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能力



 お兄ちゃん、と繰り返すイオのことを必死で止め(ノリがいい)、俺は気になっていたことを訊く。



「実はさっき野蛮な三人組に絡まれたんだけど、この辺って結構治安悪い感じ?」



 見たところスポーティーな格好をして動きやすそうではあるが、イオは武器らしい武器を携帯していない。


 俺から逃げるときの彼女の様子を思い返しても、戦闘技術に長けているとは言い難いし――もしまた暴漢に襲われることがありそうなら、相応の備えをしておかなければならないのだが。



「絡まれたって、大丈夫だったんですか⁉」



「え、うん、まあ……。何とかなった感じかな……」



 ぐっと身を乗り出して、驚き心配してくれるイオ。


 優しい子なんだろう――だからこそ、あの三人を殺したことは、何となく伏せておいた方がいい気がした。



「……私も初めて通るので噂だけですが、組織だって動く山賊が出没しているらしいとは聞きました。シキさんはまだスキルも把握できていないと思うので、できるだけ穏便に進んでいきたいですね」



「やっぱりそうなのか……スキル?」



 またもや聞きなれない単語に、またもやオウム返ししてしまう。


 待てよ?


 矢で俺を襲ってきた、あの顔に傷のある男も、そんなような言葉を口走っていた気が……。



「あ、はい。そう言えばまだお話ししてませんでしたね……見てもらった方が早いか」



 言いながらイオは立ち上がり、わざとらしくコホンと咳払いをする。



「さっきの治安が悪いかって質問、私を心配してくれたんですよね、シキさん。ありがとうございます。でも、大丈夫です。こう見えて私……」



 冒険者ですから! と。


 言いながら右手を空に掲げた彼女の周りの空気が歪み、その手の先に青白い光が発生する。



「……!」



 その無軌道な複数の光は次第に秩序を持ち始め、ぐるぐると回転しながら彼女の頭上で円を形作った。



「『死の商人(リーサルボックス)』!」



 そんな掛け声に呼応して。


 どくん、と空間が歪み。


 イオが作り出した光の輪から、何かが出てくる。


 それは、多種多様な武器で人を殺してきた俺でも、一度しか使ったことのない銀の筒。


 機関銃。



「これさえあれば山賊なんて余裕です!」



 その体躯に不釣り合いな重機関銃を撫でながら、イオはにっこりとほほ笑んだ。



「ああ……そうね……」



 なるほどどうして、ただの少女ではないようだ。

 ガシャン、と大きな音立てながら、イオは機関銃を地面に置く。



「もちろん、もっと小ぶりなものも出せますよ」



 『死の商人』! ともう一度彼女が声を出すと、今度は右手の周りに小さな青白い光が現れ、よく見慣れた拳銃が出てきた。


 コルトガバメントに似た銃身だったが、どことなく違う。

 異世界モデルなのだろうか。



「銃、使ったことありますか?」



「ああまあ、似たような奴なら何度か」



 専門は格闘やナイフ術のような近接戦闘なのだが、もちろん拳銃も守備範囲内だ。



「そしたらこれ、持っててください。他にもいろいろあるんですけど、一番扱いやすくて殺傷能力が高いと思います」



 言いながら、イオは銃を手渡してくる。



「ああ、ありがとう」



 ずしっと、懐かしい重みが手の中に広がり、同時にいくつかの記憶が蘇る……駄目だ、ほとんど兄貴にいじめられた記憶だ。



「……じゃあ、話は歩きながらってことで、そろそろ出発しようか。街まではどのくらいかかるんだ?」



「ここからだと……徒歩で大体三日ってところですかね」



 降ろしていたリュックの中から地図を出して、イオは答える。

 難しそうな顔で眺めているが、果たして読めているのだろうか。まあ、ここは信じるしかない。



「オーケー。じゃあなおさら早く出よう。道案内よろしくな」



「わかりました……ただ……その……」



 召喚した機関銃を、今度は逆に光に包んで収納しながら(便利だ)、イオは歯切れ悪そうに言う。


 どうしたんだ……何か問題でも起きたのだろうか。


 ここにきて、やっぱり俺という怪しい男と一緒に行動するのが嫌になったのだろうか(ならその感性は正常だ)。


 それは困る。

 しかし、俺の心配とは全く別のところに、問題はあった。


 大きな問題が。



「シキさん……服を着てもらってもいいですか?」



パンツはボクサー派です。

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