初詣 上
冒頭から少し冒険してみました
「いいよ……お兄ちゃん」
俺は今、金髪の少女と訳あって2人きりになっている。
「わかった。やるぞ」
覚悟を決め、行為に入る。
「んん……あっ、お兄、ちゃん。激しいよぉ……」
「ごめん、初めてだからよくわからなくて」
力加減とか速度とか、その他もろもろ。
注意を受けたので、先程より優しく、そっと撫でるようにやる。
「それぐらい……気持ちいい」
それからしばらく、マルの髪が乾いたのでタオルを離す。
「ありがとう」
「どういたしまして」
1局終えて、トイレに行きたくなった俺は廊下へ出たのだが、丁度マルが出てきた。
その時、髪がまだ濡れていたので、俺が拭くことにしたんだが。
「悪いな。人の髪を拭くの初めてで」
「ううん。最初は激しかったけど最後の方は優しくて良かったよ」
なんて優しい子なんだろう。好きな人がいなければ確実に惚れていた。
「じゃ、俺トイレ行ってくる」
やることはやったし、そろそろ限界だ。
「うんっ、ありがと」
「どうしたしまして」
すっかり乾いたマルの髪を見て、俺はトイレへ向かう。
「じゃあそろそろ行こうか」
のんびりしていたら時間があっという間に過ぎたんで、俺らは出発する。
ここから大悟の家まで五分程で行けるので、急ぐ必要など全くないのだが、暇で暇で仕方ないから少し早めに出る。
どうせ2人でイチャついているのだろうけど。
今日は風が吹いていなくて、暖かい。初詣にはもってこいだ。
「よし、着いたぞ」
途中、信号が一つあるのだが、押しボタン式で押せばすぐに変わる。
なので信号待ちはそんなにかからず、速やかに大悟の家へ着いた。
ちなみに、みんな歩きだ。マルの自転車が無いのと、神社は混むからだ。
101号室の前に立ち、インターホンを鳴らす。何だかんだで高校に入ってからこいつの家に来るのは初めてだな。
『名を名乗れ』
「…………川崎悠眞」
『暗号を言え』
「いいから開けろ」
「……よかろう」
何でこうもこいつはこんなやり取りをやりたがるのだろうか。最近見てるアニメにそういうシーンが出てきたってのも原因の1つなのかもしれない。
「お前ら早いな」
1LDKの部屋にお邪魔して、部屋の中央に置かれている炬燵の中に入り、くつろぐ。
暖かいと言っても冬は冬。気温はそこまで高くない。
「もうここで寝ようぜ……」
「何? アホなの? 行くに決まってるじゃん」
「だよなぁ……」
そういえば凛花がいないな。どうしたんだろう。
「そういえば凛花はどうしたの?」
そんな俺の謎を代弁するように、美咲希が大悟に聞いていた。
「あーっと、なんか色々準備とかしてるっぽい」
「……起きてるの?」
「メッセージ来たから寝てはいないと思うけど……どうしよう不安になってきた」
なんて言うか、アホだ。こいつは本気でアホだ。
「大丈夫みたいだぞ。ちゃんと起きてる」
俺もただ見てるだけじゃなくて、凛花に連絡を入れていた。内容は『起きてるか?』
返事はすぐに返ってきて、寝てはいないことを証明している。
『ごめーん! ちょっと忙しくて……』
『メッセ打ってる暇あるならはよ用事済ませろw』
『らじゃー!』
文章まで騒がしいのがこいつのいいところだよな。元気を分けてもらえる。
再び炬燵でくつろいでいると、携帯が鳴った。凛花のやつまだなんかあんのか?
『ちんこ』
「……」
いや、なんでこのタイミングで送って来るかね? 不意打ちすぎて反応に困る。
「誰から?」
「頭がおかしいやつからだ。気にするな」
葉月が俺の携帯を覗こうとしてきたので、全力で隠す。別に見られたら嫌だとかいう訳じゃないんだけど、なんか反射的に。
「む……怪しい」
俺のとった行動がまずかったのか、逆に葉月に火をつけてしまったらしい。
「おらー! 見せろー!」
「ちょ待て待て! やめろっての!」
立ち上がり、炬燵の周りをぐるぐる回って追いかけっこを始める川崎兄妹。俺らも十分アホだ。
「止まれおにい!」
「あんま暴れると怒られるだろーが!! お前が止まれ!」
追いかけっこは更にヒートアップ。美咲希とマルまで加わって場はカオス。もちろん標的は俺。
……マジで怒られそうだからもうやめて欲しいんだが。
「だ、大悟! 助けてくれ」
「もっとやれもっとやれ!」
ダメだ。この場にまともなやつなんていない。そうか、そもそもここ1階だし隣に人住んでないから文句の言われようがないのか。
「まてー!」
「……全力で行くわ」
「捕まえたっ!」
「うわっ!?」
後ろに気を取られて前にいた刺客に気づかなかった。
もともとそんなに速く走り回っていたわけじゃないので、真正面からマルに抱きつかれても吹っ飛ぶことは無かった。
「よっしゃマルちゃんナイス!」
「そのまま抑えて!」
流石に不利だ。諦めるしかないのか?
「来たぞー! って、何楽しそうなことやってるの?」
インターホンも押さずにドアを開け、凛花が参上してくる。
「よし、神社に行くぞ」
「そうだな、行こうぜ」
無理やり話を変えた俺に、便乗してくれた大悟。
やっぱ持つべきものは友人だな。
「あけおめです凛花さん」
「あけおめ! 今年も色々迷惑かけるよ!」
迷惑かける前提かよ……ま、凛花らしいよな。
葉月達も熱が冷めたようで、もう俺の携帯を奪おうとはしてこなかった。
『いきなりなんだよ』
そういえばこいつ、前にも同じ文送ってきたよな。
『何してるかなーって思って』
『だからってちんこはないだろ』
『これが! 俺の! ちゃーむぽいんと!』
うむ、わからん。何を言っているのだこいつは。
「誰とやりとりしてるの?」
「1組の野田卓已。知ってるか?」
「ああ、図書室に来たと思えば大量のラノベを借りてく人ね」
あいつそんなことしてたのか。変人だな。
「同じ中学だったんだよ。クラス離れてからはあんま話せてないけど。そいつとやりとりしてる」
「へぇ。そうなのね。どんな感じのやりとり?」
どうしたものか。説明しにくいとかいうレベルじゃないぞこれ。いやでも下手にごまかすよりはいいよな……
「ちんこって送られてきたから意味わかんねぇって送り返したところ」
「最低……」
美咲希とは別の方から声が聞こえた。声の主は葉月だろう。
「いや俺悪くなくね?」
「こんな昼間からそんな事言ってるから悪いんだよ。罰でも当たっちゃえ」
恐ろしいことを言ってくるな妹よ。
てか、結局話すんならさっき携帯を隠さなくても良かったじゃん。
ここから神社までは歩いて20分ほどだ。この地域では最もでかい神社で、この時期になるとCMで流れていたりする。時々たまーにだが。
しんと静まり返っていた道も、神社に近づくにつれて賑やかになっている。大勢の参拝客が押し寄せているのだ。
「うひゃー。相変わらずすごい人だね」
流石に凛花もこの人混みには驚いているようだ。
「何回来ても慣れないよな。正月の人口ならほかの街にも負けてないんだけどなぁ……」
「はぐれないように手を繋ぎませんか?」
「そうだね、その方がいいよ」
葉月の提案に凛花が答えていた。次第にその声は遠くなっていって――
「……やべぇ、はぐれた」
屋台に気を取られていた俺は、知らずのうちにみんなとはぐれてしまった。
7月も今日で終わり。皆さんはどのように今月を過ごしましたか?
自分はとにかくゲーセンに行きました(笑)
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