紅玉のアッシュ
この世には星の数ほど魔法は存在する。
手練れな者しか扱えない魔法もあれば子供でもしっかり勉強すれば使える魔法も。
アルヴィスは周りより圧倒的に高い魔力量を持っているため一番威力に欠ける、
最弱魔法も最高難易度魔法並の威力に変化させてしまう。
火属性の最弱魔法の一つ「紫炎」も最高難易度魔法「獄炎破弾」という魔法並の
威力に変わった。
「最弱魔法程度で…城が崩れたぞ!!」
「城が崩壊すれば勝負はついた、だったな」
使い魔の梟を通してイリアナが奥歯を噛み締める音と共に勝敗を告げた。
圧倒的な強さに純血たちは敗北した。城を解いて駆け付けたレイチェルも
目を丸くしていた。
「えぇ!?何この惨劇…」
「何、少し力を出しただけだ。それより俺はお前に驚いた。幻惑魔法に
かかっていたはずだが何ともなかったのか?」
「え?魔法にかかってたの!?」
今、気付いたのか。幻惑魔法、それもかなり高威力の幻術だ。アルヴィスも
もしかしたら魔法にかかっていたら効果を受けていたかもしれない魔法で
彼女は何事も無く城を守り続けていた。常人でない精神力だ。
今日の授業は全て終わった。
レイチェルの家にアルヴィスはお邪魔していた。
「良かったぁレイチェルってばシャイだから友達が出来なかったらどうしよう、
なんてずっと考えてたから」
シドゥンはそう話した。
「ここに来る前について聞いても良いか?」
アルヴィスはそう聞くと彼女たちは快く話してくれた。人間の国でも魔王学園ならぬ
勇者学園が存在しているらしくシドゥンはそこの元・教師。
レイチェルの父エドラスはデザイナーだという。
「教師をやめてレイチェルの義兄と一緒に暮らすために引っ越したのよ。義兄の名は
アッシュ・レギンレイヴっていうの」
王国騎士の中で最も優れている四人にはそれぞれ「紅玉」
「蒼玉」「翠玉」「紫水晶」の
称号が与えられる。アッシュは「紅玉」だ。
彼の会話をしているときにアッシュが家に戻ってきた。
「アッシュ~!!」
小柄なシドゥンは大柄な息子に抱き着いた。
「母さん、人前では少し控えて欲しかったなぁ」
アッシュの姿を見てアルヴィスはやはり彼はレイチェルと血の繋がりは無いようだと
感じた。アッシュの燃えるような赤髪、宝石のような淡い緑色の瞳、どちらも
レイチェルとは似ても似つかない。だが唯一レイチェルと共通しているところが
あるとすれば背が高いということだ。
「レイチェルは確かに長身だな。何センチだっけ?」
「えっと…167㎝?だったかな」
スレンダーな体形のレイチェルだ。それぐらい高くても違和感がない。
食事も終えて帰り際、アッシュも外に出た。
「どうした?俺に用って」
「お前はレイチェルの正体を知っているな」
アッシュが一瞬反応を見せた。しかしすぐにポーカーフェイスを作った。
「…勇者アドニスの転生体、それが彼女だろう。知っているさ
君が魔王の転生体だっていうことも」
「意外だな。気付いている者はここには存在しないと思っていた」
「そうなのか。なら俺も何かしらの形で二人に関わっていたのかもしれないな。
…昼間、俺は彼女を手助けすることは出来ない。これは兄として、妹を頼んだ」
アッシュは一方的に頼んで家に帰ってしまった。