クリパ⑥
特に何も起こらない平和な回です。読んでくだされば嬉しいです
「次なにしよっか?」
小鳥遊がそう言うと、短い間、沈黙があったが、やがて
「……することが無い」
俺のその言葉に、再び場が凍った。
まぁそりゃそうだろ。みんなが必死に考えているのに、俺が現実を突きつけたもんな。
「悠眞……お前少しは空気読めよ」
俺なりに結構空気読んだつもりなんだがなぁ……
「だったらなんだ、お前はこのままずっと黙想してろとでも言いたいのか?」
やることないし事実だから別にいいだろう。
「……そうだな。もう日も暮れるし、することないよな」
少しの時間考えて、大悟は俺の言葉に一理あると判断したんだろう。
無企画なパーティーとはこれ如何に。
まぁ、それが俺たちらしいと言えるのだろう。
「なら、何もしなくていいんじゃないか?だって、今まで思いつきで動いてきたし」
俺がそう言うと、他のみんなは大きく目を見開いた。が、すぐに納得したような表情を浮かべる。
「そうね。今思えばすることを見つけようとしなくてもいいじゃない。だって、私達は高校生で、高校生は一生に一度しかないもの。楽しまなくて何をするのよ」
堂々と言い放つ美咲希に、みんなは頷く。
「そう……だよね。あたし達らしくやろうよ!ありがとう悠眞。大切なものを見失うところだったよ」
そして、にひ、と笑いかけてくる小鳥遊。その笑顔は、どことなく眩しかった。
「悠眞?浮気とは結構大胆じゃない」
美咲希違うんです落ち着いてください。
「そんなわけないから!?」
ついでかい声で反論してしまった。これだと余裕で疑われるだろ。
「じゃあなんでそんなでかい声で反論してくるのかしら?」
ほれみろ言った通りだろう。
「大体なぁ、小鳥遊と大悟付き合ってるだろ?それに、俺の好きな人はこの世界で家族除けばこの世界で1人しかいないって」
「そう……まぁいいわ。許してあげる」
口調と表情こそ変わってないものの、耳は真っ赤に染まっている。
やっぱ可愛いなこいつ。
「そりゃどうも」
軽く礼をして、美咲希に感謝をする。もちろん形だけ。
「そーいや葉月、お前高校どこ行くんだ?」
ふと気になった。こいつ受験生のはずなのにそれらしいことは全くやってない。
「あはは……もうそんな時期なんだ」
少し前にこいつの通信簿を見たのだが、成績は俺と同等の中の下。これだと、行ける高校はかなり限られるのだが。
「で?どこ行くつもりなんだ?」
再び俺が問うと
「おにい達と同じ高校にしようかなって思ってる……」
こいつも同じ高校とか、いよいよカオスになるな。
どうしようマジで。
「あら、葉月ちゃんもあそこ目指してるのね。問題ないと思うわ。葉月ちゃんならすぐにあの雰囲気に馴染めるわよ」
俺らの通ってる高校、残念なことに偏差値はそんなに高くない。だが、何故か危ない雰囲気を纏ってるやつはほとんどいなくて、学校全体の学力は面白いことに3学年ともほとんど同じだ。
ただ、元気で陽気な人がたくさんいるので、明るい個性と初対面の人に話しかける勇気を持ってないと教室の隅っこで一人ぼっちになる。
まぁ、それはどこでも同じなんだろうけど。
「そうですかね?そうだといいです」
葉月の言葉は、不安が混じっていた。気持ちはよくわかる。受験経験したことないもんな。結果が出るまでは物凄く不安なものだ。その分、合格した時の喜びは大きいが。
「そう緊張すんなって。この場には高校生が4人いるんだから、わからないことはちゃんと聞けよ?」
「おにいのクセに生意気……」
この妹は本当に素直じゃないな。
「ま、いいや。とりあえず今日は受験とか色々忘れて楽しむか」
と言ってもすることないんだけど。
また場が凍るのでもうそんなことは言わない。
「なー、正月なにする?」
「寝る」
大悟の問いに即答した俺。
実際、正月もすることないからな。
要するに、年中することが無い。
「することないのか。じゃあ初日の出見に行かない?」
は?こいつ今なんて言った?
聞き間違いだよな?
「ごめんもう1回言って」
「初日の出見に行かない?」
聞き間違いじゃなかった。なんで寒い明け方に外に出て初日の出を見に行かなきゃならないんだ……こいつ悪魔か。
「……マジで言ってる?」
「結構マジ」
「マジかよ……」
「マジだよ」
露骨に嫌がる俺を見て、葉月が
「大悟さん、おにいは連れていくんで初日の出行きましょう!あ、でも、私邪魔になりませんか?」
恐らく、リア充2組の間に入って大丈夫か?と言う意味だろう。
これについては俺からはなんの意見もないので黙っている。
「私は構わないわよ?葉月ちゃんいた方が楽しいし」
美咲希はわいわい騒ぐのが好きだからそういうだろうと思ったよ。
「俺らも構わないよ。このいつものメンバーで行きたい」
大悟は仲間を大切にする人だ。だから、喧嘩してもそう簡単に嫌いになれないんだよな。
「ありがとうございます!えっと……おにいは?」
なんでそうおどおどしながらこっち見るんだよ。何年間兄妹やってるんだよ全く。
「ダメな理由あるわけないだろ。お前が邪魔だったらすぐにそう言ってるだろーが」
俺のその言葉に、葉月は嬉しそうに笑い、
「ありがと」
と、言ってくる。
その笑顔は破壊力が高く、好きな人がいなかったら惚れていただろう。
そうして、俺らの正月の予定は決まった。
時刻は18:00。することが無く、適当にゲームを始めた俺。それに便乗した美咲希。
俺の部屋から複数のラノベを持ってきた葉月。それを読み始めた小鳥遊と大悟。
各自それぞれの時間の潰し方を実行している地味な絵面。それが俺らの日常。
「そろそろお風呂に入りませんか?」
葉月の言葉と同時に、『お風呂が沸きました』と風呂から報告が来る。もちろん機械。風呂とリビングを繋ぐモニター的なやつだ。
「そうだな。早めに入っておこうぜ。順番はどうすんの?」
俺が問うと、葉月は
「ジャンケンしましょう!勝った人から入るってルールで」
特に異論は無く、みんなでジャンケンを始める。
「1番目はあたしがいただいた!」
と、小鳥遊が自信ありげにそう言う。大悟から聞いたのだが、こいつの運は並のものではないらしい。
「あら、凛花私がいる事を忘れないで欲しいわね」
美咲希も相当な運の持ち主だ。まぁ、俺は勝てない勝負にムキになったりはしない。だから、もう最後を覚悟している。
大悟はなんか微妙な表情を浮かべている。
「いきますよー!ジャーンケーン」
「「「「ポン!」」」」
長丁場になると思われたジャンケンは、たった1回で幕を閉じた。
美咲希の一人勝ち。
その後、3回のジャンケンが行われた。
最終結果は、美咲希、俺、小鳥遊、葉月、大悟だ。
俺の順位が意外と高くて笑いそうになる。1番風呂とはいかないが、2番目なら文句ないだろう。
そうして、俺らは風呂に入ることにした。
最近、音ゲーにどハマりしていて執筆ペースが落ちてます(笑)
そろそろ文庫本1冊の文字数になります。ここまで読んでくださった方、コメントをくださった方、本当にありがとうございます。これからも応援よろしくお願いします
 




