波乱万丈の夏休み②
今回とくになにもありません。
海に行った次の日。
みんな起きたのは昼過ぎである。
「おそようみんな〜!今日は何する?」
小鳥遊の元気を分けて欲しい。
「お前らほんとに居るのな。親は許可してんのかよ?」
「俺は一人暮らしだし、問題ない」
そうだ、大悟がほとんど毎日バイトをしているわけ、それは生活費を稼ぐためだ。
「私は友達の手伝いをするって言ったら許してくれたわ」
いやまて、それはおかしいだろ。放任にも程がある。
そして俺はちらりと小鳥遊の方を向く。
「あたし?夏休み中貴重な体験ができるから友達の家に泊まるって言ったら許してくれたよ!」
俺はそれ以上何も言わないことにした。
しかし、友達と一緒に夏休みを過ごせるのは楽しいし、退屈しないのでいいと思う。
問題点といえば……オ〇ニーが出来ない事ぐらいだろう。
しかも、可愛い女子2人と一つ屋根の下で過ごす。俺の理性が崩壊しないか心配だった。
「おにい買い出し行ってきて」
こいつ俺が省エネ主義だってこと知ってんだろ。
「なんで俺が家から出なきゃならんのだ」
「私晩御飯の準備とか色々あるからさ。それともおにいが作る?」
俺料理なんて出来ませんすみません行ってきます。
深いため息をついたあと
「はいはいわかった。必要なものLINEして」
助かるー!と妹が言いながら携帯を取り出し、文字を打ち始める。
すると、俺にメッセージが届く。
『玉ねぎキャベツケチャップネギ卵』
「なかなか量あるな……まあいいや、行ってくる」
そして、俺は家から出ようと玄関へ向かった。
「あの……私も行っていいかしら?」
控えめに聞いてきた小野塚
断る理由もないので、一応注意だけする。
「いいけど、こっからスーパーまで結構距離あるぞ?」
「あら、体力には自信がある方なのよ?」
と笑いながら言ってくる。
そして、俺らは空が真っ赤に染まる時間、買い出しに行った。
スーパーに行くまでに、俺と小野塚は色々な話をした。勉強は大丈夫か?や、宿題終わったかとか、ほんとに色々。
暇人の俺は厄介なものは先に終わらせ、後半ゆっくりしたいので宿題はもらった初日にすべて終わらせた。
その事を言うと、ええ!?どのタイミングで……?と小野塚が考え込んでいたが、夏休み初日じゃなくてもらった日に終わらせた、と説明してやった。
そして、スーパーに着いた。
「ここのスーパー色々売ってるんだよ。日用品から工具まで色々」
「ほんとに色々あるわね…これだとスーパーと言うか、ホームセンターね」
なかなかいいことを言うじゃないか。
昨日の夜、大悟に言ったあの言葉を思い出し、若干恥ずかしくなる。
この内心の焦りを悟られないよう、話を変える。
「さっさと買って帰ろうぜ。今頃小鳥遊が腹減ったってうるさくしてるだろ」
冗談めかして言った俺の言葉に小野塚も便乗して。
「そうね、あの子今頃葉月ちゃんに宥められてるわよ」
その光景が目に浮かぶ。
頼まれたもの全てを買い、俺達は帰路につく。
もう日が沈み、辺りは真っ暗だ。
「ここら辺の夜って怖いわね…」
「まぁ、街灯少ないし暗いからね。もしかして怖いの苦手?」
すると、小野塚は首を縦に振る。
可愛いじゃねーか。
「大丈夫だよ、なんかあったら俺が守るよ」
やべぇ、こんなこと初めて言ったよ。俺キモいな。
「ふふ、それは頼もしいわね」
安心した、と小野塚最後呟いたように言った。
するとその時、俺の携帯が振動した。
電話だ。相手は妹。
『あー繋がった。おにいお金あといくらある?』
「んー、1500ぐらいかな」
『よかった!醤油と小麦粉、あと塩コショウも追加で!』
それだけ言い残すと、プー、プーと電話が切れた音が鳴る。
「あの野郎……!」
俺のつぶやきが聞こえてたらしく、小野塚は
「葉月ちゃんっていつもこんな感じなの?」
「ああ、俺と似ていて遠慮がないと言うか、自由というか……ほんとに困ったもんだな」
そして俺らはまたスーパーに向かうべく、今来た道を引き返す。
自由すぎる妹によって、新たな買い出しを頼まれた俺らは、醤油、小麦粉、塩コショウを買ったあと、暑いのでコンビニに寄り、アイスを食べることにした。
「私達だけアイスを食べていいのかしら?」
「いいんだよ。あの妹が電話してこなければ今頃俺らもクーラーの効いた部屋でくつろげてたんだし」
変な理屈…と笑いながら小野塚は言う。
「それにしても、やっぱ夏の夜って暑いよな」
そういって小野塚の方を見ると、汗によって服がすけている。
(うわ、直視出来ねぇ……!)
「そうね、昼間ほどじゃないとはいえ、やっぱり暑いわ……」
俺は気を紛らすため、アイスを口の中に放り込む。
そして、小野が食べ終わるまで携帯を取り出し、大悟と連絡を取る。
『そっちなんか変わったこと起きたか?』
送ってから、秒で返信が来た。
『何もないけどさ
俺の居場所なくて泣く笑笑』
それは俺の知ったことでは無かったのでスルーだ。
『何もなかったのか。飯は食べたか?』
『いや、お前ら帰ってこないと料理ができないってよ。早く帰ってこい笑』
『はいはいわかりました。そーいえば、小鳥遊は腹減ったって騒いでないか?』
『さっきまで騒いでいたけど、今は葉月ちゃんが宥めてるよ』
うわ……やっぱりか
『じゃあそろそろ帰るわ。また後で』
軽いやりとりをしている間に小野塚はアイスを食べ終わり、帰り支度を整えていた。
「じゃあ、帰りましょうか」
そういって歩き出す。釣られて俺も歩き出そうと右足を踏み出し、硬直する。
小野塚と2人きりとかこんなチャンス二度とない。
言うなら今しかない。例え当たって砕けても、人間はそうやって成長するものだ。と自分に言い聞かせ、俺は勇気をかき集める。
「小野塚」
そして、俺は小野塚を呼び止めた。
「なに?」
「お、俺は、図書室で君と会った時から、君が好きだ。一目惚れだ。よかったら、俺と付き合ってほしい」
今日か、明日までには次の話を書きます。




