13話 初任務 Ⅴ
三条の体は凍りつき、動くことができなくなった。それは初級魔法"凍結"だ。何の変哲もない基礎の魔法。だが、何かに違和感がある。
魔力?強度?魔法陣なしで発動させたこと?
いや、それは違う。それに違和感などない。
なんだ?何に違和感がある?
頭の中にある違和感が身体の中を駆け巡る。そしてその違和感の正体に気づいた。
魔法に発動させるときに必要なもの、それは自分の魔力と魔法陣だ。魔法陣を省略することは可能。だが、自分の魔力が無いところからは魔法は発動できない。
あのとき凌大たちを凍らせることができたのは熱波で俺の魔力があいつらについていたからだ。
それは初心者によくあるミス。普通は敵の魔法を受けたらその瞬間に己の魔力で上書きし、自分の身体から敵の魔法が発動されるのを防ぐ。
俺があいつの魔法を受けたのか?そうでなければこれだけの距離があるのに俺の身体から魔法を発動させるなどありえない。
だが、魔法を受けていたとしても俺は常に自分の魔力で上書きをしている。よってその可能性もありえない。
「お前、何をした?」
「何って、初級魔法だが?」
キョトンとした顔で平然と答えた。
「違う。そこじゃない。なぜお前の魔力がない所から魔法を発動できるのか聞いてんだ」
三条は苛立っていた。
「それは企業秘密ってやつさ」
「それだけじゃない。なぜあの熱の中を生身の状態でいたのに生きてんだ?」
「・・・言うわけねぇだろうが」
三条は無言で刀を構え、和澄に斬りかかった。和澄は身体の表面に氷を張り、刀を受け止めた。
三条は氷に向かって魔法を放つ。それは初級魔法の熱生成だった。
熱は膨大な魔力により、即死級の温度を放つ。
みるみるうちに氷は溶かされ、隙が生まれたところに刀を振り下ろす。
「おっと」
咄嗟に身体をひねり、危機一髪で刀を避けた。
和澄は三条の上に氷の槍を作り、三条に向かって落とした。三条は刀を構え、槍を切りつける。
その瞬間、槍は水へと変化した。その瞬間和澄は軽く詠唱する。
「上級魔法"水雷"」
元々氷の槍だった水は詠唱と同時に爆発を起こした。
周囲に爆風が広がる。
「やっぱりこの程度の威力じゃ倒せないか」
三条は爆発が起きる直前にその場から離れ、氷を足場にして空中に逃れたようだ。
「どうした。もう打つ手なしか?」
こちらをあざ笑うような口調だった。
その言葉を聞き、和澄はフッと笑う。
「打つ手なしはお前の方だろ」
「・・・・・・」
三条は何も言わなかった。
「図星か」
「・・・聞いてねぇよ。お前みたいな教師がいるなんてな。話が違う」
三条は刀を鞘に収め、空中から飛び降りた。地面に着地すると同時に魔法陣を描いた。
そして広範囲に熱波を放つ。
魔法陣により威力が上がった熱波が和澄に押し寄せていく。
和澄は水を生成し、熱波を消した。
三条がいる方を向いたが、もうそこには誰もいなかった。
「こっちだ」
背後から声が聞こえた。
咄嗟に振り返ったが、もう既に時遅し。
三条のパンチが和澄の腹に叩きつけられた。
「がっ!」
和澄はそのまま衝撃で後ろへと吹き飛んでいった。
「くそっ!」
和澄は魔法陣を描いて水の壁を生成した。そしてそのまま水の壁に突っ込む。
水の壁は和澄を受け止め、衝撃を吸収した。
三条は続けて魔法陣を描いた。そして詠唱した。
「上級魔法 熱弾」
再び熱の塊が和澄に向かって飛んでいき、見事和澄に命中した。
再び和澄の周囲50mに即死の高温が放たれる。
その瞬間和澄はある言葉をつぶやいた。
「対象:熱弾」
熱弾は跡形もなく消え去った。
「は?」
三条が驚いてる隙を狙って和澄は三条の背後に魔法陣を描き、魔法を放った。
「上級魔法 水雷」
三条は膨大な魔力放出を感じ、咄嗟に振り返った。その瞬間爆風と閃光が、放たれる。
「―――――っ!」
ドゴォォォォン
周囲に爆音と爆風が放たれた。
煙が無くなくなると地面がクレーターのようにくぼみができていた。三条の姿はどこにもない。
「逃げたか」
和澄は天を仰ぐ。
空はあざやかな赤色をしていた。太陽はそろそろ沈みそうだ。
空を染める夕日は何かを訴えるかのように光り輝いた。
「クソが・・・!」
三条は森を出てすぐそこにあるコンビニの壁にもたれかかっていた。
全身傷だらけになり、右足は骨が折れているようだった。
咄嗟に重力操作をつかって逃げたからこの程度の怪我で済んだ。だが、一瞬でも遅れていれば死んでいただろう。
「誰だよ!あいつは!」
三条は叫んだ。周りの人々は怪しげに彼を見つめたが、見て見ぬ振りをしてさっさと三条から離れた。
初任務編はようやく終了ですね。思ったよりも長くなりました。(本当は2話構成の予定だった)
それはさておき次回は任務後のお話です。お楽しみに!
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