誰かのために振るう拳
翌日の実技試験を使いアルヴィスはあることを試そうと考えた。
「私が前線で戦うの!?」
「あぁ、お前は充分戦える。俺はそう見た」
「いや、でも…」
勝てるかどうか分からない、その不安で胸がいっぱいだ。
相手はルージュとミッシェルたち真打同好会。レイチェル的には守りに
徹していたかった。
「前線で戦うのは怖いか」
レイチェルは頷いた。
「何も一人で戦っているわけではない。…そろそろ始まってしまうな」
大きな城がそびえ立つ。アルヴィスは微笑を浮かべた。
「城さえ壊れれば勝敗はついたも同然だ」
「…分かった。頑張ってみる」
ルージュへの印象が変わった。
「ねぇねぇルージュさんって案外知的よね」
「シーっ、聞こえちゃうでしょ!」
もう聴こえてるんだけど。
そう言いたくなるがグッと我慢した。
「あのルージュ様、良いのですか?私たちに魔力を分けてしまって」
「ん?あぁ、別に良いよ。魔法を使ってというよりは肉弾戦のほうが俺にとって
都合が良い」
ルージュは両拳を合わせた。やる気十分のルージュを見てミッシェルは少し
安心感を得た。
レイチェルは「転移」を繰り返し使いながら敵を捜索する。
『どうやらルージュが相手らしいぞ』
通信用魔水晶を通して声が聞こえた。道を塞ぐように立つルージュが拳を地面に
叩きつけた。大地を隆起させるほどの威力を持つ拳はレイチェルを狙い撃つ。
「英雄王伝説」
レイチェルの背後から現れた幾つものワープホールから黄金色の鎖が放たれルージュを
抑え付けた。力に自信があるルージュはそれをどうにかして解こうと力を入れる。
それに比例するように鎖も太く、何重にも巻かれていく。メキメキと次第に骨が
軋む音が聞こえルージュも焦り始める。
『そこまで!アルヴィス班の勝利です!』
魔法を解きルージュは力を抜いた。
「…何となくだけどよぉ。俺、お前の事を知ってる気がするんだわ。既視感って奴か?」
「そうかもね」
レイチェルは笑った。後に集まってきたミッシェルたちの手を借りてルージュは
立ち上がった。
「ルージュ様、今回はありがとうございました!負けちゃいましたけど、だけど
ルージュ様の力が無ければ瞬殺されてました」
ミッシェルの笑顔にルージュが微かに動揺した。否、照れているようにも見えた。
ミッシェルも少し頬を赤らめていた。
ミッシェル&ルージュコンビ、爆誕?