15話 休日
初めての任務を終え、今日は休日となる。
凌大はベットから起きた。時計を確認すると今は6:00のようだった。
いつも通り朝起きてから顔を洗い、歯磨きをして朝食を食べに行く。
ドアを開けるとそこにはちょうど浅井がいた。
「よ!おはよう」
「あぁ、おはよう」
まだ眠たく、目を擦りながら返事をした。
「今日は休日だよな。お前なんか予定あんのか?」
「何もねぇよ」
他愛のない会話をしていると食堂についた。いつも通り朝食をもらい、食卓につく。
いただきます。
そうつぶやいて、ご飯を食べ始めた。
ご飯を口へと運ぶと弁当とはまた違う美味しさが口へと広がっていく。
凌大たちは中学生のころは昼食は家から持っていく弁当だったのだ。
食事を堪能していると浅井が声をかけてきた。
「暇なら今日、一緒に絵をかこうぜ」
「何で絵なんだよ。お前そんな趣味あったか?」
浅井に絵を描く趣味があることは聞いたことがない。そもそも絵を描く道具なんてあいつもってたっけ?
今日の朝食は味噌汁とご飯と魚といった普通って感じのものだ。
味噌汁の中の豆腐を箸でつかみ、口へと運ぶ。
「ここの木って綺麗じゃん?なんか描きたくなってきたんだよ」
「まぁそれは別にいいんだが、お前絵の具持ってんのか?」
「・・・・・・持ってないや」
凌大ははぁ、とため息を付いた。
「じゃあまずは絵の具道具を買いに行こうか」
「だな」
******
凌大たちは必要なものを買うために山を出て、近くにあった文房具屋で探していた。
「なぁ、どんな感じのやつがいいんだ?」
「俺に聞くなよ。わかるわけ無いだろ」
文房具屋には色んな種類の絵の具道具があり、素人の二人にはどれがいいかなんて到底わかるものではなかった。悩んでいると後ろから誰かが声をかけてきた。
「・・・凌大くん?」
その声には聞き覚えがあった。
そこにいたのは雪乃だった。手には鞄があり、何か買いに来たのだろう。
「何してるんですか?」
「いやぁ、絵の具道具を買おうと思ったんだけどどれが良いのか分かんなくてさ」
「そうですか・・・こんなのはどうです?」
そう言って雪乃が手に取ったのは絵の具道具セットだった。小学生でよく貰うやつだ。
「遊びで描くならちょうどいいと思いますよ」
「じゃあこれでいいや」
浅井が受け取り、2人分のセットを持ち、一緒にレジへと向かった。
購入したあとの帰り道、凌大たちは3人揃って歩いていた。
雪乃が浅井へと言葉を投げかけた。
「絵を描く趣味があったんですね。意外です」
「別に趣味じゃないけどな。ただ描きたくなっただけ」
「ふーん」
山へと向かうコンクリートの道は終わり、ここからは山道となる。
凸凹とした不安定な道だ。転ばないようにしっかりと踏みしめて歩く。
「相変わらずこの道はきついな」
「ですよね・・・もう少し整備して欲しかったです」
これでも整備しているのだろうが、それでも時折転びそうになる。
「で、浅井。どこで絵を描く気なんだ?」
「あぁ、もう決めてんだ」
そう言うと山道を走って先に行く。
「おい、浅井。お前そんな走ってるとこけるぞ」
慌てて雪乃と凌大も追いかけた。
「ここさ」
浅井の髪の毛が風でなびいた。
そこは一面野原が広がっていた。周囲に木はほとんどなく、あるのは一本だけ。
何百年もあったんだろう。とてつもなく巨大な木だ。
「こんなところあったっけ?」
「あぁ、学校から結構近くだ」
凌大たち3人は草の上に座り、スケッチブックと絵の具と筆などを鞄から取り出した。
「あのでかい木をかこうぜ」
「分かった」
スケッチブックに軽く下書きをした。書き終えると鉛筆をしまい、パレットを取り出す。
「そういえばさぁ、下級昇格試験ってどんな感じなんだろうな」
「確かに。でもテキトーにやればできるって」
「世の中そんなに甘くないだろ」
凌大はそう言いながらパレットに黄色と青色の絵の具を出した。そしてその2つを混ぜて木の葉の色を作り出した。
「凌大くんなら余裕だと思いますよ」
「そうかなぁ」
「和澄のやつも言ってただろ。何をそんなに心配してんだよ」
「万が一ってものがあるだろ」
木の葉の部分に色を塗っていく。先程まで白黒だった平面の世界は一気に色鮮やかへと変わっていった。
「なんとかなるって」
「・・・そうだな」
凌大は返事を返した。
******
「完成です!」
雪乃が大きな声で言った。そしてくるりと凌大の方を向く。
「凌大くんはできましたか?」
「あぁ、できたぞ」
「俺も」
日はもう暮れ、鮮やかな夕日が野原をを照らしていた。
「どんな感じに描いた?」
「こんな感じ」
浅井が二人に見えるように絵をかかげた。
それに続けて雪乃と凌大も見えるように絵をかかげる。
「・・・雪乃上手くね?」
浅井が感嘆とした声を上げた。
「だよな」
雪乃の絵はこの中で圧倒的に上手で芸術的だった。部屋に飾りたくなるほどに。
「趣味でよく描くんですよ」
雪乃はニコリと微笑んだ。
「へぇーすごいな」
そう言うと雪乃は嬉しそうな顔をした。夕日が雪乃の顔を照らして赤く染める。
そして雪乃はもう日が落ち始めていることに気づいた。
「そろそろ寮に戻りましょうか。日が暮れますよ」
「そうだな」
凌大が返事をしたあと、絵の具や筆などを片付け、鞄の中に入れた。そして寮の方へと進んでいく。
「あれ?」
少し歩いたところで凌大が声を上げた。その目線の先には先程の木がある。
「どうしたんですか?」
「この木・・・傷がある」
「え?」
木を見てみると確かに傷があった。それは先程私達が見ていた方の裏側だ。ちょっとやそっとではつかないほどの大きな傷が木には刻まれていた。
雪乃は木の傷へと近づいていった。そして顔を近づける。
「これ、そこそこ昔にできた傷ですね。十数年くらい昔かと」
雪乃は木の傷をまじまじと見つめてつぶやいた。
「そういうの分かるの?」
「はい。私、植物には詳しいですから」
雪乃が言うならその通りなのだろう。凌大はそう思った。
「ふーん」
「おーい!お前ら何してんだ。さっさと帰るぞ!」
浅井が遠くの方から声をかけてきた。
「おう!今行く!」
凌大は浅井のいる方向へと再び歩き始めた。雪乃もそれに続く。
初級昇格試験頑張ろう。
凌大は心のなかでそうつぶやいた。
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