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クリパ②

少し長いです

 同じ日、大悟は凛花と一緒にいた。

 悠眞から指定された時間まで少し間があったので、2人で悠眞の家に向かおうということになった。

「今頃悠眞達何してんだろ?」

「そんなの決まってるよ、イチャイチャしてるんだよ」

 そんなの当然だというような表情で言う凛花。

 まぁ当然なのだろう。あいつらのイチャつきっぷりは学年で最強レベルと言われるほどだ。

 そんな学年屈指のリア充がイチャつかないわけがない。

「そうだな、あいつらだもんな」

 軽く肯定して、俺らは進み出す。

 現在、俺らは、俺の家を出てすぐの交差点にいる。ここから悠眞の家まで、途中曲がったりするがほとんど一直線だ。

 後3分あれば着くだろう。それほど近い。

 指定された時間より10分程早いが、些細(ささい)な事だろう。

 それに、遅れると怒られるし。

「それにしてもさー、大悟と悠眞の家ってほんと近いよねー」

 ほとんど棒読みでそう言ってくる凛花。

「まぁな。小学校の頃はよく遊んでたよ。近くの公園で」

 今から7年くらい前、毎日のようにみんなで公園で集まり、鬼ごっこやかくれんぼ、サッカーなどをやっていた。中学に上がってからは部活などで忙しくて全然遊んでないが。

 そんな昔のことを思い出しているうちに、悠眞の家に着いた。



「おにい財布持った?大悟さん達そろそろ着くって」

 慌ただしく準備をしている俺に向かって、葉月が確認の言葉をかけてきた。

 正直、そんな余裕ないっす。財布どっか消えました。

「ごめん葉月、今話しかけないでくれ。全力で財布どこに置いたか思い出してるから」

 俺の財布は、折りたたみで、手のひらサイズの正方形をしている。

 長財布に比べて1回り以上小さいので、よく見失っている。

 あー、ほんとにどこやったっけ。

 もう既にリビングをグルグル10周しているが、未だに見つからない。もしかしたらここにはないのかもしれない。

「あ……思い出した」

 そういえば俺の部屋にある本棚の上に投げたんだっけ。

「しっかりしなさいよ……」

 美咲希が冷たい目で見てくるが、軽く受け流す。

 そして俺は急いで階段を駆け上り、財布を発見した。

「おにい大悟さん達きたよー!」

 大悟さん達ということは、やはり小鳥遊も一緒だったか。予想通りだな。

 財布を右ポケットに突っ込み、玄関へと向かった。

 財布を取りに来た時とは違い、ゆっくりと階段を下っていたら

「おー、やっぱ学年屈指のリア充は時間に余裕もってますねぇ」

 と、大悟に嫌味ったらしく言われた。

「は?学年屈指?噂は聞いたことあるけど俺はてっきりお前らのことだと思っていたのだがな」

 軽口を叩きながら、挨拶的な言葉を交わした。

 小鳥遊はと言うと、美咲希と葉月となにか喋っている。

「大悟、お前素振りした?」

 気になっていた。こいつが昨日バッセンに行こうと言った時、妙に自信たっぷりだったから。

「んー、ぼちぼち?軽く300本ぐらいかな」

 結構振っとるやん。俺0やぞ。

「それのどこが軽くなんだよ……」

 ま、久々に行くんだし、精一杯楽しむか。

 その後にはゲーセンに行くんだしな。

「じゃ、皆さん行きましょうか!」

 元気よくそういう葉月。そういえば機嫌は直ったのか?こいつ気分屋だからなぁ、根に持つ時もあるし、すぐに忘れる時もある。めちゃくちゃ扱いが難しい。

 機嫌が悪かったら尚更だ。

 そうして、俺らは最初の目的地、バッティングセンターに向かった。


「人少な……」

 俺らの住んでる街にあるバッセンなのだが、昔から人気がなく、利用している人は1人、良くて2人だ。

 よく潰れないな、と思う。

 ここのシステムは、200円で30球打てるというものだ。打つ場所は5つあり、今は3つが空いている。

 美咲希、小鳥遊、葉月は初心者という事もあるので、最初は見ているだけにするという。

 85キロ~130キロまでの球速があり、俺は110を好んで打つ。

「じゃ最初俺と大悟行ってくるわ」

 そう言って、3人のお手本と成るべく、打席へ向かう俺ら。

「大悟勝負しようぜ。より多く前に飛んだ方の勝ち。フライはノーカンな。審判は葉月、どうだ?」

 俺と大悟の実力は、ほとんど同じと言っていいだろう。

 打撃のフォームは違うが、ミート力、ストライクとボールの見極めは対して差がない。

 ただ、足の速さ、守備は大悟に軍配が上がり、対応力、パワーは俺に軍配が上がる。

 それに、この勝負はどちらが多く“前”に飛ばせるか、だ。

 しかも審判を設けている。乗ってこないはずがない。

「それは燃えるなぁ。俺に勝負挑んだこと後悔させてやるよ」

 不敵に笑う大悟。負ける気はないという事だろう。

 そして、200円を機械に入れて、ピッチングマシンが準備を始めた。

「「さぁ、勝負だ!」」


「……はーいでは結果発表しまーす」

 葉月の発した言葉に、俺と大悟は緊張していた。

 別になにか賭けていた訳では無いが、結果発表はやはり緊張する。

「おにいは30分の23、大悟さんは30分の24ですね。おにい残念」

 どこも残念と思ってなさそうな声音でそう告げる葉月。

「よっしゃ!勝った!」

 隣では大悟がはしゃいでいる。

「クソ……今度リベンジしてやる……!」

 勝負事に負けると悔しい。それは、この勝負も例外では無かった。

 悔やむ事は大事だが、いつまで悔やんでいてもしょうが無い。悔しいという気持ちを忘れずに前へ進んでいかなければならない。

 これは、俺が部活で学んだ数少ない事である。

「じゃ、次お前ら行ってこいよ」

 早速気持ちを切り替えて、俺がそう言うと

「んじゃ、おにい。荷物見といて」

「あたしのもお願い!」

「ついでに私のもよろしく」

 女性陣から荷物を見ておけと頼まれました。

「なぁ悠眞、勝負に負けて、さらに女子達から雑用係的な扱い受けて今どんな気持ち?ねぇどんな気持ち?」

 にまぁ、と笑みを浮かべたウザい顔でそう言ってくる大悟。

「そうだなぁ……お前をぶん殴りたい」

 正直にそう言うと

「怖いですねぇ、ふひひ」

 満足そうに笑っている。こいついつぶん殴ろうか。

「それはさておき、お前あの中だと誰が一番打つと思う?」

 俺の問に、大悟は

「そうだなぁ、葉月かな。昔よく小学校のグランドで一緒に野球やってたし。その時、センス良くて絶望した」

 と言った。正直、葉月の運動神経の良さは異常だ。飲み込みが早く、スポーツを1度やれば、中級者と同じレベル程ではないが、初心者より全然上手くやることが出来る。が

(この女子達運動神経異常だからなぁ……正直葉月と同じかそれ以上なんだよな)

 そんなことを思っていたら、突然左から順番に、1テンポ遅れて透き通った金属音が響いた。

 その光景に、俺は戦慄していた。

(全員初球から芯を捉えた……?)

 普通、初心者だったら空振りするだろ……

 その後も、空振りを混じえながらも、確実に芯に当てていた。

「大悟、あいつらどう思う?」

「選手として育てていれば相当なレベルに到達してたと思う。10年前に戻って野球を教えたい」

 真面目な顔をしてそう言っている大悟。だが、俺も同意見だ。

 30球打ち終わって、俺らのいるところに戻ってくる葉月達。

「なかなか楽しかったわね、また来たいわ」

 美咲希が清々しそうにそういった。

「そうですね!日頃からおにいが原因で溜まっているストレスも発散できたことだし、満足です」

 ほんとに満足そうに言う葉月。

 やっぱこいつのストレスの原因って俺なんだな。

 申し訳ございません。

「じゃ、次の目的地へ向かうか」

 俺がそう言って、各々店から出ようとした。

 その時、後ろからどでかい鈍い音が聞こえてきた。

「――ッ!?」

 反射的に後ろを振り向くと、体のでかい、身長は180ありそうな男性がバッティングをしていた。

 スイングスピードは異常で、俺や、俺の元チームメイトにもあんなスイングをした奴は見たことがなかった。それに、ミートも完璧で、毎球芯を捉えている。

 その音はカキーンより、バコーンの方が近いだろう。

「嘘だろ……あんなスイングする人いるのかよ……」

 背筋がゾッとする感覚に襲われた俺。

「悠眞、あの人、ここら辺の強豪校の4番じゃないか?」

 そうか、確かに言われてみればそんな気がする。

「そろそろ行こうぜ。これ以上ここにいるとあいつに嫉妬して呪いそうだ」

 そして、俺らは真面目に次の目的地、ゲーセンへ向かった。


ここまで読んでくださった方、ありがとうございます!感想はいつでも待ってます!

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