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春が訪れるたび君を想う
オレが彼女を殺したようなものだ。
あの日交わした約束は、本来なら流される程度のものだった。
もっと早くに気づければ彼女は殺されずに済んだのだろうか。
それに気づくためのヒントは彼女の言葉の中にたくさん散りばめられていたのに、馬鹿なオレは何一つ拾うことが出来なかった。
なにも気づかないまま
「じゃあ、今度またどっか行こう」
と、約束を交わした。
彼女は薄々気付いていた。
だから笑顔であんなことを言ったのだ。
叶わなかった願いは、ずっと願いのまま彼女の心に残り続けた。
そしてそれは、一つの小さな奇跡を起こした。
世界中の殆どの人が気付かないほど小さなもので、これを奇跡と呼ぶには甘すぎるほど残酷な出来事。
春が訪れるたびに、オレは彼女のことを思い出す。
ただ笑って生きていたいと望んだ彼女のことを。