王都ガレリア 奇妙な手紙
テスト3週間前で、勉強に力を入れている作者です。
小説の方も頑張ります。
ですが、次の投稿は遅くなると思います。
2月2日未明某所、私はある人を待っていた。
差出人不明の1通の手紙を片手に、まだ少し肌寒い風に鼻を赤くしていた。まだか、まだかと辺りを見回す。
待ち合わせ時間の10分後に人影が現れた。
「ごめんね、待った?」
白いシルクハットに、白のスーツ、赤いネクタイにステッキ。仮装大会でもないのに鼻から上を隠す仮面をつけている人物が現れた…、マジシャンのような格好だ。
「レディを、10分もこんな寒い中待たせるって紳士としてどう思われますか?」
私は自身の身体を縮こまらせて、怪しげな人物に嫌味を吐く。
マジシャンは両手を擦り合わせて、私に謝罪している。
流石に、夜の2月は寒い。震える身体を擦り、彼に言った。
「ところで、場所変えませんか。…この手紙の内容について詳しく知りたいです。」
私は声を潜めてマジシャンに伝えた。
「あぁ、良い所を知っているよ。」
閃いた、と言わんばかりにわざとらしく手を打った。仮面の下には不敵な笑みを浮かべている。私はその行動と表情を見て、この人は信用してはいけない人だと悟った。
連れてこられた所は、待ち合わせ場所から約5分ほどの位置にある、小さな喫茶店だった。
店内に入ると、静かなジャズに合わせてコーヒーの香りが漂っていた。寒くて固まっていた体が、熱で溶かされていく。
「マスター!いつもの!!」
マジシャンは、馴れ馴れしく獣人の厳ついライオンマスターに注文をした。私は初めて獣人という種族を見た。
「いつもの、って程お前この店に来ないだろ!閉店間際によくきたな。まぁ、カフェオレと…ホットココアにしておくか。」
マスターは私の鼻の赤さとぐるぐる巻きにしているマフラーを見て、温かいものを欲している事を理解してくれた。マジシャンは、気色悪い笑い声をたてて暖炉近くの席に座った。
「マスターは、剣闘士だよ。ちなみに、僕は魔道士だ。君は?」
「それ、私の状況を理解して言っているのなら、一発殴りますよ。」
私は、元々この世界の人ではない。目が覚めたらこの世界にいて、見ず知らずの少女になっていた。
二度寝をかまして、相変わらず元の世界に戻れそうにもない私は、レンガ道を歩くことにした。頭を上にして寝ていた方向に進めば、目的地に着くであろうと歩いて5日ほどで、この王都に着いた。
移動中、私は火には困らなかった。この憑依した子の魔法なのか、火を出せる能力を持っていた。
出ろー。と念じると、出て来るのですごく楽だった。自分のセンスまでをも疑った。
王都には、剣や魔法の武器や防具があり、明らかに私が元いた国とは違うと感じる。
目的の場所かはわからないが、歩き疲れた私はこの王都で一息つくことにした。
道中、衣服屋さんでマフラーを買った。おばさんが銅貨5つを言ってくれたが、私的には、50円でいいのか?と思ったところだ。
疲れを癒すために宿に泊まった。流石に、10円玉のような銅貨で泊まるのは気が引けたので、金貨2枚を出した。その日の夜お風呂上がりに部屋に戻ると、部屋のベッドの上に一通の手紙と薔薇が置いてあった。手紙の内容は、簡潔で「この世界のことを教えてあげる。」と、それだけだった。
私はこの部屋に誰かが入ったという事実に、この宿の警備管理を疑った。そして後悔する、銀貨4枚にすればよかった。
「何故、私がこの世界の人じゃないってわかったんですか?」
温かいホットココアを両手で持ち、彼に問う。
マジシャンはキンキンに冷えたカフェオレをストローをズズッと吸い上げ、答えた。
「行動と、噂と、占い。僕占い師もやっていてね、でも職業として生きていくのはキツくてさ。趣味程度でお店を開いていたんだけど、皆占いに興味なくて自分の事を占っていたら、人助けしろー、って。それで、ちょっと散歩中に噂を聞いてさ。『宿に泊まるのに、銀貨1枚で良い所、金貨2を出した馬鹿がいる。』ってね。宿主には騙されて、お釣りも貰えてないっぽいし。明らかこの世界の人じゃないなぁって思ってさ。あーでも、勘の部分も多いかも。でも、君は実際呼び出し場所に来たし困ってたんでしょ。結果オーライじゃん。」
ストローを振り回して、マジシャンは熱弁した。
「なるほど。」
銀貨4枚でも多かったか。100円でよかったんだな。私はさらに後悔する。
色々とさすが占い師、と言ったところだろうか。
「あ、そうだ。自己紹介がまだだったね、僕はフーリ・ロダワン。フーリで良いよ。君の名前は?...その子の名前か。中に入っている君の名前。」
「この子の名前、わからないです。」
「あーじゃあ、付ければ?」
軽々しく、フーリは私が迷っている所を突いてきた。私はヘラっと笑って問いかける。
「やっぱり名前がないと、きつい?」
「もちろん。」
私は、少しぬるくなったココアを飲み干した。自分で名前を決めるだなんて、気恥ずかしくて決められるはずがなかった。
「前の名前は?言いにくかったら、言わなくてもいいよ。」
仮面の下の瞳が一瞬隙間から見えた。綺麗な琥珀の瞳だった。全てを見透かされてしまいそうだった。
「前の名前は、クレハ。」
「良いねぇ。クレハはそのまま残しておくとして、仮として僕のラストネームを使えば良いよ。」
フーリにドヤ顔で言われた私は相当複雑な顔をしていたのであろう、それを見たマスターが気を利かせて会話に参加してくれた。
「色々内容は聞いたけど、お嬢さん大変そうだね。オレはロジャー。ロジャーナ・ルーランだ。この国では多い方のラストネームなのだが。ルーランを使うのはどうだろう。」
「あ、ありがとうございます。ルーランにします。」
私は即答した。不服そうにフーリはストローを噛んでいた。
「…ロジャーは、顔が広いし、親戚も多いから姪が遊びにきたって程にすれば安全そうだね。田舎から来たってことにしておかないと、金貨騒動云々でクレハが困っちゃうだろうけど。」
不服そうなフーリは、不貞腐れながら言った。
「あぁ、お金はまだたくさんあるんですよ。」
私はそう言って、ポケットから巾着袋を取り出した。袋の口を開いて中を見せる。
「「は?」」
あの時の、2人の顔は生涯忘れられないだろう。
読んで頂きありがとうございます。
誤字脱字がありましたら私の確認不足です、申し訳ございません。