復讐の果ての復讐
今日、黒川真由美はとある人物を自宅に招きいれていた。
「あの女をはめたいの」
「……」
「あの女を一緒にはめてくれたら何でもあげるわよ」
「……何でも?」
「ええ、私をあげても良いわ」
「分かった」
「ほんと!じゃ、お願いね、期待してるわ」
その日は静まり返った夜だった。
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俺は今日墓地に来ている。死んだ姉さんの墓参りだ。あの日と同じように土砂降りの雨。
「姉さん……」
姉さんが死んでから4年経っていた。もう姉さんのいない生活にも慣れてしまった。
『ブーブーブーブー……』
ポケットに入れていた携帯が振動する。
「はい、岸田です」
俺は岸田昇、26歳の少し売れている小説家だ。今、ちょうど古い友人から電話がかかってきた。
「もしもし、あたし。前田だけど」
彼女は前田春乃、高校の同級生だ。
「急にどうした、春乃?」
「実は、……私のカレが……」
ここで、カレが春乃と付き合っている中野聡だということは容易に分かった。
「お願い、昇。家に来て」
昔、好きだった相手にそういわれると断れない。
「分かった。今すぐ行く」
「ありがとう、待ってるわ」
電話を切ると俺はすぐにタクシーを拾った。墓地から春乃の家まではさほど遠くはない。だが、着いた時にはパトカーが止まっており、全く近づける状態ではなかった。あたりを見回しても春乃はどこにもいない。その代わりに見知った顔が見えた。俺はそいつの顔をじーっと見つめる。
…………………
あ、向こうも気づいたようだ。周りにいた先輩であろう人物と少し話してからこちらに近づいてきた。すぐ横に来たそいつは
「ちょっと、こっち来い」
と言って現場から離れていく。俺はその後ろをついて歩いた。着いた先はちょっと広い公園。
「昇、どうしてこんなところに……」
こいつは木納正敏、高校の同級生で今は刑事として頑張っている。
「いや、春乃から電話がかかってきたんだ、彼氏が殺されたから来てくれって……」
「春乃?」
完全に忘れていたが春乃と正敏はそんなに仲良くなかった。というより、かかわりがなかったのだ。春乃も正敏も互いのことは俺と仲の良かった人という印象しかないんじゃないかと思う。
「ほら、高校時代いただろ、前田ってやつ」
「ああ、いたいた。お前とよく喋っていた子だよな」
「お前、見てないか?」
「さあ、ぜんぜ……、ああああ」
急に正敏は大声を出す。
「うるさい、どうした、急に?」
「そうだ、確か第一発見者が前田っていう人だったような……」
「だとしたら今は事情徴収を受けている頃か?」
その辺をよく知っているプロに一応聞いてみる。
「ああ、そうだろうな。終わるまではもう少しかかるだろう。だから……」
嫌な予感……。
「その推理小説家さんの知恵を拝借させていただけませんかね?」
実は、正敏はたまに俺の知恵を借りに来るのだ。もちろん、周りの人は誰もそのことを知らない。ただ1人を除いては……。
「お、おい、木納」
「う、うわ。近藤さん」
近藤勇也、正敏の上司である。
「お前、こんなところで何をしているんだ!ん……、おお岸田君じゃないか、久しぶり」
「あ、お久しぶりです」
「木納、さてはお前また岸田君から知恵を授かろうとしていたな!」
「え、近藤先輩、あ、あの、ちが……」
「いいか、岸田君から知恵を授かるのはこの私だ。お前にはまだ早い、岸田君はやらん!」
この上司にしてこの部下なのだとすぐにわかる2人だ。なんか、結局俺の推理はすべて近藤さんの手柄になっているらしい。
「分かりました。考えますから、落ち着いてください」
「さすがは岸田君だ、……そうだ、木納、お前トイレ長すぎるんだよ、もうみんなにずる休みだってばれているぞ」
なるほど、正敏、トイレに行くと言って職場を離れたのか。
「え、じゃあ、昇、俺もう戻るわ」
そういうと、勢いよく走って行った。
「じゃあ、俺も戻るよ」
「あ、待ってください…………」
近藤さんから最後に春乃が事情聴取を受けている場所を聞いたので俺はそこへ向かうことにした。
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そして、某警察署に到着した。無論、春乃から何があったのか詳しく聞くためである。
着いてすぐぐらいに事情徴収は終わった。
「昇……」
彼女は今にも泣きだしそうな表情を浮かべていた。無理もない。恋人を殺された挙句、警察に事細かに色々話していたのだろうから。
「大丈夫か?春乃」
「……えぇ、大丈夫よ」
「そうか……」
そんなに悲しい顔をされると何と言えばいいか分からない……。
「ねえ昇、お願い!犯人を捕まえて。私はあなたしか頼む人がいないの」
答えなんてもちろん決まっている。
「ああ、犯人は俺が捕まえる……だから大丈夫だ」
「……ありがとう」
そう言って少し無音の時間が流れた。
…………………
「ごめんだけど、遺体を見つけた時の状況とか教えて」
「ええ、もちろん。仕事の帰りに同僚と飲んで帰ったの。そうしたら、思いのほか帰るのが遅くなっちゃって、それで急いで帰ってみたら玄関の前に聡が横たわっていて、すぐに警察に電話したの。で、そのすぐ後に昇に電話を……。確か、遺体を見たのは午前5時とかだったと思う。」
「なるほど」
いくつか疑問を持ったのでそれを聞いてみることにした。
「なあ、聞きたいことがいくつかあるんだけど……」
「いいわよ、何でも聞いて」
「もし、飲みに行っていなければどっちが早く帰るの?」
「だいだい、私がいつもは先ね、そのすぐ後に聡が帰ってくるのがいつものパターン」
「へー、じゃあ、何か変わったことはなかった?」
「うーん、特に……、いや、あった。ツボよツボ」
「つぼ?」
「うん、ツボが袋に入っておかれていたわ。あの人そういうの集めるの好きだったからどこかで買ってきたのかも」
「なるほどね、じゃあ誰かに恨まれたりとかは?」
「ええ、あるわ」
「だ、だれ?」
「真由美よ、真由美」
「真由美……ってまさか黒川真由美?」
「ええ、そうよ。実は、真由美と聡はもともと付き合っていたの。でも、聡は彼女を振った。そして、そのすぐ後に私と付き合いだした。だから、私のことも聡のことも恨んでいてもおかしくないわ」
「……」
春乃から聞かされた話を聞いて絶句した。こうも、都合のいい本星が見つかるなんて思っても見なかったからだ。でも、確かにこれなら真由美が怪しいと思うだろう、誰でも。
「分かった、ありがとう、俺はこれから他の所に行くよ」
「そう、私も帰るわ。それじゃあ、お願いね、昇。私も力になるから」
「ありがとう、じゃあ行くよ」
「ええ、いってらっしゃい」
俺はポケットから携帯を取り出した。
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気付けばもうお昼だ。俺はとある人物を昼食をおごるからとファミレスに呼び出した。とか、言ってるとその人物が到着した。
「正敏、こっちこっち」
そう木納正敏である。
「お前が呼び出すなんて珍しいな」
「ああ、ちょっと話があって……」
「今回の事件のことか」
そう言った正敏の顔が妙に暗くなった気がした。
それは気のせいでもなかったことを次の正敏の言葉で知ることになる。
「実はな……前田が第一容疑者になってるんだ」
「……え?」
いや、確かに第一発見者を疑うのはもちろんわかるのだが……。
「で、でも同僚と飲んでいたはずだ」
「ああ、確かに本人も言っていた。それに、その同僚からも裏が取れた。ただ、……間に合うんだ、走れば。死亡推定時刻までに」
「え?」
俺はあっけにとられた。だって、友人と飲んでいたんだから容疑者から外れると思ってたのだ。それが、まさか間に合うなんて……。
「どうやら、春乃の家から飲んでいた場所まで歩いて10~20分ぐらいで着くんだ。だから、歩いて通勤しているようで……。しかも、帰り道も住宅街を歩いて帰ったようだから防犯カメラに映ってるかどうか……」
俺は1つ疑問を持った。
「ところで、死亡推定時刻は?」
「どうやら、早朝4~5時の間のようだ。中野の方も会社の人間と飲んでいたらしく帰宅直後に玄関で殺害されたのだろう。因みに凶器は包丁。どこででも、手に入れられるようなもので大した証拠にはならないだろう。指紋も出なかったし」
もうこれは、春乃はとんだ悪運の持ち主なのだと理解せざるを得なかった。
「あとな……」
正敏が更に話を続ける。
「知ってるか、ツボの事」
ツボといわれて思い出すツボは春乃が言っていたやつだ。
「現場にあったって言う?」
「ああ、実はそこから春乃の指紋が検出されたんだ」
「……え?じゃあ春乃はあのツボに触ったんじゃないのか?」
「いや、実は本人は触ってないって言うんだ」
「……は?どういうことだよ?」
「俺も知らないよ、まあだから第一容疑者になってるって事だ」
いやまあ、そうなると確かに第一容疑者になるのは当たり前だろうが……。
「てか、もうこんな時間!もう戻るわ。じゃあ、勘定は任せた」
「あ、ああ……」
正敏は急いで出ていった。
今回、もらえた情報は春乃にはあまりに不利すぎるものばかりだった。
だからこそ、俺は動かなければならなかった。
春乃の話を思い出す。春乃が怪しんでいたのは真由美だった。
俺は真由美の家に向かった。
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真由美の家は思いのほか近かった。
俺は呼び鈴を鳴らした。
「…はい、黒川ですが」
「ああ、すいません。岸田です」
「……今開けます」
完全に怪しまれている。いや、そりゃ怪しまれるのは当然だろうけど。
すると、後ろから
「あれ、昇」
「え…」
後ろを振り向くとそこには正敏と近藤さんがいた。
「正敏、お前なんでこんなところにいるんだよ」
「それはこっちの台詞だよ」
「俺は、春乃が怪しいって言ってたから」
「何だ、俺達と一緒か」
『ガチャ』
「どうぞ、お入りください」
「あ、お邪魔します」
中はとても綺麗で毎日掃除しているかのようだった。
「で、今日は何ですか?」
もう、ここは警察に任せることにした。
「すいません、警察ですが中野聡さんが殺されたことはご存知ですか?」
「いえ、知りませんでした。私にはもう関係ない人ですし」
「では、まだ中野さんに好意を持っているなんてことは?」
「ありません。私にはもう別の人がいますから」
ん……、別の人?
「別の人がいるってことですか?」
「ええ、だからそう言ってます。もう、新しい彼氏がいますから」
「あ、あの、その人の名前や住所を教えてほしいんですけど……」
「え、ええいいですよ。名前は巻結人。家には行ったことがないので正確には分かりませんが出身は○○県で仕事の関係でこっちに来ているみたいです」
ま、まだだ。まだわからない。他人と付き合っていてもまだ春乃が中野さんを奪ったことを根に持っているはずだ。俺はすぐに聞いた。
「それで今日の午前4~5時の間は何をしていましたか?」
「ううん、………確かその頃は彼といましたね。近くのホテルに」
ホテルってまさか……な?
何て思っていると正敏が聞いてしまった。
「ホテルというのはどこですか?」
「この近くの××というホテルです」
「この近くなのに何故わざわざホテルに泊まったのですか?」
「調べればわかります。私の口からはあまり言いたくありません」
そりゃあ、そうだろう。俺だって言いにくい。しいていえば、特殊なホテルというべきか……。どうやら、近藤さんもそのことが分かっているらしくかなり気まずそうにしている。しかし、それにも全く気付かないのが木納正敏という男である。
「何故、言えないのですか?言えばウソがばれるからですか?」
「おい、木納もうやめろ」
近藤さんがさすがに止めに入る。
「な、なんで止めるんですか?近藤さん」
「そ、そのあれだ。こ、子どもを産むためのホテルだ」
その瞬間、正敏と近藤さんの顔が一気に赤くなった。
最初にこの気まずい雰囲気を打破したのは真由美だった。
「コホン……、その……私これから少し外出するので……」
「あ、申し訳ありません。私たちも帰りますので」
代表して近藤さんが言った。
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その後、正敏達とは別れて、俺は春乃のもとに向かった。気付けばもう空が赤くなっていた。朝から捜査しているが春乃の状況が危なくなってきている。
「入って」
「ああ」
さすがに殺害現場で寝るのはまずいのでホテルを取っていた。……無論、普通のホテルである。
「昇、どう?」
「う、うん……まあ」
言葉を濁すことしかできなかった。
「何か来た意味があったんじゃないの?」
そうだった。俺は春乃に他にも聞きたいことがあってここに来たんだ。
「じゃあ、聞くぞ。ツボのことなんだが。どうやら春乃の指紋がツボについていたらしい。本当にあのツボに触ってないんだな」
「ええ、触ってないわ。絶対に」
「となると答えは1つ。もしかしたら春乃は別の場所であのツボを触ったのかもしれない。何か心当たりはないか?」
「………………ごめんなさい」
「あ、いや、謝らなくていいよ」
『ピンポーン』
「あ、誰か来たわ」
「すいません。警察です。もう少しお話を聞きた……」
ん?この声は……
「おい、正敏」
「昇、またいるのかよ」
「おお、昇君……すまなかったな、正敏もう少し待つぞ」
「え、なんでですか、近藤さん?」
「ほら、2人の時間を楽しんでいるのだから……」
「いやいや、違いますよ。何を言ってるんですか、近藤さん!」
「そ、そうですよ。警察に行きますから」
何だかんだで春乃は近藤さんと行った。正敏は俺が呼び止めた。
「それで、その後は何か分かったか?」
「ああ、いろいろと。まず、黒川の言っていた通り彼氏がいた。名前は巻結人。さらに、死亡推定時刻のアリバイもあった。ホテルの玄関に監視カメラがありそこに確かに2人とも写っていた。午前3時45分ごろに入って午前4時45分ごろに出ていった。まあ、部屋の中にはカメラはないが……、裏口は閉まっていたようだ。鍵もちゃんといつもの場所に有って誰かが撮った形跡もないらしい」
ここまで聞いてると春乃の方が完全に不利だ。やっぱり運は悪いな。
「ただ、そのホテルのオーナーが巻結人だった。よく店に顔を出していたらしい。部屋も巻が指定した部屋だったらしい」
「それはいいことを聞いたな」
「だろ。黒川のアリバイはかなりもろい。彼がオーナーなら裏口のスペアキーを持っていてもおかしくないだろう」
「それはかなりいい情報だ」
「ただ、だからと言って前田はまだ第一容疑者だからな」
「ああ、でも俺は真犯人を見つける。だから、その時は力を貸してくれ」
「もちろんだ」
「じゃあ、とりあえずやってほしいことがあるんだ」
「何だ?」
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「じゃあ、頼んだぞ、正敏」
「OK、任せろ」
そういうと俺たちは別々に分かれた。
一般人の俺には正直もうどうすることもできない。
後は警察に任せよう。
その1週間後、俺は正敏と会った。
「よう、昇。さすがだな。お前の言う通り犯人は黒川真由美だったよ」
そう、俺は黒川真由美を自白させる方法を教えていた。
まず、ホテルでは巻の協力がないとスペアキーは作れないので巻も共犯と考え、まず巻を自白させるように指示した。その後、巻が事実を述べたことを真由美に伝える。それでも、真由美が認めなかったなら現場の壺の内側に真由美の指紋があるかもしれないからそれを調べろ。もし、指紋が出れば言い逃れはできないだろう、と。
「でも、昇。どうして壺の内側に真由美の指紋があるってわかったんだ?」
「ああ。それは春乃が言ってたんだ。よく考えたらあのツボは真由美の家にあってそれに1度だけ触った。その時、ツボの中に何か入っていたからそれを真由美が取ったって。それ以来、壺に指紋をつけてないからむしろ指紋も拭き取ってないんじゃないかと思ってな。だって、もし拭いて春乃の指紋が消えれば最悪だろ」
「その情報、初めて聞いたぞ」
「最後に思い出したみたいだからな。ああ、そういえば真由美はどういう感じだ?」
「ああ、…それなんだが……実は亡くなったよ。警察から逃げようとして……。完全な事故死だったようだ」
「そうか……」
「因みに、巻は真由美のストーカーで付き合う代わりにこの事件に協力したようだ」
「そうか。この事件もやっと終わったか」
「ああ。正直、最悪な形でな」
「いや、もしかしたら真由美は死ぬつもりだったのかもしれないしな」
「全ては闇の中……か。じゃあな、昇。また、知恵を貸してくれ」
「気が向いたらな」
これで、この事件は終わりを迎えた。
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それから1ヶ月後、俺は春乃の家に来ていた。
「さすがね、昇」
「そうでもないよ」
「いえ、あなたのおかげよ。ただ1つ、何で真由美の家であの壺を見たのを思い出したことを言わなかったんだって怒られたのはあなたのせいだけど」
「それくらい許してくれよな。なかなか、しんどかったんだから」
「はいはい。許すわよ。それくらい。この生活もあなたのおかげですもんね」
「でも1つだけ聞きたいことがあるんだ」
「何?」
「どうして、聡さんを殺したんだ?」
「そうねえ……。あの人が離婚してくれなかったからかな。全然、家にも帰らないし不満もあったから。でも、私が殺すと万が一にもばれたときに捕まるから真由美が私たちを恨んでいるのを利用したってわけ。あなたを使ってね」
「本当にしんどかったよ。春乃が犯人になるように仕立てあげ、かつそれに穴があることを真由美にばれないようにしながら計画を進めていくのは」
「もしかして、真由美が死んだのも?」
「ああ。俺から計画を聞いたなんて言われるわけにはいかないからな。まあ、裏で仕込んで窓から飛び降りても死なないようにするから警察に捕まりそうになったら飛び降りろって言えば簡単に承諾してくれたけど」
「本当にぬかりないわね」
「これでも、推理小説家だから。でも、こんな仕事はもう受けたくないけど」
「じゃあ、私も1つだけ聞いてもいいかしら」
「何?」
そういうと、春乃は1枚の写真を取り出した。それはまぎれもなく今回の事件に協力した理由だ。
「はい。これは返すわ」
「ああ」
俺はこの写真を返してもらう代わりにこの事件に関わったのだ。その写真には俺が車に細工しているのが写っていた。
「どうして、あなたのお姉さんとその婚約者を殺したの?」
「ああ、そんなことか。俺は婚約者に姉さんを奪われたくなかった。奪われるなら殺した方がまだマシだ。ついでに、婚約者も一緒に殺してあげたんだ。一応、姉さんのことが好きみたいだったし。なら一緒に殺してあげようと思って。それに、彼がいなければ姉さんが死ぬことはなかったしね。その責任を取ってもらうっていう意味もあるんだけど」
「あなたって本当に恐ろしいわね」
「それはお前もだろ」
「ええ、確かに」
「でも、春乃は誰かを手放すために殺した。でも、俺は誰かを手放さないために殺した」
「真逆ね」
「実は俺あの頃お前のことが好きだったんだ」
「そうなの?私も好きだったのよ?」
「じゃあ、どうする。付き合うか?」
「付き合うわけないでしょ。すぐに殺されそうで怖いわ」
「ああ、俺も怖いから正直嫌だな」
俺は玄関に向かった。
「じゃあな、これっきりだ」
「ええ、そうね。じゃあ、良い人生を」
「そっちもな」
俺は外に出た。あの日と同じように土砂降りの雨が降っていた。
皆様、お楽しみ頂けたでしょうか?少し、間が空いてしまいすみませんでした。評価、感想等頂けたら幸いです。
今回は推理で投稿するか、ホラーで投稿するか迷いましたが最後が最後だけにホラーで投稿しました。純粋なホラーが好きな人には物足りなく感じるかもしれませんが……。また、大富豪についてですが昔書いていたデータが残念なことになったので現在未定です。次回作については大富豪か新作か?新作の場合は殺人ゲームのようなものを書ければと思います。それについてはストックが2つほどあるので。是非、次回作も待って頂ければと思います。
では最後になりましたが「復讐の果ての復讐」を読んで頂きありがとうございました。あなたの身にこのようなことが起きないことを祈っております。