新たな少女との出会い
やはり少し長いですが読んでもらえると光栄です。
この作品は2話目なので、1話目を読んでみてからこちらの方を読まれると話が入っていきやすいと思います。
小野塚と出会った日の夜。
俺が部屋でニヤニヤしてると。
「おにいきもい、まじきもい」
「何がきもいだ。毎晩部屋でゴソゴソしてるお前には言われたくない」
すると、妹は耳まで真っ赤に染めて
「べ、べべ別にそんなことしてないし!おにいだってトイレ長いじゃん!」
と言って逃げるようにして部屋を出ていった。
あいつは何がしたかったのだろう。
それから程なくして、俺の携帯が鳴り響いた。
LINEの着信音だ。
「うるせーなー誰だよ……」
誰に宛てたわけでもない独り言を呟き携帯を確認する。
そこに書かれていた名前に驚きのあまり悠眞は目を大きく見開く。
「小野塚美咲希……?」
今日知り合ったばかりの、しかも今日初めて喋った女の子からLINEが来るなんて思わなかった。どこで俺のアカウント追加したんだ?
書かれていた文は
『図書室の利用ありがとうございました。またのご利用お待ちしてますね?』
図書室利用の勧誘か!と全力でツッコミたかったが、抑える。
『図書室はまた利用します。本も返さなきゃだし笑』
SNSの怖いところは、相手の表情、声のトーンがわからないところだ。
実際、それによってトラブルになってるところもあると聞く。
だが、俺とてSNS歴は長いほうだ。基本的なモラルに加え、ネットでの会話技術も並のものではない。
さらに、長年培ってきた読解力もある。
なので、そういったトラブルに巻き込まれたことはほとんど無い。
こうやって送っておけば、相手は怒らないし、こっちが怒っているだとか、迷惑しているだとか思わないはずなので、俺は寝ることにした。
そして、朝早くに目を覚ました悠眞は、携帯を手に取り、メッセージが届いてないか確認する。
すると、小野塚美咲希からスタンプが送られてきたことに気づく。
どうやら向こうも怒ってはないようだ。
ネットでは、少しメッセージを送らないだけで怒る人や、誤解されることが多々あるので、疲れる。
便利な世の中でも楽しいことばかりじゃないな、と悠眞は思い、階段を下る。
悠眞の部屋は二階にある。
階段を上って、廊下が一直線に伸び、その右側に両親の部屋、左側の手前が妹、奥側が俺の部屋といった感じだ。
リビングまで行って、朝食を食す。
今日の朝食は、納豆ご飯だ。
納豆は、食べたあとネバネバするのであまり好んで食べはしない。
だが、嫌いってわけではないのでパンに飽きたり、他に食べるものがなくて冷蔵庫に入っていたら食べる、その程度だ。
案の定口元がネバネバしていたので、洗い流し、大悟との集合場所へ、時間ぴったりに着くよう家を出る。
俺が着いたときに、既に大悟はいた。
「……?なあ悠眞、お前なんかいい事あったか?」
こいつ、やけに鋭いな。
「いや?なぜ?」
内心の動揺を隠すようにして、俺は聞き返した。
「なんかお前今日機嫌いいなーって思ってさ。彼女でも出来たのかなーって」
よし、こいつを生かしておくのは危険だ。今ここで始末しよう。
「あ?彼女?出来るわけねーだろ俺16年間非リアだぞ」
「あー、ごめんそうだったな!お前非リアだもんな!」
ふーむ、殴ってやろう。
こいつ中学の時1度だけ彼女が出来たことがあるんだよなぁ……たったそれだけでこの劣等感とは、俺の人生思いやられるな。
俺はうるせーといいながら大悟を軽く殴り、そのまま自転車を進め始める。
後ろから待ってくれよーと聞こえた気がしたが、めんどくさいので無視だ。
学校の駐輪場に着いた俺は、小野塚が近くにいないか、探していた。
「なぁ、お前やっぱなんかあっただろ。挙動不審になってるぞ」
俺としたことが、挙動不審となっていたとはな。
気をつけなければ。
「ん?ああ。命を狙われてないか確認してるんだよ」
冗談めかしていってやると大悟は何かを悟ったようだ。
こいつ、昔から鋭いよな、と心の中で呟いた。
教室に入ると、俺の視線は自然と小野塚に向けられる。
俺らが入ってきた気配を感じたのか、それとも視線が気になったのか、俺にはよくわからなかったが、明らかに俺に向かって手を振ってくれている。
振ってくれているのに無視はひどいと思ったので、俺も手を振り返す。
うん、今日も1日やっていけそうだ。
6限目の総合では、席替えが行われることになった。
席替えの方法はくじ引き。クラスは全員で42人。
席は男女交互なので、男子の隣には女子が絶対に来る。
そして、くじを引く順番は、出席番号が一番前のやつと、後ろのやつのジャンケンによって決められた。
そして、行列の後ろの方で並んでいる。俺の出席番号に近いやつが負けたのだ。
くじの結果は、担任が声をかけたら各自確認をする形だ。
頼むから残っててくれ……!
淡い期待を寄せながら、俺の番となる。
ソーシャルゲームなどのガチャと呼ばれるシステムでは、最高レアの排出率は普通だし、ジャンケンの勝率も五分五分。運がいいとも言えず、悪いとも言えない俺は、果たして彼女の隣を引き当てることが出来るのだろうか……?
僅かな躊躇いはあったが、吹っ切れたように勢いよくくじを引く。
後は神のお告げを待つばかりだ。
そして、ジャンケンで負けたやつまで引き終わり、担任が陽気な声で見ていいぞーと言った。
俺の結果は、男子列を示す青色で書かれた9。
俺の隣は女子列を示す薄い赤色で書かれた9となる。
「じゃあ黒板に書いてある通りに席を動かしてくれ。」
この担任なかなかやりおる。
最後まで誰が隣か知らせないとはいい性格してるな。
俺が机を動かし終わった後、隣に来たのは背の低い栗色の髪をした少女。
背の割には、少し膨らんだ胸をしている。しかし、その胸は発育途中の小学生といった感じで、彼女に幼い印象を与える。
また、胸だけではなく、ピンク色の髪留めをしていて、幼い印象だけではなく可愛らしい印象も与えてくれる。
膝より上の、太ももが半分見えるほどのスカートで、柔らかそうな太ももをしている。
靴下はニーソックスで、わずかにくい込んだ太ももの肉がそう思わせる。
おまけに美少女だ。
「君があたしの隣?よろしくねっ!」
幼いイメージと噛み合った幼い声。
「ああ、そうだけど。俺は川崎悠眞。君は?」
「あたしは小鳥遊凛花だよ!君さ、いつも本読んでるよね。なんの本読んでるの?」
突然来るとは思ってない質問に対処しきれない俺は、半ば焦った状態で
「あー……俺がいつも読んでるのはライトノベルって言われる本だよ」
言葉を濁そうかと思ったが、遠回しに表現できる言葉が見当たらなかったので、バカ正直に答えた。
「え!?ラノベ好きなの?実はあたしも好きでさ〜。まだこのクラスにラノベ好きな人見つけられなくて困ってたんだ!君となら気が合いそうだね!よかったよ」
そういって、小鳥遊は笑いながら言ってくる。
こいつの笑顔は破壊力高いな……
そして、俺の新たな席での学校生活が幕を開ける。
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