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午前二時に会いましょう  作者: はしもと
第三章 寺田かりんの話
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寺田かりんの話⑥ 深夜徘徊

 四月の気温は三寒四温。

 暖かくなったと思ったら強烈な寒気になったりする。


 相変わらず偏った食事。昼夜逆転の生活。食料を求めて私は家を出る。



 午前二時。



 ただこの時間になると営業している店はコンビニくらいだ。

 こんな格好でも私には知り合いがいないので関係がない。ジャージにつっかけ姿で夜道を歩く。そういえばライターが切れかけだったっけ。ついでに買わないと煙草が吸えない。




***




 コンビニに入る。新人のアルバイトだろうか。見覚えのない店員が調節出来ていない声量で「いらっっしゃいませ」をくれる。そういう元気は早朝まで残しておくものだと思う。


 冷凍食品も買いたいので、まず先に一服するためにコーヒーのみ購入。朝専用と謳い文句のものだ。コーヒーは口に馴染んでいるものが一番美味しく感じるというのが私の持論だった。

 店の外にある僅かな段差に腰掛ける。先客がいたので私は三人分くらい距離を置く。手に馴染まない熱さのコーヒーのプルを弾いた。そして私はライターを購入することを忘れていたのに気付いたのだった。




 午前二時十五分。

 安物のライターを何度も鳴らしたが役目を果たす気配はない。私は小さく溜息を吐いた。缶コーヒーをあけてしまったため、これを置いて店に戻ってライターを購入することが億劫だった。今日はもう喫煙を諦めようかな、と考えてコーヒーを口元に運んだときだった。隣の男から声がかかる。


「よかったらオレの貸そうか?」

 私は突然の提案に少し固まる。二秒くらいのラグを起こし、「すみません」と作り笑いと共に煙草を一本取り出した。

 この距離のままだと失礼かと思ったので、私は一人分の距離まで近づく。間を埋めるためだけの適当な会話を交わす。



「じゃ、そろそろ行くわ」

 男は短くなった煙草を灰皿に押し込み、そのまま缶コーヒーをゴミ箱に捨てた。私は笑顔で会釈した。



 これが岡部清十郎との出会いだった。



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