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ある滑稽で臆病な鶏の話  作者: ナッツ
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第2章7部 怯え

第2章7部 怯え


城谷悠介二股疑惑事件【通称 藤本の変】の翌日。

「…あと3日か」


「なにが?」

うわっ!

「なんだ、俊明か。なんでもないよ」


俺は濁した。

女子の話を盗み聞きしたとは言えない…


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「真希ちゃん、誕生日いつ?」


「9月20日だよー。美咲ちゃんは誕生日いつなのー?」


「6月6日だよ」


「絶対祝うね!」


「ありがとー!」


小林さんと、同じ2組の村上(むらかみ) 真希(まき)さんが話をしていた。

その横を通った時、小林さんの誕生日を知ったのだ。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


この時、俺は数字の6が好きになったのをよく覚えている。

今日は6月3日なので、あと3日で小林さんの誕生日だ。


どうにか祝いたいとは思ったものの、祝えない理由がある。


例えるなら…

あなたは突然、同僚や同級生に誕生日を祝われる。

教えてもいないのに、祝われる。


なんか、怖いよね?


そんな訳で、正面突破は不可能だった。


外は梅雨が長引き、じめっとしている。

小林さんに想いを伝える方法を考えながら帰宅した。




パタン!


「すごい…」

家に帰って本を読んでいると、印象的な文があった。


『行動を起こす前に悩み込むのは愚か者である。

何事も結果ありきのものであり、その経緯がどんなものだったとしても、最後に自分が良いと思える結果ならそれまでの経緯は正しいのであり、誤りなんてない。まずは()()()()()()し、様々な経緯を試せ

それをせずに、他者を羨む者は最上の愚か者だ』


随分長い文だが、前半は理解ができた。

結果的に小林さんと関わる機会が増えればいいので

普通に、気軽に祝ってあげる事が一番だと気づけた。


後半は…よくわからなかった。

羨む人なんて………


これから先、人を羨むのはやめようと思ったが

まだまだきびしいかもしれない。





やってきた。ついにその日が。

家の日めくりカレンダーを6日にし、

俺はいつもより早く家を出た。

小林さんが来るのを待つつもりだ。

いつもの通学路だが、なんだか空気が重かった。

何故かはわからないが、妙に息苦しく、寂しい。

不吉な予感がする中、俺は学校に向かう。




あれっ、開いてる…




俺が昇降口の扉を開けようと思ったら、既に開いていた。

いつもは俺が開けているが、今日は開いていた。


ガラッ!


朝から辛い階段を上がり教室に着いた。

そこで、俺は目を疑った。


「えっ、小林さん…」


たった一人、小林さんだけが教室にいた。

それも、何も無かったかのように勉強している。

いつもはいないのだが…

これは千載一遇のチャンスだ。

好きな子と2人きり。誰もが望むだろう。



だが、ここに望まない人間がいる。

想定外の事に慌てふためく臆病者(チキン)がいる。



「あっ、えーと…」


ガラッ!


教室の引き戸が開き、なんと俊明が入ってきた。

すると、こちらに駆け寄り、一言放った。



「小林さん!誕生日おめでとう!」


「ありがとう、俊明くん!」


「…………」


言葉が出ない。

口が開かない。

(まぶた)の震えが止まらない。

「今日誕生日なんだ、おめでとう!」…と

それだけが言えなかった。



「覚えててくれたんだね」

「忘れないよ、教えてくれたのこの間だし」

「結構前じゃない?」

「そんな事ないよ、それよりさ……」


2人の会話を背に俺はよろめくように席に着いた。

しかし、足の震えは治らない。

それでも俊明はこっちにやってくる。


「おはよう城谷くん」


「…おはよう」

ガタッ…

「なんだよ、どこ行くの?」

「お腹痛くて…トイレ」

「あー…」


逃げるように俺は教室を出た。

今までにない速さで廊下を走り

トイレに向かった。


バタン!


勢いよく個室のドアを閉め、便座に座った。

「どうして…どうして……」

堪えていた涙があふれる。

情けない、情けない…

そう思いながらも、何もできない自分。

足が震え、涙の止まらない自分。

そんな自分が憎らしかった。

自分への憤りと失望で、立ち直れなかった。


寂しげなトイレには鶏の鳴き声が弱く響いていた。

投稿が遅くなりました。

最近とても忙しく、今回は2週間程開きました。

次回、次次回くらいまでは遅くなります。

今後ともよろしくお願いします


―――――ナッツ

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