彼女と初めて出会った日。
すみません長いです。
ついでに言うと初投稿です。
暇な方いらっしゃったら読んでください。
感想をくれるとありがたいです。
その日、俺は夢を見た。
それはとても楽しい夢。
しかしとても悲しい夢。
それがなんの夢かは覚えてない。
うっすらと視界がぼやけて、俺は目を覚ます。
「おにいー!起きろー!」
こんなに朝から騒がしいのは1人しか居ない。
「ん……まだ6時45分じゃないか、朝からうるさいぞ葉月……」
俺の妹、葉月だ。
「そんなんだから毎日お母さんに怒られるんじゃん。少しはちゃんとしたら?」
「うるせーなー……眠いからあと5分だけ寝かせて」
そして、再び眠りにつこうと目を閉じて――妹に布団を剥がされた。
「早く起きなよ!またお母さんに怒鳴られるよ?」
俺はもうお前に怒鳴られてるわ!とツッコミを入れたかったが、寝起きのため、やめた。
「……はいはいわかりました。着替えるから出てけ」
だるい体を起こし、ハンガーにかけてあった制服に手を伸ばす。そんな俺の様子を見てか、葉月は部屋を出た。
着替えを終えた俺は、その後パンにジャム、飲み物にホットココアという良くある朝ごはんを食し、学校へ向かう。
受験シーズンという地獄の日々を過ごし、桜の舞う季節、無事志望校へ入学することが出来た。
春から高校生!などと期待を込めていたものの、それから1ヶ月間高校生活を送ってみて、出てくる言葉と言えば、通学だるいの一言である。
そして、今日は入学最初のテストが終わり、改めて高校生活がスタートするような感じだ。
学校へ行く前、家から出てすぐの所で待ち合わせをしている。
俺は基本的に時間を守るので、相手を待つ側の人間だ。そして、待ち合わせ相手の松山大悟も相手を待つ側の人間である。
なので、2人とも集合時間ぴったりか、それよりも早く着く。
だが今日は、俺が集合場所へ着いても大悟の姿が見えなかった。
(今日はあいつ、遅いな……)
俺はそう思いつつ、携帯を取り出す。
そして、SNSアプリを起動させ、大悟のトークルームを開く。
『集合8時なんですけど?あなた3分ほど遅れてるんですけど?』
俺がメッセージを打って数秒経った時、大悟から返信があった。
『うるせー笑ごめん寝坊した笑笑あと、3分ぐらい待てよどこの大佐だよ笑』
ふむ、なるほど。こいつは全く反省していないな。3分あればカップラーメンが食えるんだよ、そのカップラーメンでどれほどの命を救うことが出来ると思ってやがるあの野郎。
とはいえ、俺も本気で怒ってるわけではない。
こんな事で怒っていたら人生疲れてしまうだろう。
俺がこんな下らないことを考えている間に、後ろから大悟が声をかけてくる。
よっぽど急いでいたのだろう、制服のボタンをかけ間違えている。
「急ぐのはいいけどよ、制服ぐらいちゃんと着ろよ幼稚園児でもそんな事しないぞ」
真顔でそう告げて、俺は自転車を走り出させる準備をする。
「いやお前それはなくね?早く来いってLINEしてきたの誰だよ」
と笑いながら急いでボタンをかけ直している。
だったら携帯を触らなきゃいいだろこいつ、と思いつつ、言葉には出さない。
それは、俺と大悟は、いわゆる携帯依存症というやつだからだ。
大悟はそれほどでもないが、俺のほうはひどい。
中学のときの修学旅行では、財布を携帯と間違えるほどだ。
少し遅れてても、時間には余裕を持ちたいという理由で、集合時間はちょっと早めに設定してある。
なので、10分ぐらい遅れてもなんの問題もなしに学校へ着く。
いつも通りのホームルームを終えて、授業へ入る。
そして、授業が終わり、休憩し、また始まり、休憩する。
いつも通り、なんの面白みもない日常。変わった特色がない学校。唯一楽しめる授業と言えば、体育ぐらいのものだろう。
運動神経がそこそこいい俺は、中学の時、野球部に所属していながらサッカー部の助っ人をしたことがある。
もちろん、ただの人数合わせではなく、一人の戦力として誘われたのだと思う。
……そうだと信じたい。
そして、帰りのホームルームが終わり、荷物をまとめ、帰る準備をする。
俺は部活に入る気は無い。
なぜなら、努力という言葉が大っ嫌いだからだ。
そもそも、省エネ主義の俺にとって、エネルギーを消費するという行為自体、好きではないのだ。
なので、中学で部活は最後にして、高校では、平穏な日々を送ろうと思っていた。
だが、平穏な日々がこんなにつまらないものだとは思わなかった。
必死に部活動を続けている時は、帰宅部はなんて楽なんだろうと思っていたりもしたが、まさかここまでだとは思わなかった。
……すみません帰宅部の皆さん今度からは馬鹿にしたりしません。
大悟は同じ帰宅部だが、ほとんど毎日バイトが入っているので放課後は一緒に帰れないことが多い。
俺はといえば、省エネ主義なのでもちろんバイトはしない。
そして今日は妹も両親も家におらず、暇すぎる。
どうしようかと考えている時、図書室は放課後も空いている事をふと思い出す。
扉が閉まっていたので、今日は閉まっているのかと思い、ダメもとで扉を開けてみる。
……まぁ、放課後空いてますって図書委員がこの前言ってたから空いてない方が問題なのだが。
何気、俺が図書室に入るのは今日が初めてだ。
1歩足を踏み入れると、なんとも言えない古びた本の臭いが漂っていた。
この図書室は扉を開けると、真っ先に目に映るのは机だ。その奥に本棚がある。そこには『古典』や『科学』と書かれている。多分頭のいいやつが読む本なのだろう。
その右にはカウンターがあり、恐らくあそこで本を借りたり、返却ができるのだろう。
そして、俺はこの部屋の隅に見慣れた文庫の本があることに気づいた。
それを確認しようと思い、そちらへ向かう。
その途中で、俺は人がいることに気づいた。
そして、その人も俺の存在に気づいたらしく、視線を読んでいた本からこちらに移してくる。
名前は確か……小野塚美咲希。俺のクラスの図書委員。
俺の目に映った彼女は少し控えめな印象を受けた。それは恐らく、先日行われた自己紹介でも、それほど印象に残らなかったからだろうか。それでも、俺が覚えている理由はただ一つ。こいつが美少女だからである。
髪は腰まであるだろう長さで、艶やかな黒髪。そしてポニーテールである。
彼女はこっちを見ていたので自然と目が合った。
その目は、茶色くて、見ていて吸い込まれそうになるほど美しい。
「あら、あなた確か同じクラスの川崎悠眞君よね?」
その声は透き通っていて、図書室内を包むようにして埋め尽くし、やがて消えていく。先程は控えめな印象を受けたが、よく通る声で聞いていて心地いい。
「あ、ああ。うん。そうだけど、君は確か小野塚美咲希だよね?どうして俺の名前を知ってる?」
こいつは美少女だ。そして俺は間違いなく動揺している。平然を装いながら俺が聞き返したら、彼女は少し考えるようにして
「……それはまあ、同じクラスなんだし名前ぐらいは聞くわよ。あなただってそうでしょ?」
いやお前ほどの美少女が目立たないわけねーだろと言いたかったが、ほとんど初対面の人に向かってそんなことを言うのはどうかと思うので、どうにか踏みとどまった。
「まあ、名前ぐらいはね。1ヶ月ほどだったからやっとクラスのみんなの顔と名前が一致してきたかな?」
「そうよね、この学校人数多いから1クラス皆の名前を覚えるのに1ヶ月はかかっちゃうわ」
と言いながら、彼女は俺に笑いかける。
柔和に笑った彼女の顔は天使そのものだ。
「だよね。改めて、俺は川崎悠眞。まあ適当に呼んでくれて構わないさ」
「じゃあ悠眞って呼ぶわね。私のことは美咲希でいいわ。これからよろしくね。」
――――この時、俺の中で渦巻いていた感情に、俺は気づくことがなかった。
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