01おしゃれなあの子
「ねぇ。遅いんだけど…」
ココはとある街のとあるお店。
少年は買い物をしている少女に声を掛けた。
「遅いって言ったって、欲しいものがあり過ぎるのが悪い。
例えば貴方なら欲しい武器が4つも5つも売っていて、その内の1つしか買えないのなら迷うんじゃない?」
「…」
正論を言ったと言わんばかりに誇らしげに笑う少女の問いかけに、少年は何も言えなかった。
それはそうだ。自分だって、旅をするにあたって欲しいものは幾度とある。
その中のたった1つしか買ってはいけない…となると考える時間は惜しまないだろう。
「だが、何が何でも時間を掛けすぎじゃないか?もぅ、ずっとココで服を見ているじゃないか。」
「なら貴方が選んでよ。リュート」
リュートと呼ばれた少年はゆっくりと立ち上がり少女に近づいて行った。
少女が手に持って居たのは、ピンクのうさ耳の着いたポンチョらしきもの。ワンピース見たいなコート。白の大きいリボンの着いたカーディガン。
所謂、ゴスロリと呼ばれる類の服だった。
「ルリ…1つ聞いてもいいか?」
「なに?」
「お前は旅を何だと思ってる?俺達は国を滅ぼした奴を倒すために旅をしている…」
少女…ルリは暫く考えた様子を見せて再び口を開いた。
「確かに彼を倒すために旅をしている。けど、私は彼には適わないし…そもそも、私自身が戦闘なんて向いてない。
心理戦となれば別だけど。だから、折角だし旅の最中に見つけた服を着たいじゃない?」
リュートは予想もしていなかった言葉に目を見開いた。
けれど、直ぐに呆れた様にため息つけばこれっと指差しうさ耳の服を選んだ。
「ありがとう」
元よりスラッとしている彼女は大きなアクセサリーにより、より一層細く見えた。
大きな裾口から伸びる色白い足はほんの少しの事で折れてしまうんじゃないか…と言うほど細く見えるのだった。
顔も整って居て目も2重でそのままでも充分美人だと言うのにアクセサリーの配置により、更に整って見えるのだ。
待ちゆく人は彼女を二度見しては、男は顔を赤くし女は憧れの目線をぶつけるのだった。
「お待たせ…」
ルリは先程買った服を着て戻って来た。
その服は彼女に何とも似合っており、少し動くとチロチロと動くうさ耳にリュートは息を呑んだ。
―女は服1つでココまで違って見えるのか…
彼女が服を着替えては毎回の様に心で呟いた。
ルリは決して隠そうとはしない。
肌も顔も全て…
なのに、服1枚で雰囲気が変わってしまうのだ。
「さぁ、リュート。行こう?お腹が空いたの」
ルリは外へ出て真っ直ぐに歩いた。
そして後ろを振り向きリュートを見て…
「リュート、道が分からないわ」