隣の席の女の子
今回は野球を取り入れてみました。次から真面目にやります
小鳥遊と隣の席になって色々あった。
「ねぇ悠眞悠眞、消しゴム貸して!」
「ちょっと教科書見せてくれない?」
だの、ほんとに色々。
頼まれた度に貸しているんだが、いくら何でもこの女忘れすぎだろ……
「ねぇ悠眞〜」
なんだこの女まだなんかあんのか。
と思っていたが、どうやら今日は違うようだ。
「今日一緒にご飯食べない?ジュース奢るよ?」
ふむ、なるほど。まあ飯ぐらい一緒に食べてやろうかな。
「飯の誘いか、またなんか忘れたから貸せって言ってくるのかと思ったぞ」
俺が真顔でそう言うと、小鳥遊はおもちゃを取り上げられた犬みたいに、あぅ……と声を上げる。
「そ、それは……いつも感謝してます……。だから!そのお礼のためにジュース奢るって!」
「はいはい、じゃあ午後の紅茶でよろしく」
すると、小鳥遊はパッと表情を明るくして
「え!?一緒に食べてくれるの?やったぁ!!あ、それと、もう1人いるけどいい?」
もう1人って誰だ?と、喉まで出てきた言葉を飲み込み
「お前の友達かなんかか?ならいいよ。じゃあ俺弁当取ってくるから待っててくれ」
そういって俺は身を翻し、自分のロッカーへ向かった。
無事弁当を取り、さっき小鳥遊と話した場所まで戻ると、そこに予想外の人物がいて驚いた。
「あら、凛花が一緒にご飯を食べたいって言う相手は貴方なのね?」
そう、小野塚美咲希である。
「なんだ〜、2人とも知り合いだったんだ!ほら、悠眞もそこに立ってないで早く座りなよ!」
と、俺の椅子をポンポン叩いている。
小野塚と小鳥遊が向い合せで座り、それぞれの隣に俺が机をくっつけた形になっている。
俺は小鳥遊が奢ってくれた午後の紅茶を味わいながら飲み、弁当を食べる。
「それでさ〜、悠眞が親切に色々貸してくれたんだよ!ほんと助かりまくりで今日美咲希にも紹介しようって思ってたんだけど、必要なかったね」
あはは、と小鳥遊が言っていた。
「貴方って優しいのね。見直したわ」
「おい小野塚。お前俺のことをどういう風に思っているのか聞いてもいいか?」
そして、それからお互いあーだこーだ言いながら平和に時が過ぎ、小鳥遊が口を開く。
「2人って仲がいいんだね!なんか退屈しなさそうだよ」
小鳥遊……こいつ大悟よりめんどくさい奴かもしれない。
「そんなに仲は良くないんじゃないかしら?まだ会うの2回目だし」
「そうだな、2回目だからなんとも言えないけど、仲良くしていきたいって気はするな」
「へぇ、言ってくれるじゃない。私はあなたが思っている以上に面倒くさくて、難しい性格をしているわよ?そんな人と仲良く出来るかしら?」
「それが牽制のつもりなら効果ないぞ。なにせ俺もめんどくさくて難しい性格だからな」
望むところだ、と心の中で覚悟を決めた。
「あたしを忘れないでよぅ〜」
小鳥遊が何か言っていたが、気にしない。
今日は、大悟のバイトも休みで一緒に帰ることになった。
ちなみに、大悟は俺と同じ中学で、一緒に野球部で頑張った仲間でもある。
こいつとはほとんど喧嘩しないが、中学2年の時の12月に、1度だけ喧嘩をしたことがある。
しかし、その経験があったからお互い成長でき、今となっては良き理解者となっている。
「なあ、悠眞。お前野球部から試合に出てくれっていうLINEきたか?」
「ん、ああ、きたきた。お前どうする?」
現在、野球部の部員は17人で、時季外れのインフルエンザにかかってしまった部員が6人、怪我をしていて試合に出れないのが2人。
そして、試合当日に用事があってこれないのが1人。
なので、助っ人として、俺らが誘われてるわけだ。
試合を棄権しろ、などと思ったが、野球部曰く大事な試合なんだそうな。だから立ってるだけでいいから出てほしいとのこと。
「俺その日バイト入っててさ、ただでさえ今月休んでんのに、これ以上休むのはきついかなー……」
「おっけ、じゃ俺出てくるわ」
と言って、俺は携帯を取り出し、LINEを起動させる。
『野球部の助っ人として出てやる。感謝しろw』
とメッセージを打ち、俺らは家へと帰る。
そして試合当日。
野球部の練習にほぼ毎日参加した俺は、現役の頃の感覚を80%ほど、取り戻していた。
試合前のアップで、こっそりと相手ピッチャーのことを観察した俺は、戦慄を覚える。
速い……!!
恐らく130kmを超える速球と、100km前後のカーブ。
他にも変化球があるのだと思うのだが、よく使うのはこの2球種だと思う。
俺が任されたのは7番レフト。
あまりボールが飛んでこないとされる所なので、退屈だ。
初回、我がチームはストレートに力負けし、三者凡退。
相手チームはミートが上手く、ストレートも、変化球も当ててくるが、クリーンヒットはなく三者凡退。
2回、3、4番がどうにか塁に出て、5番がバント。6番が凡退。そして俺の番になる。
右バッターボックスに立ち、バットを構える。
相手ピッチャーの左足が地面につくと同時に俺も左足を地面に足をつける。
130kmのボールがミットに突き刺さるようにおさまる。
間近で見るとやはり速い……!
ランナーが出ているにも関わらず、ここまでスピードを落とさないとは、相当練習したのだろう。
だがこちらだって簡単にやられるつもりは無い。
先程よりバッターボックスの後ろ側に立ち、先程より力を抜いて構える。
2球目が投げられた。外側低めのストレート。
体から最も離れてる場所。
こんなにも打ちづらく、こんなに狙いやすい球は他にないだろう。
俺は脚を回し、連動して腰が回り、腕が出る。
そして、ボールとバットが当たる瞬間に、爆発的に力を加える。狙い通りにボールとバットが当たり、手に芯に当たった感覚が残り、ボールはライトの頭上を超える。ホームランとまでは行かなかったが、フェンス直撃。ツーベースヒットだ。
ボールが飛んだ瞬間にランナー2人は走り出していて、既にホームベースを踏んでいる。
俺は全力でセカンドベースへ向かう。二打点のヒットだ。ベンチから歓声が送られてくる。
そして、それが決勝点になり、俺らは2-1で勝利し、俺は野球部の勧誘を受けた。だが、部活に入る気はないからすみませんと断った。
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