主が亡くなった瞬間、それと同時に生まれた別の子供へと引き継がれる。


 つまり、凌大は神に選ばれた一人ということになる。


 反魔師たちはニヤリとほくそ笑んだ。

 


 「お前らの言う通り、こいつは魔赤眼を持っている。まぁそれはおいといて、こいつの話だ」

 そう言って和澄悔の写真を指さした。

 「三条様いわく、かなり強いらしい。その強さは三条様を凌ぐそうだ」


 

 三条百済は反魔術師協会の中で幹部格だ。その実力を超すものはこの世にはほとんどいない。本当にその彼を超える強さを持っているというなら今回の任務は決して楽なものではなく、高難易度。しかも中級では足手まといになるほどの任務ということになる。


 腕が鳴るな


 反魔師たちはみんなそう考え、先程までの不満はなくなり、明日が待ち遠しいと言わんばかりに笑みを浮かべていた。


 「では詳細を説明する」

 そういった後、長い長い作戦会議が行われた。







 作戦会議が終わった後、反魔師たちはゾロゾロと会議室から出てきた。みんな満足そうな表情を浮かべている。


 「おい、圭佑(けいすけ)!腕が鳴るな!」

 「あぁ、明日が楽しみになってきたぜ!」


 片手に飲みかけの缶コーヒーをもちながら歩いている、圭佑と呼ばれる男性は満面の笑みで返事を返した。


 会議は山奥にひっそりとある寺で行なわれた。誰も使っていないのに結構な大きさである。会議部屋から出ると、そこからは長い廊下があり、玄関へと繋がっている。

 彼らは今、その長い廊下にいる。


 「作戦はバッチリだし、成功しか見えねぇよな!」

 他の誰かも満足そうにつぶやいた。


 反魔師たちはゾロゾロと廊下を歩き、やがて玄関へとついた。


 玄関につくと、彼らは靴を履き、寺の外へと向かう。

 目の前には山の風景が広がっていた。見渡す限り、一面木だらけだ。

 反魔師たちは美しい景色をしばらく眺めていた。すると、一人の反魔師がとある大きい岩の上に妙な影を見つけた。


 そこには見慣れない人影がひとつあった。


 「ん?誰だ?」


 一人の反魔師がボソリとつぶやくと、その人物はこちらに気づいた。


 「よう!」


 その人物は右手を頭の高さまで上げ、元気よく声をかけてくる。

 反魔師たちはその顔に見覚えがあった。

 いや、逆に見覚えがない方がおかしい。


 なぜならそいつは先程の会議で要注意人物として紹介されていたからだ。



 緑色の眼、ボサッとした髪の毛、スーツ、身長


 それらの情報がそいつの正体を導き出していく、反魔師は皆、彼の正体に気づいた。


 「お前、和澄悔か!」

 「御名答、よく知ってたな」


 和澄はそういった後、頭をボリボリとかいた。

 座っていた岩から飛び降りた。そしてため息をつく。


 全く、こんな面倒くさいことさせやがって。学長め。





 「どうしてこうなった・・・」

 福井も寮に帰ってしまい、和澄は教室で取り残されていた。

 誰もいなくなった教室は静かで、不気味とも言える雰囲気がある。


 「もう少し何か返してくれてもいいだろ、無言で出ていくなよ」


 和澄は窓のところに歩いていき、窓の外の景色を眺めた。日はそろそろ落ちそうだ。きれいな夕日が空を赤色に染めている。

 空の色に見入っていると教室のドアからノックが聞こえてきた。


 「あ゙?」

 ドアの方を見るとそこには学長がいた。

 ドアによかかるようにして腕を組み、こちらを厳しい目つきで見てきていた。


「和澄君、君に用がある」

 「・・・・・・」


 和澄は無視して再び窓のところに戻り、夕日を眺めた。

 学長は話を続ける。


「今回の初級昇格試験、反魔師が襲撃してくることが分かった」


 !!


 和澄は目を見開き、驚いたような表情を見せた。

 だが、それもつかの間。また真顔に戻り、夕日を眺めている。


 学長は表情一つ変えず、話を続ける。


 「今回、君には我々があぶり出した敵のアジトを潰してもらう」


 「・・・で?何で俺なんだよ」


 和澄は振り向いて学長の方を向いた。その目は学長を睨みつける。


 「敵の戦力が予想以上に強くてな、報告によると全員中級以上だそうだ」


 学長は和澄の方に向かって歩き始めた。

 和澄の前で止まり、肩にポンッと手をおいた。


 「だから最上級魔術師である君が抜粋されたというわけだ」

 「・・・他にもいるだろ」


 肩に置かれた手を払い、学長に背を向けた。


 「あいにく君以外はみんな忙しくてね・・・・・・やってくれるだろ?」

 「俺に利はあんのか?」

 「あるとも、大事な生徒たちを守れるじゃないか」

 「・・・・・・」

「またあの時と同じことを繰り返す気か?」

 「・・・分かった、やってやるよ」


 和澄は渋々承諾した。

 夕日はより一層赤く輝き、次第に沈んでいった。








「正直に言う、面倒くさい。一瞬で終わらしてやるよ」

「調子に乗んなよ」


 反魔師たちは一斉に魔法陣を展開した。

 標的はもちろん和澄たった一人。

 全方向からの集中攻撃が始まろうとしている。


 これはまずい。

 

 「あー、それは面倒くさい。じゃあこうしよう」


 和澄の眼がキラリと輝いた。

 そして右手を振り上げ、天を指さした。


 「ここを中心として半径1km以内の俺以外の者は魔法禁止!!」

 「何を寝ぼけたことを、そんな挑発に誰がのるかよ」


 反魔師たちは一斉に和澄に向かって魔法を発動させた。全方向から魔法が押し寄せ、和澄は死に至るほどのダメージを受ける。


 ・・・はずだった。


 魔法は発動しなかった。全員が不発。それはありえないことだ。

 原因不明のこの出来事、頭に浮かぶのはあの言葉


 『半径1km以内の俺以外の者は魔法禁止な』


 あれは挑発ではなく本当なのではないだろうか、全員がそう思った。



 和澄の特殊技能は『無効化』、その名の通り魔法などを無効化できる能力だ。ここにいる中で和澄の特殊技能を知っているのは和澄の他にいない。

 和澄は特殊技能を使い、自分以外誰も魔法が使えない状況を作り出してみせた。


 「くっ!」


 反魔師たちは原因が分からず、体術のみで和澄討伐に挑む。中には武器を持っているものもいる。


 「やれやれ、往生際が悪いな。潔く負けましたって言えよ」

 「何を馬鹿なことを、勝負は始まったばかりだろ」


 反魔師の一人が和澄に向かって蹴りを入れる。和澄はヒョイっとよけ、氷でそいつを固めた。


「くそっ!近くに行くとやられるぞ!」


 その様子を見た他の奴らは一斉に和澄から距離を取った。


 魔法を使うこともできず、近づくと氷漬けにされる。この状況では何もできない。

 反魔師たちはギリッと歯を噛み締めた。


 「では諸君。お別れだ」


 和澄は魔法陣を展開した。それは2つの魔法陣。

 片方はいつもの上級魔法、水雷。もう片方はいつもとは少し違う。水雷の魔法陣の中に更にもう一つ、初級魔法、水操作を仕込んであった。

 普段は魔法陣無しで使う初級魔法。だが、和澄は今、初級魔法の魔法陣を展開させた。

 それには勿論意味があってのものだ。


 簡単に言えば性能を上げるため。より精密な魔力操作をするためだ。

 だが、和澄が今回作ろうとしているのはただの水ではない。『反水』だ。


 反水は簡単に言ってしまえば水と比して質量とスピンが全く同じもの。だが、構成する素粒子の電荷などが全く逆の性質を持つ反粒子によってできているもののことだ。

 反水を簡単に作ることできない。

 だから和澄は魔法陣を展開して、反水を作れるほどの精密な水操作を可能にしているのだ。


 和澄の意識は完全に『反水』を作ることに向けている。そのせいか、周りへの注意が足りていない。


 その隙に気づいた反魔師数名は和澄に向かっていった。気づかれないように慎重に息を潜めて。

 そして和澄の後ろへと回った。和澄は全く気づいていない。反魔師の一人がナイフを取り出し、和澄に向かって突き出した。


 キィン!


 甲高い音を立てて、ナイフは弾かれた。

 和澄はまだ気づいてはいなかった。

 だが、身に危険が及ぶと察した身体が無意識に身体を氷で覆い、ナイフから身を守った。


 反魔師はポカンと口を開け、呆然としている。

 

 ――っ!しまった!

 

 そう思ったのも束の間だった。


 「相反する澄よ粒子の混濁を経てここに尊厳を放て」


 和澄がそう言うと同時に、魔法陣の一部が急速に回転していく。


 「水明 波の綾 水鞠」

 「流動する澄よ、此岸の怨敵を禊げ」


 そう言い放つと全ての魔法陣が急速に回転を始めた。

 和澄がしたのは詠唱による魔法陣の"溜め"時間の短縮だ。本来ものすごく長くかかるはずの反水生成と水雷の同時展開。だが、詠唱により、その時間は半分以下に縮まった。


 「上級魔法 水雷 反水雷」


 放たれたのは2つの水雷。

 一つは通常の水雷、二つ目は反水で作られた反水雷だ。2つとも大きさはかなり小さかった。


 「何だよ、あれ。小せぇじゃねぇか、ビビらせやがって」


 反魔師たちの間からは張り詰めた空気は消え、表情は緩んでいる。


 「何が上級魔法だよ!ただの勢いがあるだけの水滴じゃねえか!」

 そう言って鼻で笑うものもいた。


 二つの水雷は弧を描くように右と左、それぞれの方にまがり、軌道が重なるところで衝突した。


「始祖級魔法 虚空春雷(こくうしゅんらい)

 衝突したと同時に閃光を放った。


 何も音が聞こえない。何も感じない。それほどの衝撃と振動、熱と爆風が周囲に放たれた。









 「んだ?ここ?」

 そこに広がるのは公園のようなところ。だが、普通の公園とは雰囲気が全然違う。何と言うか、不気味なところだった。


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