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トーナメント 上

ゆっくりまったりで進んでいきます。

「よう。来たぞ」

 陽気な声でそういったのは大悟。

 こいつら誘うためにメッセージを送信したのだが、既読がめちゃくちゃ早くて話が円滑に進んだ。

「悪いな。急に呼び出して」

 毎度毎度急に呼び出しているんだが、その度に俺は詫びる。

「いつもの事だろ。気にすんな。で、噂のマルちゃんは?」

 一応文字では伝えたのだが、マル本人は来てからのお楽しみって事にしておいた。

 そっちの方が楽しいじゃん。

「中で待ってる。寒いからさっさと入れ入れ」

 楽しみなのは俺も例外ではない。

 何せ久しぶりにみんなでゲームするのだ。

 外は相変わらず寒く、大悟も凛花も厚着をしている。

「「おじゃましまーす」」

「どうぞー」

 一応お邪魔されてるので、返事をした。

 それが聞こえたのか、リビングから葉月も、

「どうぞー」

 と言っていた。

 それから程なくして、俺らはリビングに入った。


 マルと大悟は初対面なので、当然自己紹介から始まる。

「マルティナ・アルドべりです! マルって呼んでください」

 マルは誰にでも同じ自己紹介をするんだな。

 それに対して、大悟の自己紹介は――

「松山大悟。悠眞と同じ学校に通ってるよ。よろしくね、マルちゃん」

 普通だった。

 これだと相手に好印象与えることは出来ないが、悪印象を与えることもない。

 ま、様子見には丁度いいだろ。

「ほんじゃ、始めるか」

 そう言って、俺は声をかける。


「よっしゃあ!」

 ゲームのシステムにあるトーナメントによって、順番は振り分けられた。

 ルールは1対1。2回場外に出たものの負け。

 その1回戦目は俺と大悟だった。

 当然、俺が勝った。

「ちくしょー。また負けた……」

 ほとんど勝利が約束された勝負でも、勝つのは嬉しい。

 俺らの戦いにコメントしてくるものはおらず、真剣に見ていた。

「大悟、ちょっといいか?」

「ん? 別にいいぞ」

 このままだと暇になるので、俺は大悟を呼んで廊下へ出る。

 暖房が効いているリビングとは違い、少しひんやりしている。

「で、呼び出した理由は?」

「特にない。リビング暑かったから廊下に出ただけ」

「それだけかよ……」

 苦笑いを浮かべる大悟。

 まぁ、いきなり呼び出されたのに特に理由ないとか、なかなかふざけてる話だ。

 実際、気になってる事はある。だが、今はまだ確信がない。俺が適当なことを言って、周りに変な心配をかけるわけにはいけない。

 俺に嘘を見抜く能力も、人の心を読める能力もないが、多分あの子――マルは何かを隠している。

「にしてもさ、悠眞少し手加減してくれたってよくね?」

 俺が色々ごちゃごちゃ考えていたら、不意に大悟がそう言う。

「いやー、悪いな。俺はマルに勝たなきゃいけないんだわ」

「マルちゃんに? でも、あの子この前来日してきたばかりだろ?」

「それがそうなんだがなぁ……めちゃくちゃ強い。あの子は間違いなく決勝まで勝ち進むよ」

 このトーナメントに参戦しているのは6人だ。

 なので、2連勝すれば決勝に進めるわけだが、マルは2回戦目、確実に葉月と当たるだろう。

「でも、葉月がいるだろ? 勝てるのか?」

 そんな俺の心を読んだのか、大悟が問うてくる。

「勝率は五分五分ってところだ。葉月が冷静さを欠いたらマルが勝つ」

「へぇ、そんなに強いのか。じゃあ見物だな」

「見逃さないためにもそろそろ戻るか」

 喋りこんでいるうちに、既に5分ほど経っており、いい具合に体温が下がっていた。

 大悟は静かに頷き、リビングへと足を進めた。


「よーし、まず1勝!」

 凛花に勝った葉月が満面の笑みで言った。

 当然の結果なんだけどな。

「次はマルと美咲希か」

 因縁の対決か。即行で果たされるとは。

「ふふっ。マルちゃん、どちらが上か勝負よ」

「負けません!」

 2人とも気合入ってるな。しかも楽しそうだ。

 トーナメントをやって良かったなと、心から思う。

「ねぇ、悠眞。あの2人何かあるの?」

 疑問に思った凛花がそんなことを言ってきた。

「あるぞ。今日トーナメントやるって言ったのはこのためだ」

「へぇー。じゃあ目玉ってわけだ」

「そうなるな」

 美咲希がマルに勝てるのか、俺にはわからない。

 ただ、いい勝負になるだろ。

 俺はハンデとして、相手の戦いを見ないことになってるから見届けられないんだけど。

「葉月、ちょっといいか?」

 再び暇になるので、今度は葉月を呼んだ。

「ん? なにどしたのおにい」

 葉月は拒むことなく、俺達は廊下へ出た。

「うっわさむっ」

 上着を着ていないので、結構寒い。長時間は居られないだろう。

「マル、なにか隠してる気がしないか?」

 唐突に言った俺の言葉に、葉月は一瞬目を見開いたが、やがて、

「へぇ……おにいにしては鋭いね」

 と言ってくる。つまりこいつも気づいていたんだろう。

「それが何か、わかるか?」

「そんなのわかんないよ。直接本人から聞かないと」

「そうだよな。すまん」

 もしかしたら女の勘で分かるんじゃないかと期待したのだが、過大評価していたみたいだ。

「……でも何かやばいことを隠してるよね。知りたいような知りたくないような感じ」

 言いたいことはわかる。しかし、俺は知らなければならないと思う。

「ま、本人から言ってくるまではそっとしておいてやろうぜ。言いたくないことを無理に言わせるのは良くないからな」

 正直、気にならないのかと言うと嘘になる。

「そうだね。おにいにしてはいいこと言うじゃん」

「最後のは余計だ」

 最初は大悟に相談しようと思ったんだけど、あいつ心配症だからな。葉月に相談して良かった。

「じゃ、そろそろ戻るか。もう試合終わってるかもしれないぞ?」

「ふっふっふ。楽しくなってきたねぇ。あ、おにいシード枠ね。じゃないと私マルちゃんと戦えないから」

 そう言って、葉月はリビングへと向かっていった。

「全く……俺に拒否権はなしかよ」

 まぁ、葉月とマルが戦うところは見てみたいし、拒否しないけど。

 そして、俺もリビングへ向かった。


「ぬわー! おらー!」

 葉月VSマルの戦いは凄まじかった。

 葉月が奇声を上げながらやっていて、マルはそれを笑っている。

 戦況は、均衡と言ったところか。

 ちなみに、このレベルになると流石に俺も辛いので、試合観戦が許された。

「長ぇよお前ら」

 本心を告げた俺。

 しかし、反応はない。黙っていろということか。まあ、仕方ないだろう。真剣だしな。

「ほんとに長いね。いつになったら終わるの?」

 凛花がそう言う。

「後5分はかかるな」

 両者とも致命傷がなく、こつこつとパーセンテージを稼いでいる状態だ。その差は+-10で、なかなか差は開かない。

「マルちゃん倒す方法はないの?」

 凛花は葉月の事を応援しているらしく、俺にそんなことを聞いてくる。

「無いことにはない。カウンターだ」

「かうんたー?」

「大体は剣士のキャラが使える技だ。相手の攻撃のタイミングに合わせて技を発動させると自分は攻撃を食らわずに相手を攻撃できるものだ」

 最も、葉月は使えない。

 仮に使えたとしても、練度や使いやすさが違うので、カウンターを発動させる前に負けてしまうだろう。実質、葉月に勝機はない。

「さーて、こっからどうなるかな」

 どっちの応援もすること無く、興味本位で試合を見る。というか、これほど面白い試合を見ないで何をするんだ。

「マルちゃんやるねぇ。そろそろ決めに行くよ」

「望むところですっ!」

 そう言って、2人は大技を決めにいった。

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