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第四話『妾にすらなれなかった女』

短くしたので予定よりも早く投稿できました。


20191110今後の展開に齟齬が生じる所を修正しました。

アメリア=ガラル、年齢は二十二歳。

九歳の時に実父が死に、母や姉弟と共に帝都南東エリアに移住。

父の兄が経営する酒場で給仕兼料理人助手として勤務。

 十四歳の時に画家志望の男バイツ=ゲレットと出会い、交際開始

尚、本人の主張によれば肉体関係を伴っていた交際であったとのことである。

 十五歳の時にゲレットと破局、勤務先や周囲の証言ではゲレットが一方的に別れを告げて転居したとの事。

その後の本人の主張によればゲレットの子を妊娠するも、様々な要因が重なり死産。

十六歳の時に母が死去、自身は娼婦へと転職する。

分断暦二〇八三年元日に行われた皇孫殿下平民謁見会で、本人の主張によればゲレットの素性は第一皇子エンフィール殿下だと確信。

 その後、懇意にしていた商人の伝手を使って出会った『ボレフ』と名乗る男から、貴族経由で侍女用の服を入手、身分を偽装して二ヶ月間侍女として皇城に潜入。

更に本人の主張によれば、第一皇子后マシュリリア殿下の次期皇后としてふさわしくないと思える言動の数々から、同殿下に対して嫌悪の感情を抱くようになった。

その後、ボレフのマシュリリア殿下を排除したいという願いに加担し、公爵の入手した酸と飴細工の瓶を用いてマシュリリア殿下の顔を焼く実行犯の役目を担ったが、計画が失敗し、フィローザイン筆頭皇孫殿下に被害を及ぼし、同殿下の魔法により右足消失。

 罪状は以下の通り。

皇族不敬罪、皇族傷害罪、皇族傷害未遂罪、平民身分詐称罪、国家反逆罪、国家反逆阻止義務違反、帝国薬品管理法第三条違反。

 国家反逆罪規定の即時死刑執行は、フィローザイン筆頭皇孫殿下の権限で保留。

現在帝都平民拘置所にて拘置中。

 

 

 

 「・・・やっぱりな。」

 取り調べを担当した法務官の報告書が届いたのは、事件から三日が経過した昼であった。

俺は、親父と共に昼食を取りながら報告書を読んでいた。

 部屋には俺と親父と親父の従者達と俺付きの侍女。

 「・・・・・・。」

 上座でちぎった麦餅(パン)を口に運ぶ親父の指が震えている。

親父も同じ報告書を読んでいるからだ。

因みにどちらのものも、原本ではない。

紙に書かれた内容を別の白紙に複写できる複写魔術のお陰で、模写の手間が省けているのだから便利なものだ。

暗黒時代や貴族政治時代のヨーロッパ程度の文明度だと思いきや、こういった前世の文明と同じくらいの物が所々に存在しているのだから油断できない。

 「・・・・・・。」

 左後ろに控えるメイドにその報告書を渡す。

お前達も見ろという俺の無言の指示を受け、周囲の侍女達も書かれた内容を読んでいく。

 「え・・・!?」

 「そんな・・・。」

 「・・・酷い。」

 そういった侍女達の小声がよく聞こえる。

 貴族という身分の者は血統を重んじる。

故にとても貞操観念が強い。

 特に女性は夫に全てを捧げるべきという教育を受けているので、結婚するまで生娘なのは当然で、婚前交渉など許されない。

侍女達は貴族の娘で、恋や結婚に憧れる未婚の乙女達あった。

というよりも、そもそもこの皇城は平民年賀会や建国祭等の、年に数回の許可がある時以外は平民が立ち入ることが許されない。

明確な理由は私には分からないが、おそらく権威付けの意味を込めているのだろう。

 そんなわけで、この皇城は皇族付きの従者や侍女、医者や文官や武官、更には料理人や庭師購買部のオバちゃん、トイレ掃除担当者すらも貴族の一番下に位置する男爵やその子女達なのだ。

 そんな貴族達の貞操観念に影響してか、平民でも初めて恋人同士となる男女がそのまま夫婦になる事が圧倒的に多い。

そもそも平民では婚前性交渉自体が、婚約の証であるのだと平民の文化の書かれた本に記されていた。。

 だからであろう。

俺付きの侍女達は、バイツ=ゲレットなる画家がやったことに驚愕を隠せず、怒りに震えていた。

 「!!

・・・・・・。」

 バイツこと俺の親父エンフィールは、そんな侍女達の刺さるような視線を感じて項垂れる。

これで『平民の女を遊びで抱いてやったのだ。

感謝されることはあっても、恨まれる筋合いなどない!!』等と宣う傲慢なバカ野郎であったら、俺がこの場で殺処分してやろうと思ったが、そんな屑ではない事は息子の俺でもよく知っている。

 「・・・本当は、彼女を男爵か子爵の養女にしてから、私の側室に迎える筈だったんだ・・・。」

 体と声が震えていた。

この国の法では、平民は皇族や貴族との結婚が出来ない。

だが貴族が養子として迎える者の身分には制限がなく、養子にした者の身分は貴族となる。

まるで法の抜け穴のような方法だが、それによって貴族身分として結婚する事は法的には可能であり、平民文化についての本の著者も、母親が同じ方法で貴族に嫁いだと記していた。

他の皇族に非難されること等を考えれば流石に正妻には出来ないが、法的な妻で皇族としての身分を与えられる側室や、例え皇族に出来なくても貴族身分のまま妾とすることも可能であった。

 「だから、マシュリリアとの結婚が決まった後で、手紙を書こうと思っていたんだ。

・・・でも、遅かった。

彼女が娼婦になったという報告を受けたから、無理だと分かったんだ。」

 悔しそうにテーブルを叩いた父を見て、つくづく運の悪い男だと俺は少しだけ同情を覚えた。

 そう。

タイミングの問題だったのだ。

親父が、あの女の元を去る前に、素性を告げておけばこんな事にはならなかったのかもしれない。

 腹の中に居た俺の異母兄か異母姉も、死産にならずに済んだかもしれない。

 そして彼女は親父に捨てられて子供を死産したショックから、娼館の門を叩いたのだろう。

この国では、本人の申請さえあれば娼婦という身分となって、職に就くことは可能だ。

性犯罪予防に協力しているという名目から、申請時には一般の平民の半月分の生活費に相当する助成金が支払われる。

 しかし、娼婦は一度なると例え助成金を返納したとしても、平民に戻ることは出来ない。

勿論、娼婦身分のまま別の職に就くことは可能だ。

しかし、娼婦は客から金銭を受け取って子作りと同じ行為を行うという職務上、子供が出来たとしてもそれは例え男が認知しても法的には娼婦のみの子として扱われるし、娼婦自身は養子縁組が出来なくなってしまう。

 そうなれば皇族の側室どころか妾にすらなれないのだ。

皇族や貴族は血統を重んじ、血統を尊ぶ。

この第一皇子が強引に娼婦を妻に迎え産まれた子を認知したとしても、その子の皇帝への即位は不可能。

それどころか次期皇帝として不適格だと、野心溢れる他の皇族共やその後ろ盾の貴族共が、皇帝に親父の継承権剥奪を要求するかもしれない。

 流石に絵の才能以外凡庸なこの男でも、それは理解しているのだ。

 「まさか、あんなことをするとは・・・。」

 溜息と共に親父は小さく呟いた。

 「・・・父上。

こうなったのは、母上の普段の行いだからだと思いますよ。」

 「!」

 冷たく言い放つ俺の言葉に、親父は大きく目を見開いてこちらを見る。

親父だけじゃない。

従者達も同様だった。

 だが、俺の傍にいる侍女達は俺の意見に肯定するように俯いた。

彼女達は知っているのだ。

傲慢で高飛車で癇癪持ち、そんな俺の母マシュリリアの所業を。

 シュピーゲル辺境伯が己の持つ債権をタテに、有力な貴族達に自分の娘を第一皇子の正妻へと推薦させ、その画策が成功した。

しかし、それに反発する貴族達も当然いた。

推薦させられた貴族も、内心では快く思ってはいなかったのであろう。

マシュリリアを次期皇后の座から引き釣り下ろす為に、様々な思惑を抱いた者達が、様々な陰謀を画策していたことは想像に難くない。

 そのうちの誰かが知ったのだ。

エンフィールに未練を持つ娼婦の女を。

最初はボレフという男が、あの女に侍女の服を与え言葉巧みにこの城への潜入を促す。

そして母の周囲や夫に対する所業を知り、激しく怒りに燃えた。

自分は恋人の子供を流産して娼婦に落ちたのに対して、あの女は野望の為に愛してもいない恋人の正妻にまでなっていながら、周囲や恋人を蔑ろにしている。

恋人の妻に相応しくないと、思っての発言だと当然理解できた。

 そして三度現れた黒幕の使いのボレフ。

顔を溶かせばエンフィールの寵愛も失い、正妻の座から転落するだろうと囁かれ、娼婦はその為の道具を受け取ったのだ。

 要するにアメリア=ガラルは、親父への未練を利用されて実行犯となったのだ。

あの女にボレフと黒幕の援助さえなければ、こんな事にはならなかった。

 そしてあの女や黒幕にしても、予想外の事態が起きる。

実害が俺に及んだ事と、俺の権限であの女の死刑が保留になったからである。

 「黒幕達の思惑通りになるのは癪に障りますが、母上との離婚も考えたほうがいいと思いますよ。」

 顔の包帯を弄りながら、俺は溜息を吐いた。

正直に言うとあの母親にウンザリだ。

少なくとも、何処か視線の届かない所にいてほしい。

二度目と自覚している人生すらも母親に殺されるなんて、俺は真っ平御免だ。

 「・・・・・・それは出来ない。」

 まあ、親父の返答は予測どおり。

なんだかんだ言っても、この男はマシュリリアの事も愛してはいるのだ。

 アメリア=ガラルの外見を思い出してよくわかった。

親父は胸と尻が大きく鼻の高い女が好きなのだ。

母マシュリリアと同じ傾向の女だった。

 だが、次に親父が発した言葉は、俺にとって予想外のものだった。

 「・・・妊娠しているんだ。

医官の話だと三ヶ月くらいらしい。」

 「・・・・・・そうですか。」

 その言葉は全く予想していなかった。

だから正直に言うと、複雑な感情しか湧いてこない。

 今すぐに出ていって欲しい母。

しかしその腹には弟妹がいるという。

 「済まない。

お前の弟か妹に辛い思いをさせたくない。」

 「そうでしょうね・・・。」

 俺も兄になるのかと、少しだけ喜ぶ。

しかし、直ぐに不安を覚えた。

前世でも妹がいたが、だが我儘で生意気な女で前世の母と同じ性格だったので、常に俺を苛立たせた。

弟妹が皆そうでないと、俺は願わずにはいられなかった。

だが的中しそうな不安だ。

何故なら、そもそも両親が俺を苛立たせる存在なのだから。


次回からエロ展開と戦闘回になる予定です。

そして誤字脱字修正しましたwww

命名規則と表記法の修正しました。

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