第1章4部 天国と地獄~思い上がり~
第1章4部 天国と地獄~思い上がり~
接木細工は散々だった。
完成しきらないわ、山田くんと小林さんが
話してるわ…もう嫌になりそうだ。
切り替えよう、次は何をするのか…
「これからオリエンテーリングを始める。
各自荷物をもって玄関口に15分後集合。」
担任は言った。
オリエンテーリング。本当にやるのか?
今の天候は最悪だ。神が大号泣している。
前には霧がかかり、視界が悪い。
2度目だが、本当にやるのか?
オリエンテーリングが始まってしまった。
森の中を歩き、チェックポイントで飴をもらい、
別のルートでスタート地点に戻ってくるのだ。
優馬や山田くんとチームが離れたため
孤独だった。自チームはやる気がない。
俺が1人で行けば、勝手についてくる。
それは構わないが、少しは助けてくれ…
俺は1人で地図と睨み合い、前に進んだ。
雨が強く降り続いている。
砂漠の人々に分け与えてやりたい。
チーム7人ずぶ濡れになってチェックポイントに到達したが、あめなんて欲しくない。
チームの仲間いわく、不味いらしい。
やっとの思いで帰ってきた。
風で折りたたみの傘は無効化され、
合羽も貫通する豪雨だった。
夕飯は自分たちで作るカレーライス。
こういうのは上手くいかないと聞くものだ…
しかし、美味い・不味い以前に、最も楽しみな
イベントだった。
この調理班は小林さんと一緒なのだ。
小林さんは料理ができるので、班長。
「小林さん、野菜切るね」
俺は今日初めて話しかけた。
「いいよ、私やるから。
それより、火起こしやってよ」
小林さんは言った。
「あっ、うん…」
不甲斐なさそうに俺はマッチを貰いに行った。
カレーが完成した。見た目はいつも家で食べる
カレーと一緒だが…味はどうか。
「うわっ、じゃがいも固っ…」
肉を切った奴が言った。
「なんか、肉でかくね」
煮込んだ奴が言った。
「そうかな、めっちゃ美味いじゃん」
俺は正直に言った。
肉も食べやすく、じゃがいもはパンのように
柔らかいのに、何を言ってるんだ…と思った。
「美味しいね、よかった」
小林さんは言った。
個人的に、とてもいい野外炊飯になった。
夜、第2回目の恋バナが始まった。
俺は早く寝ようと思った。
あの秘策は一度しか使えない。
掘り下げられると死亡する。
ある奴が言った。
「うちのクラスの女子終わってるよな」
は?小林さんがいるだろ…と思いながらも
関わらなかった。
「ね、顔がひどい…堀内は別クラスだし」
お前が言えることじゃないだろ、お前なんか…
そうは思っても話に参加しなかった。
「じゃあ、堀内以外なら誰がいい?」
「うーん、坂本とか」
俺は坂本さんとあまり関わらないが、おそらく
人気な方だろう。
「坂本?小林じゃねぇのかよ」
………!
「小林?いやいやいや、それはない笑笑」
そいつの戯言を聞くと、
俺は起き上がった。
「お前ら、いい加減早く寝ろよ。うるせえ」
「なんだよいきなり。シラけるな…」
俺はすぐに言い返されてしまった。
「城谷、おまえ小林となんかあんのかよ」
「あるわけないだろ。眠いから寝かせろ」
「城谷なんか気にしてねぇよ。勝手に寝ろ」
「わかった。静かにしてくれよ…」
こうして、俺の自然教室2日目は終わった。