3・それでも終わる冬~そして巡る四季
さて、この国の王様はいつまでも春が来ない為に民が困難にあえいでいる事に心を痛めておりました。
学者や占い師達は何らかの理由で四季の塔から冬の女王が出てこなくなり、春の女王が塔に入れなくなった為に冬が終わらなくなったのではないかと王様に進言しました。
そこで王様は国中に、塔から冬の魔女を出して春の女王と入れ替える手段を考える様に御触れを出しました。
しかし、只の人間たちにはそもそも塔がどこにあるかも判らず、まして四季の女王になどあった事もないのでどうしたらいいのか解決の糸口もつかめずに、ただ頭をかかえるばかりでした。
ですが、そんなある日ついに終わらない冬を解決できる人物がお城に現れました。
それは他でも無い、春の女王様その人でした。
春の女王は自分たちの不始末で冬が終わらなくなった事を王様に詫び、必ず春を世界にもたらして四季を巡らせる事を約束しました。
王様はどうやって冬の女王を塔から出すのか、気になって春の女王に尋ねましたが女王は悲しげに首を振って
「実はもう冬は終わっている。 後は片づけを残してるだけ」
それだけ呟くと女王は王様に一礼して、お城から魔法で一瞬のうちに四季の塔まで移動しました。
荒れ狂った吹雪はすっかり止み、雪と氷に閉ざされた門は館から連れてきた召使たちがあらかた取り去りました。 春の女王は魔法で門を開けると一人で中に入りました。
そして掘り返された庭園を横切って塔の中に入りました。 塔の中には、冬の女王によって塔の中に入った者は全て殺す様に命令された召使い達が待ち構えているはずでしたが、動くものは何もありませんでした。
それもそのはず、塔の中にあるものは何もかも凍りついていたのです。
家具も、暖炉も、見えない召使い達も、おしゃべりなネズミも、そして冬の女王自身も……
春の女王は、女王の間で凍りついた冬の女王を見つけて深く嘆きました。 おそらくネズミか何かが冬の女王に告げ口をして、それで自分の運命を悟った彼女は自分の雪や吹雪を生み出す能力で塔を覆ったであろう事は、春の女王には察しがつきました。
「かわいそうに、それで却って自分を苦しめる死に方をしてしまった……」
そう、他の女王達はこうした時の為に冬の女王には冷気や雪を生み出す方法を教えても、それを消したり元に戻す方法は教えてなかったのでした。
それで可哀そうな冬の女王は、自分の強力な冷気で凍りついて死んでしまったのでした。
「許しておくれ。 でもこれが“本当の”冬の女王の務めなのさ」
実は四季の女王は本当は春・夏・秋だけがずっと同じ女王が務めていましたが、ネズミが言った通り冬の女王だけが毎年違う人に入れ替わっていました。
冬の天気を管理した後、老いで衰えた春の芽吹きの力を補うために犠牲として殺されて埋められ、その命の力で大地に芽吹きに必要な活力を与える……それが老いで春が来ない為に最初の冬の女王を犠牲にして以来の代々の冬の女王の務めとなったのです。
ですが、“生贄になっておくれ”と言われて素直に応じる娘がそうそう居る訳がありません。 そこで本来ならその年の冬に死ぬ定めだった娘を見つけ出し、勤めの最後の部分を隠して女王になってもらうしか方法はありませんでした。
せめて死ぬまでは女王の様な満たされた暮らしを送って貰う事が、他の女王達によるせめてもの代償のつもりでした。
ですが、やっぱり罪も無い娘を騙していることには変わりはありません。 冬の女王を犠牲にし続けて、どうにか季節は廻っていますが、良心の呵責からか他の女王もどんどんと老けこんで行きました。
いつかは自分たちの跡目も必要になるでしょう。 ですが、世界の為に罪の無い娘を騙して犠牲にするこの因果な仕事を引き継いでくれる娘はいるのでしょうか?
もしも跡目が見つからずに自分達も死んでしまったら……四季を失った世界はどうなるのでしょうか?
ですが、今は勤めを果たすのが先です。 春の女王は召使い達に庭園に今年の冬の女王を埋める穴を掘る様に命じると塔から降りて、冬の女王が投げ捨てたティアラを一緒に埋めてあげる為に庭園に探しにむかいました。
冬の厳しい時期を乗り切った後、冬の悪魔だか魔女だかの人形を埋めて春の到来を祈る祭りの話を昔何かで読んで、それが話の種になっています。
今年は厳しい寒波が続きます。 春が待ち遠しいですね……




