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第一話 僕という人間

 

 退屈な毎日。


 そんなベタな言葉が相応しい日常だった。気が付けば学校でつまらない授業を受け、気が付けば居眠りしていて、気が付けば一日が終わっている。そしてまた気が付けば学校で。そんな毎日の繰り返しだ。

 どれくらいそんな日々を繰り返しただろう。いつの間にかそれが当たり前になっていた。こんな日々を退屈と言わずに何と言うのか。


 そんな事を考えていたら、不意に響いた終業のチャイムが僕の意識を引き戻した。あぁ、また無駄な時間を過ごしてしまった...。


 なぜ僕の日常が退屈なのか考察してみる。

 とりあえずは僕の友好関係について。まず第一に、僕は友達が少ない...という訳でもない。中々面倒な思考をしているから友達が少なそう、と思うかもしれないが、普通はそういった一面は人前で出さないものである。普通にしていれば普通に友達もいる。

 まぁクラスの中心になってワイワイやるような、いわゆる陽キャというやつでもないけれど。

 僕は須藤(すとう) (ごう)なんて名前の割にひょろりとした痩せ型なので、よく名前負けしているとからかわれたりしたが、今ではそんなことも無くなった。僕自身は面白くもなんともなかったし。そう思ってる事は表には出さなかったけれど。

 では成績はどうか。うちの高校は田舎町のそこそこの進学校で、僕の成績はその中の中の上なので、決して悪くは無い。勉強もスポーツもそれなりには出来るけど、()()()()()わけではない。絵を書くのも、歌を歌うのも、それなりに出来る。でも、所詮「それなりに」である。要するに器用貧乏なのだ。何か一つ飛び抜けた才能でもあったら、楽しい日々を送れるのだろうか?残念ながら僕にはそんな才能はないので、答えは謎のままである。

 結局答えは出ないまま、毎日が退屈なのは自分がこういう性格だから仕方がないと言う結論に至る。この考察を終えるまで約二十分。今まで何度も行ってきた、時間の浪費法の一つである。



「あぁー、やっと終わったなー。」


 と大きく伸びをしながら呟くのは香取である。


「あんた、授業一つ終わる度に同じこと言ってるわね。」


 斜め前の席の中条が呆れ顔で口を挟む。

 この二人は僕の幼馴染みで、クラスメイト。なんだかんだで長い付き合いになる。


「だって実際そうじゃん。他に言う事ねーし。」

「このボキャ貧め...。大体あんた授業中ほとんど寝てるんだからあっという間じゃないの。」

「チッチッチッ。分かってねーなぁ日菜子ちゃん。俺がただ寝てると思ったら大間違いだぜ?」

「日菜子ちゃんって言うのキモイからやめろ。」


 ほう?ただ寝てるだけじゃないのか?

 それは気になる発言だ。


「大魔法使いである俺は野を超え山を超え、世界の秘密を暴くために旅をしているのさ。親友ジャスティンの死を乗り越え、俺は遂に世界の秘密を知り、魔王ダイダロスを打ち倒すために...」

「何言ってんだこいつ...」


 中条の冷めたツッコミ。


 ほんと何言ってんだこいつ。

 要するに夢を見ていただけらしい。

 どうしようもない奴である。


「よう。今日も楽しそうだな、お二人さん。」


 声のする方を見ると、一人の少年が立っていた。

 背の高い、短髪の似合う少年だ。


「お、ガッキーお疲れー。」


 と香取。


「おう、お疲れさん。」


 彼は隣のクラスの荒垣くん。

 いつの間にか仲良くなっていた友人の一人。

 不思議なもので仲良くなったきっかけが全く思い出せない。

 まあ良い奴なので特に問題ないか。


「荒垣くんお疲れさま。」


 と中条が挨拶するので、僕も


「お疲れ。」


 と挨拶をする。


「はいお疲れさん。お前ら何してたんだ?」

「何もしてないわ。時間を無駄にしてたところ。」

「俺との会話が時間の無駄...だと.....酷い...」


 香取がしょんぼりしているので、


「ま、まぁ元気出せよ。」


 と励ます。


「ハッハッハ!相変わらずだなお前ら。」


 そんな様子を見て楽しそうに笑う荒垣くん。


「んな事より、ガッキーこそうちのクラスまで来て何してんだよ?」


 と拗ねたように香取が言う。


「ん?あぁ、そうそう。お前ら、うちのクラスに転校生が来たのは知ってんだろ?」


 転校生?そういえばそんな話を聞いたような...。


「おぉ!そういえば!転校生って女?女か?可愛い??」


 香取がものすごく食いついている。


「ほんとしょーもねぇなこいつ...。」


 冷めた目つきの中条。ご覧の通り、中条は香取に厳しい。


「まぁ落ち着け、香取。よく聞け。.....かなりの美少女だ。」


 荒垣くんの言葉を聞くと


「何ィ?!彼氏は?彼氏はいるのか?!胸は?!何カップだ?!!」


 と大興奮している。

 きっと僕も中条と同じ顔をしている事だろう。


「まぁ、んな事はどうでもいいんだ。後で自分で確かめてくれ。」

「どうでもいい?!良くないだろ!!バカなの?!!お前はそれでも男かよ!!」


 香取の興奮が収まらない。クラスの視線が集まり始めた。本人は気にしていないようだが、中条は気まずそうにしている。


「バカはお前だこのバカ取!!少し静かにしなさいよ!大体胸がどうとか…」

「お黙り!この日和山が!胸は大事だろ!!俺はエベレスト登頂したいんだよ!その頂きを拝みたいんだよぉ!!!」


 あ、地雷踏んだな…。ちなみに日和山は宮城県仙台市にある日本一低い山である。何の事を言ってるかはお察しの通り。

 響く断末魔の叫び。さらば香取...。


 なんやかんやで静かになった(させられた)香取。こいつほんとにバカなんだよな…。昔はこんなだったっけ?


「話が脱線したわね。で何の話だったかしら?」


 何事も無かったかのように話の続きを促す中条。彼女を怒らせてはいけない。


「あ、あぁなんだっけ...?そう!転校生だ!」


 怯えたように荒垣くんが言う。


「実はその転校生な、気になる噂があるんだ。」

「噂?」


 思わず聞き返す僕。


「噂ってどんなだよ?」


 意識を取り戻した香取。こいつタフだな。


「あぁ、実はその転校生な、()()()()らしい。」





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