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クリパ⑦

クリパ編長いですね……まだ続きます。暖かい目で見ていってください……

「今お風呂から上がったわ」

「ん……了解」

 美咲希がタオルを首元に巻きながらそう言う。

 微妙に濡れている艶やかな髪が妙にエロい。

 リビングはテレビが付いているが、音量は小さく、各自スマホなどをいじっているのでなんとも言えない静けさが部屋を漂っている。

 聞こえてくるのはテレビの音、スマホのタイプ音、食器を洗う音。どれもどこにでもあるような音だが、それらが合わさることによって、どこか落ち着くようなハーモニーを奏でている。

 その音に多少の名残惜しさを感じながら、俺は立ち上がり、風呂へと向かう。

「じゃ、行ってくるわ」

「ほーい」

「おー」

「いてらー」

「うぃーす」

 俺に視線をよこさず、みんなそう言う。

 反応してくれたのでまぁいいか。

 それにしても、時の流れは早いのか遅いのかよく分からない。

 過ぎてみると早いな、と感じるが、その流れの中にいる時は長いと感じる。不思議なものだ。

 入学してから今まで色々あったな、と思いを馳せていたら、風呂場についた。

 我が家の風呂場は、リビングを出て左の突き当たりにある。着替えは事前に用意してあるので、わざわざ取りに行く必要は無い。

 そして、全裸になった俺は風呂場へ入り、シャワーの蛇口を軽く捻る。

 美咲希が先に入っていたからか、シャワーの水は最初から暖かく、肌に触れた瞬間、冬の寒さによって冷えた俺の体温を温めていく。

「ふぅ……」

 今日はあちこちに動き回ったので、なかなか疲れた。

 なので、シャワーから放たれている柔らかなお湯はそんな俺の心と体を温めていく。

 その感覚に浸りながら、髪を洗い、次に体を洗っていく。

 1通り洗い終えた俺は、シャワーを止め、湯船へ向かう。

 シャワーを少し止めただけなのに、冬の冷気は健全で、一瞬にして風呂場を支配していく。

 いや、もしかしたら暖かいシャワーに慣れた体がそう錯覚させているのかもな。

 そして、温度を確かめながら湯船に浸かる。

「はぁー……心に染みる……」

 そんなおっさんのような声を上げ、風呂を存分に楽しむ。

 リビングよりも静かで、どこか心細さを覚える風呂場。そこは、考え事をするにはもってこいの場所で、大体の考え事はここでしている。

「もうそろそろ受験から1年経つのか……意外と早いものだな」

 その独り言は誰に届ける訳でもなく、風呂場にかすかな反響をして消えていく。

 そして、十分に温まった俺は風呂場を出て、体を拭き、服を着てリビングへ向かう。

 扉を開けた瞬間、トイレへ行っていたのか、美咲希がいた。

「意外と長いのね」

「まぁな。冬場だし、温まっておきたくて」

 俺らは横に並び、リビングへと向かう。

「……俺達が出会って、そろそろ1年経つよな」

「まだ気が早いんじゃない?4ヶ月ぐらい残ってるわよ」

「確かに。これからもよろしくな」

「何よ改まって。……こちらこそよろしく」

 美咲希の声は小さかったが、俺はにちゃんと届いた。

 その言葉を聞いた俺は、微笑んでいた。

 それを見た美咲希は、

「何笑ってるのよ」

 と、不機嫌になっていた。

「いや、なんか始めて会ったときはこんな関係になってるとは思わなくてさ」

 俺が微笑みながらそう言った。

「この先何が起こるかわからないから人生って面白いんじゃない?」

 先に何が起こるか分かりきったゲームなんてつまらないもんな。

「確かに。そりゃ違いない」

 そうして、俺らはリビングにたどり着いた。


「小鳥遊、空いたぞ」

 先程となんにも変わらない程よい静けさのリビングで、俺の発した声はちゃんと小鳥遊に届く。

「ほーい。じゃあお風呂借りるね」

 小鳥遊がリビングを出たら、さらにリビングは静かになった。あいつ一人の存在がどれほど大きいかが分かる。ムードメイカーだもんな。

 だが、耐えられない静寂ではなく、どこか心地がいい。

 落ち着くというか、なんというか。

 小鳥遊も一時的にこの場を離脱したこともあって、俺は大悟に質問をした。

「なぁ大悟。お前さ、これからどうしようとしてんの?」

「なにが?」

「小鳥遊との関係。卒業した後の関係」

「……考えたこともなかった。悠眞はどうすんの?」

「俺は……そうだな、一応考えてあるぞ。でもまぁ、この場では言い難いわ」

 この関係が続くとなると、やがては考えなくてはならないだろう。恥ずかしいので何がとは言わない。

 美咲希の方を見ると、ハッキリ言えという視線を送ってくる。美咲希とは今度相談しよう。

「小鳥遊いないから言うけど、結婚とか考えてんの?」

「け、結婚!?そんな先のこと、わかんねぇよ……」

 そりゃそうだよな。

「お前、一生守ってやれよ。お前が適任だ」

「言われなくてもそうするさ。そーゆーお前もな」

 なんだよ。ちゃんと未来見据えてんじゃん。

 心配するだけ無駄だった訳か。

「当たり前だろ」

 だから恥ずかしいんだってこっちは。美咲希いるから。

 まぁ、これで大悟を優柔不断なやつではないとわかったから良しとしよう。

 風呂上がりは何もする気にもなれず、ソファーに座っていたら、美咲希が隣に座ってくる。

 前になんでわざわざ俺の隣に来るのかと質問したら、安心するからと答えてきた。

 まぁ俺も嬉しいからこばまないけど。

 そうして、俺らの静かで暖かい日常は少しずつだが確実に過ぎていった。


 小鳥遊が風呂から上がったのはそれからそれほど時間はかからなかった。

「葉月ちゃん上がったよー!」と言っていたのは記憶に新しい。

 俺は、体重を預けてくる美咲希を支えながら、睡魔と戦っていた。

 ここで寝ても何の問題もないのだが、美咲希から漂うシャンプーの匂いが邪魔をしてくる。使ってるのうちのシャンプーなんだけど。

 それでも、そのシャンプーを凶器へと変えてしまうほど、美咲希の存在は大きい。

 そんな俺の気も知らないだろと、美咲希を見ると、どうやら寝てしまったらしい。

 ……俺動けないじゃん。

 美咲希を起こさないよう、慎重に携帯を取り出して、適当にやった暇を潰す。

 今はゲームをやる気分じゃなかったので、小説家になろうというサイトで面白そうな題名の作品を探す。

(やっぱここは流行りの異世界モノを読もうか……?純愛モノも捨てがたいな……)

 このサイトでは、溢れるほど作品が多く存在する。なので、読もうと思えばいくらでも読める。

 結局、面白そうなものを見つけ出せず、ランキング1位の作品を読んだ。

 その作品は既に完結していて、とても今の時間では読み切れない。

 だが、暇をしのぐにはいいだろう。

 そして、俺はその作品を読み進めた。


 葉月が風呂から上がり、大悟が風呂に向かった後も、俺は読み続けた。

 正直いって超面白い。流石ランキング1位。

 ただ、30分ぐらいずっと座ったままなので、そろそろ腰が痛い。美咲希も起きる気配はない。

 そして、睡眠欲がピークへ達した俺は、そのまま寝てしまった。

最近やる気を出しているいかすみぱすたです。

このやる気が空回りしなければいいのですが……現実はそう簡単に上手くいかないものですね。

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