表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

1 前世と現世

 大きな国があった。広大な国土と多数の民族を抱えるその国はしかし、専制政治による権力の腐敗、少数者の富の独占による経済格差、遅々として進まぬ産業構造の転換と先進技術の導入、度重なる戦争とそれに伴う重税による国民の疲弊、そして何度負け戦を経験しても旧態依然として存在する軍隊。数多の問題を抱え体制として、もはや限界を迎えようとしていた。行き着く先は亡国か革命か。いずれにしても滅びの道であった。これは彼女達がそんな祖国を滅びの運命から救おうと奮闘する物語である。




 彼女には前世の記憶とでもいうべきものがあった。しかし彼女の今いる世界では、前世の存在は証明されていないし、そんなものは存在しないというのが一般的な認識であった。前世の存在を信じているのは、オカルト趣味者か一部の熱心な宗教家とその信者くらいである。そして彼女はそのいずれでもなかった。

 ならばこの記憶は何なのだろうか。自身の妄想が作り上げた想像の産物? いや、違う。それは確実にあり得ない。彼女はそう断言できた。何故ならば、前世の記憶の中にある知識――国家、歴史、地理、人物、組織、制度、技術、娯楽等々――が一個人の妄想にしては膨大すぎるし、この世界のこの時代の人間(及び龍族)では確実に思い付かないであろうものも含まれているからである。

 だとすればこれは前世の記憶なのだろう。ベルカルーシ帝国皇女、アンナ・ゲルトルート・フォン・ウント・ツー・キルヒバッハは自身でそう結論付けて納得することにした。




 アンナの前世は、日本のごく普通の女子高生であった。ちなみに二一世紀生まれである。好きな教科は社会科。歴史や政治、軍事の知識を漁るのが趣味であった。死んだ時の状況は全く憶えていないが、大学生や社会人になった記憶がないので、おそらく高校生の時に一度人生が終わっているのだろうと推測している。

 そして生まれ変わって一国のお姫様となった。庶民だったころの記憶があったがゆえに当初は上流階級の社会に戸惑ったが、慣れてみたら思いのほか悪いものではなく、むしろ優雅な暮らしを堪能していた。

 そんな生活に疑問を覚えたのは一三歳の時であった。父であるベルカルーシ帝国皇帝オットー四世の地方視察に同行した際だった。視察先の役所を訪れ、その帰りの馬車に乗っていたら、みすぼらしい格好をした数人の農民に馬車を止められた。護衛たちがアンナ達の乗った馬車の安全を確保し、農民たちを追い払おうとしたが、彼らは中々引き下がらず、結果護衛たちに捕らえられた。

 後で知ったことだが、役人の不正と横暴をどうにかしてもらおうとして、農民たちは皇帝に直訴したらしい。なお捕らえられた後は、事情を知ったオットー四世が無罪放免とまではいかないが、特別の温情を以て軽い処罰で済ませたそうだ。そして訴えられた役人は取り調べの結果、不正の証拠が出るわ出るわで、厳重な処罰を受けたとのことである。

 この一件をきっかけにアンナは、国内外の政治、経済、軍事情勢といったものに積極的に目を向けるようになった。今日と同じ明日が永遠に続くわけではないことを身を以て実感した今、それを守るためには現在進行形で動いている世界というものを知らなければいけないと思ったからだ。

 そして彼女はやがて一つの結論に達した。

 この国がこのまま変わらずに進めばいずれ革命が起き、帝室は滅びる。それもおそらくは自分が生きているうちに。




 直訴事件から二年後。アンナが一五歳の時であった。

 皇帝と皇妃が馬車で移動中に、過激な反政府主義者の爆弾テロに遭い死亡した。まるでアンナの考えが的中したかのようだった。

 オットー四世の後を継ぎ皇帝位に就いたのは、彼の弟のヨハン二世だった。つまりはアンナの叔父である。そして新皇帝はひどく守旧的な人物であり、改革志向の先帝を敵視していた。


俺TUEEE系NAISEIものを目指したいと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ