盲目の考古学者グラヴォス・ジェーシー
数十分後、部屋に来たのはグラヴォス・ジェーシー。
ミッシェルと似たような淡い青色の髪をしている考古学者の男だ。
「初めまして君がアルヴィス・エーデルワイス君とレイチェル・レギンレイヴちゃん
だよね。僕はグラヴォス・ジェーシー、よろしくね」
目が見えていないのか杖を突きながら空いている片手で彼らに触れる。
「グラヴォスさんは生まれつき目が見えないのですか?」
「はい。ごめんね、迷惑をかけてしまうけど」
グラヴォスは杖で辺りを探りながら歩いていた。
「グラヴォス様、私たちが先導します!」
「いつもありがとう。迷惑をかけてすまないね」
グラヴォスはそう言った。グラヴォスはミッシェルの肩に手を置き落ち着いた足取りで
廊下を歩く。
「目が見えないのによく考古学者になれたな」
アルヴィスの言っていることは正しい。目が見えなければ歴史書は読めない。
古い字を読める者も限られているのだ。
「それは自分の魔法でどうにかしているよ」
グラヴォスは目隠しを取り目を開いた。濁った紫の瞳には何かの紋章がある。
字を直接脳に送り込む術式だ。
「随分と便利な術だな。それでお前は今、語り継がれている歴史について感じているか?
間違いとか、誰が流したか、とか」
「誰が、は分からないけど間違っていることは分かっていたよ。
アイビス・アーデルハイドと言う名前ではない。君だということを僕は知っている。
色々間違いはあるだろうから何百冊もの歴史書を読み比べた。だけどごめんね、
アイビス・アーデルハイドについて僕もまだ詳しく調べられていないんだ。
僕なりに色々調べてみるけど」
「協力してくれるなら有難い」
アルヴィスは感謝の言葉を告げた。
「これは僕の推測だけどね、相手は君が転生することを知っていたんじゃないかな。
君とレイチェルちゃんが出会ったことも相手が仕組んでいたかもしれない…そうなったら
アイビス・アーデルハイドという人物は魔王アルヴィスと勇者アドニスが転生する際に
関わっていた人物なんじゃないかな?」
アルヴィスの偉業を自分のモノにしたいと思っている、または魔族を支配したい。
そう思っている輩がしているのだろうか。
「まだヒントが少ないな…」
アルヴィスの言葉に全員が頷いた。
「お前が誰だろうが関係ないが学校生活で目立ちまくってればそのうち何か
見せるかもしれないぜ」
いつの間にか後ろにいたルージュはそう口を挟んだ。彼の言うことにも
一理ある。
「る、ルージュ様!!?」
「その様付け、やめてくれねえか」
「ご、ごめんなさい…」
「こらこら、女の子を虐めちゃいけないでしょう」
グラヴォスに宥められて、更にレイチェルからも注意されルージュは出鼻を挫かれた。