第1章6部 空虚
第1章6部 空虚
はぁ…
新年の到来に沸く自宅で俺は大きなため息をついた。
そして、自分に問いかける。
「俺に友達は出来るのか…」
「何ぼーっとしてんだ」
唐突にかけられた声に驚く。
「雑煮、もう一杯食うか?」
父親だった。
「うん、ありがとう」
「あんまり考え込むなよ」
「うん」
父さん、わかってくれ。俺は今人間関係に
かなり悩んでいるんだ。
お雑煮も大切だが、友人はもっと大切なんだ。
今年は友達を作る。予定。
1月上旬。新年度初登校の日
みんな変わらずだった。
「悠介、おはよう」
「優馬、おはよう」
「おはよー」
「山田くん、おはよう」
3人で挨拶を交わす。
学校生活はいつも通りだ。
「ごんは人間のために栗を毎日…城谷さん?」
………
「城谷さん!」
ガタッ
「はい、なんですか!」
教室に不穏な空気が漂う。
5時間目の国語はいつも寝てしまう。
「どうしたんだ悠介」
優馬が気遣う。
「なんでもないよ、眠いんだ」
「大丈夫か、無理すんなよ」
「ありがとう」
最近、小林さんと関われなすぎて辛いのだ。
少しでも話をしたい。面と向かって見つめたい。
それでも、関わるチャンスは当分訪れなかった。
何もなすぎて、1月からは蝉の抜け殻のような
毎日を送ってきた。登下校中、枝だけに
なっている桜を見ながら、ただ、さみしく
なるだけで、新しく友達もできなかった。
自分から話しかけて関わりを作るべきなのに
声が出ない。
もし、煩わしかったら…
もし、気持ち悪がられていたら…
もし、自分が嫌な奴だったら…
考えれば考えるほど怖くなった。
少し話が飛ぶが、3月の上旬に飛ぼう。
3月14日、小学校の卒業式が行われた。
俺たちは5年生なので、あと1年間ある。
あと1年。それは、中学校生活につながる
土台の完成形の制作期間だった。
そして俺は、ある大きな出会いをする。