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11話 初任務 Ⅲ


 「こいよ、ガキ共」

 ポケットに手を突っ込み、こちらを睨んでくる。腰には刀がぶら下げられていた。その威圧感は桁違いだ。



「凌大、死にそうになったら変わってやるから全力でやれ。これは遊びじゃない」


 固まった俺を動かしたのは和澄先生の一言だった。

 

 相変わらず岩に座りながらスマホをいじっているが、この一言は俺を動かす動力源となる。

 

 初手から全力でいく、出し惜しみはなし!本気で行け!



 自分に言い聞かせた。

 軽く2、3回その場でジャンプして、戦闘態勢に入る。そして、魔法陣を描いた。

 描くのは中級魔法"炎柱"だ。複雑な式だが、覚えてしまえば大して難しくはない。

 

 凌大は素早く陣を描き、軽く詠唱をした。


「中級魔法 炎柱」


 先程と同様に炎の渦が高速で三条を目掛けて突き進んでいく。

 三条は魔法を撃ち出すような気配は見せず、ただ炎柱を見つめていた。


 ・・・なぜ魔法で相殺しない?そのままだとお前の負けだぞ?


 そのまま炎柱は勢いを緩めることなく、森の中の木々をへし折りながら三条の目の前まで到達した。

 

 当たる寸前で三条百済は炎柱に手をかざし、触れると同時につぶやいた。


 「対象:炎柱」


 その言葉を放った瞬間炎の渦は地面へと落ち、消された。


「は?」

 さっきまで高速だった炎柱があいつの手に触れた瞬間、地面へと叩き落された。

 魔法?いや、それはない。魔力の気配がしない。ならなんだ?素手で叩き落としたのか?現実的にそれもありえない。


 ならどうやったんだよ。


 頭の中に疑問符が浮かび上がった。


「特殊技能です!!」

 雪乃が叫んだ。


「特殊技能は対象に触れる。もしくは至近距離に近づくと発動出来るんです!」

「つまり、あいつは特殊技能を持っていると?」

「はい!間違いありません!」

 



 特殊技能使いか、凌大たちには荷が重かったかな?


 和澄は地面に寝転がり、自分の生徒の様子を少し離れた場所から見ていた。

 

 おそらくあいつの特殊技能は"重力操作"だ。対象の重力を操作することが可能。

「こいつは結構厄介だねぇ」


 反魔師の中で重力操作の技能を持っているやつは聞いたことがある。名前は三条百済。あいつは昔、魔術界から敵対視され、抹消されることになった。

 その際に多くの優秀な魔術師たちが依頼を受けて討伐に向かった。

 だが、結果は全滅。今では反魔術師協会の幹部になっていると聞く。



 

 俺が出ても苦戦するだろう。特殊技能は使いたくないし。


 頭をボリボリとかき、寝転がったまま上を向いた。


「面倒くせぇ。一眠りつくか」

 和澄は地面に寝転がったまま目をつぶり、眠りについた。

 

 現実逃避最高!







「特殊技能使い、面白くなってきたではありませんかぁ」

「うわっ!お前急に叫ぶなよ」

 

 さっきまで後ろの木の後ろに隠れていた福井が特殊技能と聞いた途端に出てきた。


「お前、なんで特殊技能に反応してんだよ」

 浅井が不思議そうな顔をしながら言った。


「あなたこそ何を言っているんだ!特殊技能は男のロマンですよ。ロ・マ・ン!」

「冗談を言ってる場合じゃない。今俺たちが相手をしているのは強敵なんだぞ」


 そう言って再び凌大は身構えた。福井も渋々戦闘態勢に入る。



「俺の特殊技能は"重力操作"だ」

 そう言って三条は凌大に向かっていく。


 速い!


 気がつけば目の前まで来ていた。そして腹に拳を叩きつけられる。


「ぐっ!」

 そのパンチは信じられないほどに重く、巨大な鉛玉のようだ。凌大は衝撃で後ろに吹っ飛んだ。


 後ろの木に衝突した。凌大はすぐ起き上がろうとしたが、身体に異変が起こったことに気づく。



「え?」

 

 急に体が重くなり、手や足を動かすのも難しい状況になった。そして凌大は雪乃の言葉を思い出す。

 『特殊技能は対象に触れる。もしくは至近距離に近づくと発動出来るんです!』



「まさか!」

「その通り、今、君には通常の10倍の重力をかけている。圧死してもおかしくない状況だ」


 全身に重りを付けられているような。いや、そんな甘いものではない。全く動かすことができないのだ。



「まずは一人目」

 そう言って三条は刀を抜いて凌大にむかって振り下ろした。



「待ってください!」

 雪乃がそう叫ぶと同時に植物で三条を拘束した。それと同時に一瞬だけ重力は緩み、凌大は咄嗟に三条から離れる。


「あーあ、お前邪魔すんなよ」

 三条は魔法を発動させた。三条を拘束していた植物たちはどんどんと溶けてゆき、一瞬で全て溶けてしまった。三条は再び自由となる。三条は刀を構える。


「ちまちまやるのも面倒くさい。一瞬で楽にしてやる」



 凌大は10倍もの重力を受けた後遺症により、しばらくはまともに動くことはできない。

 


 まずいな。とても戦える状態ではない。


 魔法を撃つにしても魔法陣を描く間は隙が生まれる。その隙をつかれれば終わり。身体が万全に動かせるなら隙を体術である程度は減らせるのに。



 そんなことを悩んでいる度浅井と福井が前に出てきた。

「お前は一旦休んでろ。次は俺と福井が相手をする」

「え、でも・・・・・・」

「身体がうまく動かせないんだろ?お前の異変に俺が気づかないわけないだろ」

 浅井は笑顔で微笑んだ。


 凌大とは親友とも言える仲だ。親友の異変に気づかないわけがない。

 気づかないのであれば俺は親友失格だ。


「いいから休んでろって」

「・・・・・・ありがとな。負けんなよ」

「おう!」


 浅井は元気よく返事して三条と向き合った。


「友情か。くだらねぇ」

 魔法陣無しで素早く魔法を発動させた。

 

 三条の周囲から謎の波が広がっていき、浅井、福井、雪乃、円、凌大の全員にぶつかる。そして波は5人を包み込み、拘束した。


「何これ。熱っ!」

 円が波に触れた瞬間悲鳴をあげた。波はものすごい熱が込められており、触れただけで大火傷を負うほどの熱さだ。



「俺の魔法は極めて単純。ただの熱波を作るだけ。そんなくだらない魔法なんだ」

 そう言いながら5人の下へと歩んでくる。凌大の炎柱によって開かれた道を通りながら。


 「上級魔法は熱波だけじゃないけどね。魔力の消費がすごいからあまり使わない」


 「で?なんでお前抜け出せてるわけ?」

 三条が睨みつけた。その視線の先にいるのは浅井だった。


「ただ魔法さ。ちょっとした応用だ」


 浅井の属性は光/雷だ。光を生成、操作できる。

 

 捕まる前に簡易的なものだが自分の分身を光で作っておいた。分身に気がいってる隙に波から逃れることができたのだ。


 

 浅井は光を生成し、光を一箇所に集めた。そして刀のように形を作ってゆく。

 できるのはもちろん光でできた刀だ。


「チャンバラごっこでもやる気か?」

「いや、そんな遊びじゃない。殺し合いだ」

「あっそ」


 三条は刀を浅井に向かって振り下ろす。浅井はもちろん光の剣で防いだ。だが力の差だろうか、浅井の剣は簡単に弾き飛ばされた。

 浅井は衝撃で地面に倒れ、仰向けになった。三条は浅井を見下ろし、呆れたと言いたげな顔をする。

「何が殺し合いだ。そんな実力ないじゃないか」

 失望したと言わんばかりにため息を付いた。


「何も俺が相手とは言ってないだろ。気が逸れればそれでいい」


 背後から魔法が発動されたことに気づき、咄嗟に振り向いたがすでに遅かった。再び三条は植物に拘束される。


 そこには凌大、雪乃、福井、円がいた。


「どうやって抜け出した?」

「俺の魔力は風/水。熱波なんて簡単に吹き飛ばせますよ」

 福井が自慢げに言った。



「そうか。残念。君たち詰みだよ」

「え?」

 三条は刀に魔法陣を描いた。そして魔法は発動された。



 その瞬間凌大たちの身体は一瞬で凍りつき、身動きがとれなくなった。


「え?氷?」

「君たちは魔術を全然知らないだろ?冥土の土産だ。教えてやるよ」


 凌大は炎を生成し、氷を溶かそうとした。だが、魔力量の差だろうか。氷が溶ける気配はなかった。


 三条は己に絡みついた植物を溶かし、話を続けた。


「魔法は自分の属性に合ったものしか使えない。だが、とある道具を使えば違う属性でも使えるようになるのだよ」

 凌大たちに見せつけるかのように刀をかかげた。


「それが魔具と言われるものだ。最上級のものだけだが、違う属性の魔法も使えるようになる。まぁ魔具に魔力が刻まれてるとでも思っとけ。1つの最上級魔具につき1つの違う属性が使えるんだ」


 そう言って刀を構えた。

「話は終わり。じゃあな」

 刀に氷を生成し、巨大な刃のようにする。そして凌大たちを一刀両断しようと刀をおろした。



 切られる!そう思った瞬間、氷が目の前をおおい、氷の刃を受け止めた。


「おいおい、若い芽を摘むなよ」

 その声には聞き覚えがあった。

 

 











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