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PFF ~竜兵のゲーム~   作者: 広科雲
2/9

第一話 パワー・フォース・ファイト!

 長い夏休みを終え、五年三組に新風を巻き起こす転校生がやってきた。

紫堂竜兵しどうりゅうへいだ。得意なのは体育。それ以外はナシ! あと、ゲームも含めて勝負はなんでも好きだ。いつなんどき、どんな勝負も受けるっ。遠慮しないでかかってこいよな!」

 元気なあいさつに、クラスメイトの視線は冷えていた。イタイ子がやってきた、そういう目を全員が浮かべていた。

「はい、みんな、よろしくね。紫堂くんは一番後ろのあの席に着いて。……月浦さん、いろいろ教えてあげて」

 担任教師の名指しを受け、竜兵のとなりに座る少女が立ち上がって「はい」と応えた。

「よろしくなっ」

 竜兵はカバンを机に投げ出し、勢いよく席に着く。

月浦真矢つきうらまや。副学級委員をやってるから、わからないことがあれば聞いて」

「おう、さんきゅ」

 ニッと笑う少年に、この無駄に高いテンションについていけるか真矢は不安だった。

「早速だけどさ、朝、廊下でやってたゲーム、あれなんだ?」

「ああ、PFFね」

「ぴぃえふえふ? 知らないゲームだな。デュエル王なら得意なんだけどさ」

 竜兵はテレビアニメとタイアップしているカードゲームの名をあげた。

「知らないはずよ。この地域でしかできないし」

「ふぅん、地域限定のゲームってのは初めてだな。……オレにもできるのか?」

「できるわよ。無料タダで」

「マジで!? ルールとか教えてくれよ!」

 「コラ、そこ!」声が大きすぎたか、教師が竜兵と真矢を睨んだ。

「仲良くなるのはいいけど、今は学級会中よ」

 注意を受け、「はーい」と二人同時に頭をたれる。真矢にしてみればいい恥さらしだった。

「悪いな。じゃ、後で聞かせてくれ」

「はいはい」

 片目をつぶり無邪気に謝罪してくる少年に、真矢は扱いに困る子供を相手にしている気分になった。


 二学期初日はつつがなく終了――とはいかず、真矢にしてみれば受難の始まりだった。

「な、早く教えてくれよ」

 最後の挨拶が終わった瞬間、竜兵は真矢につめよる。

 「はぁ……」ため息の一つも出る。彼女には彼女なりの予定があるのだ。それが子供のお守りとは。

「がんばってね、真矢」

「じゃあね〜」

 笑って通り過ぎるクラスメイトたち。どうやら竜兵の世話はすべて真矢に押しつけるつもりらしい。それも仕方ないと彼女でさえ思う。転校生とは思えないほどの図々しさとガキっぽさは、正直疲れる。

「わかったわかった。じゃ、実際にやってみましょ。その方が早いでしょ」

「おー、それこそのぞむところだぜ! ……て、オレ、何も持ってないぜ?」

児童証明(ID)カードはもらってるよね?」

「カード? ああ、写真が貼ってあるあれ?」

 竜兵はカバンをまさぐり、プラスチック製のカードを取り出した。

「オレ、転校多いけど、こんなのはじめてもらったぜ。学校に入るときにも持ってないとダメとか、めんどくさいよな」

 「……防犯のためだからね」真矢の答えは少し遅れた。

「紫堂くん、転校多いの?」

「ん、ああ。ま、それなりにかな。親父の仕事の都合じゃ仕方ないし。年に一回はしてるかな」

「そうなんだ。大変だね」

「別に。慣れちゃったし、それにいろんなトコでいろんなヤツに会えるんだぜ。けっこうおもしろいぞ。特にここはめずらしいな。学校公認でゲームができるんだからな!」

「紫堂くん……」

「オレのことは竜兵でいいぜ。そっちのがカッコよくて好きなんだ」

「え、え!? そんな、いきなり名前で呼ぶなんて……!」

 うろたえる真矢に、竜兵は「いいからいいから」と無邪気に笑う。

「……あんたって強引よね。よく今までウザがられなかったわね」

「あー、そういうのも気にしない。オレはオレのやりたいようにやる。じゃないと、つまんねーだろ」

 「……まったく」呆れながらも、真矢はほほえんでしまう。

「わかった、仕方ないからしばらく面倒みてあげるわよ、竜兵」

「おう、よろしくな、真矢」

 瞬間、真矢は真っ赤になった。

「な、なんであんたも名前で呼ぶのよ!」

「いーじゃんか、月浦って言うより真矢のが楽じゃん」

「そういう理由か!」

「気にすんなって。ほら早く教えてくれよ」

「〜〜〜〜っ」

 反論は無駄とわかっていながら、どうにも納得いかない真矢だった。

 廊下の隅に大型液晶モニタと小型の端末をつけた機械が二セットある。今朝、竜兵が見たゲーム・マシンだった。

 意気揚々と駆け寄った竜兵だが、すでに他の児童に占拠されていた。

「残念。どうする、ちょっと見て勉強する? それとも他の場所に行ってみる?」

「他にも置いてあるのか? だったら早くいこうぜ!」

「じゃ、屋上にしようか。あそこだったら――」

「早く来いよ! 置いていくぞ!」

 真矢の言葉が終わらないうちに竜兵は駆けだしていた。

 「ん、もう、まったく……!」真矢はあわてて追いかける。

 二人の様子を見ていたクラスメイトが笑う。その集団の一番最後にいた少女だけは、複雑な表情で竜兵の背中を見送っていた。

「よし、空いてるぜ!」

 屋上に並ぶゲーム台に飛びかかる竜兵。となりでは別の一組がゲームに興じていた。

「早く早く、オレたちもやろうぜ!」

「わたしランカーじゃないんだけどなぁ」

「らんかぁ?」

「このPFF――パワー・フォース・ファイトのプレイヤーのこと。フォース・ランカーといって、戦績によって学年順位があるの」

「マジで? ネットワーク・ゲームなのかよ。カッコいい〜」

「ほら、さっさとはじめるわよ」

 そう言って真矢はカバンからIDカードを出した。

 「このカードを――」説明しようとした真矢の声を妨害するように、となりの機体からファンファーレと勝利宣言が発せられた。ゲームの決着がついたらしい。

 「あれ、おまえ……」竜兵は勝利したランカーを指差した。

「今朝の赤いドラゴンのヤツじゃん」

「……紫堂と月浦」

 興味もなさそうに、少年は二人の名前をつぶやいた。

「なんでオレの名前知ってんだ?」

「バカ、クラスメイトじゃない。八神赤夜くんよ」

「あ、そうなのか。気づかなかった。ま、いいや。よろしくな、赤夜」

「フン」

 竜兵から差しのべられた手を無視して、赤夜は立ち去ろうとする。

「おいおい、冷てーなぁ。あ、そうだ、赤夜、勝負しようぜ」

「あ?」

 聞き咎めるように赤夜は振り返る。竜兵はそんな態度を気にするでもなく、ニコニコとしていた。

「どうせなら強いヤツとやりてーじゃん。おまえ、かなりやりそうだし、勝負しようぜ」

「ふざけるな!」

 「おお?」赤夜の怒気に、竜兵がたじろぐ。

「おまえ転校生だろ? PFFをやったことがあるのか!」

「あるわけねーじゃん。だから初プレイにつきあってくれって言ってんだろ」

「おまえ……!」

「いっとくが、ナメてるわけじゃないぜ。オレはどんな勝負も逃げない。初めてだろうが不利だろうが一度だって逃げたことはねーんだ。それがオレのポルシーだからな」

「……素で言ってるようだからツッコムけど、ポリシーだからね」

「あー、それそれ。てなわけで、相手してくれ。友達だろ?」

「だれが友達だ!」

「クラスメイトなら友達だ。それに右も左もわからない転校生を放っておくなんて、男の風上にもおけないぞ」

 「自分で言わない」真矢のツッコミ・スキルは今日一日でレベルアップしそうであった。

「それはともかく、せき……八神くん、竜兵の相手を頼めないかな」

「竜兵……?」

 不思議そうな顔をする赤夜に、真矢が両手を振って声を張りあげる。

「し、紫堂くんがそう呼べっていうから! いいの、それは! ともかくわたしが竜兵のサポートするから相手してあげて!」

「断る」

「んだよ、ケチ。まぁ、負けるのが怖いんじゃ仕方ないよな」

「……!」

 聞き捨てならない言葉に、赤夜の眼光が鋭くなった。

「あれ、違うの?」

「おまえ――!」

「わーわー、ケンカしないっ。八神くんも学級委員なんだから、転校生に協力してよ」

 「ね? ね?」二人の間に入り、真矢は手を合わせる。

 赤夜は怒るのがバカらしくなり、フゥと息を吐いた。

「……フン、しょうがない。ルールくらいは知ってるんだろうな!」

「知らないよ。だから実戦で覚えるんじゃないか」

「ナメやがって……!」

 赤夜が対となっているゲーム・マシンの一方に着き、正面の12インチ液晶付タブレットパソコンにIDカードを差し込む。すると後背の大型液晶モニタにいくつかの数値が表示された。

「竜兵もそのスロットにカードを挿して」

「おうっ」

 竜兵はワクワクしながら赤夜の対面にあるマシンに入った。真新しいカードが端末のスロットに飲み込まれていく。竜兵の背後の液晶モニタにも赤夜と同じような画面が現れた。

「……ぶっ」

 先ほどまで不愉快な顔をしていた赤夜が、竜兵の画面を見た瞬間、ふきだした。

「な、なんだよ!?」

 いきなり笑われ竜兵はとまどう。見れば真矢もそっぽを向いて笑いを堪えていた。

「な、なんなんだよ、おまえら!」

「ご、ごめん。でも、だって……!」

「本当に運動バカなんだな、おまえ」

「なんでそんなことわかるんだよ!」

 図星だが、初対面の相手に言い当てられるわけがない。バレるとすれば、秘密があるはずだ。竜兵は背後のモニタに振り返った。

 画面の右上と左上、真ん中と右下に数字が出ていた。それぞれ1・2・25・0と書かれている。

「あれ、赤夜と数値が違う……?」

 赤夜の数値は5・5・25・0となっていた。

「なんだよ、これ。レベルか? ゲームやって経験値稼ぐと強くなるのか?」

 竜兵は考えられる理由を述べてみた。が、二人はなおも笑っている。

「おまえ、編入試験は受けたよな?」

「あ? ああ、夏休みの終わりに……」

「よほどさんざんな結果だったらしいな」

「だからなんでわかるんだよ!」

「その数値がおまえの成績だからだ」

「なにぃ!?」

 竜兵は驚いて振り返る。

「もともとPFFは学生の勉強意欲を高めるために近隣の学校の先生が作ったゲームなのよ。ゲームで強くなりたければ、がんばって成績をあげなさいってね」

「マジかよ。そんなのサギじゃん……」

 竜兵はとたんにやる気を失くしてきた。学校公認でゲームができるなんて話がうまいわけだ。

「そういうわけで、成績がバレてしまうのがイヤでわたしもやらないのよ。学年一三七……竜兵が入って一三八名中半数近くは参加してない。もともとゲームに興味がない人もいるけどね」

「この能力差ではゲームにもならない。やめとくか?」

 赤夜が鼻で笑う。竜兵はムッとなった。

「真矢、これはゲームだよな?」

「え、そうだけど?」

「知能比べじゃなくて、ゲームになってるんだよな?」

「う、うん。ルーレットがあるし、運の要素も高いかな」

「もちろんそれ以前の戦略があり、戦術を駆使する頭は必要だ」

 赤夜が付け加える。

「よぉ〜し、わかった」

「なにがだ?」

「ゲームなら勝ち目はある。いや、なくてもオレは勝負からは逃げねぇ」

「なんだ、やるのか?」

「もちろんだ。勝負だ、赤夜!」

「いいだろう、徹底的に潰してやる」

 「なんで二人してケンカ腰なのよ」真矢からは小学生らしくないため息が出っ放しだった。

「真矢、簡単にルールを教えてくれ」

 「はいはい、わかったわよ」真矢は竜兵のとなりに立ち、タブレットを指す。

「対戦はプレイヤーの分身――アバター同士での一対一。ターンを交代しながらカードやスキルを使って戦うの。画面上部の左右の数値は、アバターのパワーとフォースを表す。ゲームっぽくわかりやすく言うと武器による攻撃力と、魔法による攻撃力ね。プレイヤーは自分のターンにどちらか選択して攻撃する。そしておたがいに選択された方の数値に、ダイス――サイコロ2個の数値を加える。それを比較して大きい方が差分のダメージを与える。真ん中の数値がライフで、ダメージを受けると減っていくの」

「当然、0になったら負けだな?」

「うん。で、右下の数値はAP――アクション・ポイントと言って、手持ちのカードやスキルを使うときに消費される。消費するポイントはカードとかによって違って、足りないと使えない」

「なるほど、わかりやすいな。APはたがいに0だけど、増やすにはどうするんだ?」

「毎ターン2ポイントずつもらえる。貯めておいて一気に使うのもいいし、細かく使ってもいいわ。APがある限りいくらでも行動できるから。ただし、攻撃は1ターンに原則一回」

「了解だ。APの使い方がカギってわけだな」

「ま、そうね。あとは実際にやっていきましょ」

「おう、よろしく頼むぜ、相棒!」

 「はいはい」真矢は面倒くさそうに返事をする。

「紫堂はまだランク・マッチはできまい。フリー・モードでスタートするぞ」

 赤夜が目の前の液晶に触れる(タップ)

「ほら、こっちもフリー・モードを選択して。初プレイから五戦まではフリーしかできないんだから」

「お、おう」

 竜兵も液晶パネルに書かれた『フリー・モード』の部分をタップした。備え付けれたスピーカから音声が流れ出す。

『パワー・フォース・ファイト、フリー・モードで起動。レッド・コーナー、五年三組クラス・マスター、八神赤夜』

「おお、紹介までされるのか。で、クラス・マスターってなんだ?」

「クラスで一番ランキングが高い人よ」

「おお、赤夜やるなぁ!」

 「フン」竜兵に誉められても赤夜は嬉しくもない。

『ブルー・コーナー、五年三組フォース・ランキング一三八位、紫堂竜兵』

「ぶっ、オレ、学年最下位ぃ〜?」

「当然だな」

「転校生だしね」

 真矢のフォローは慰めにもならなかった。

 画面は竜兵の気持ちを無視してたんたんと次のステップへと進む。

「あばたぁ・せってぃんぐ?」

 ゲームが始まると思いきや、画面には新たな数値と文字が並びだした。

「ゲームでのプレイヤーの分身を作るのよ。それにあったスキルの選択と、ボーナス・ポイントの振り分けもここでする。カードの選択もあるんだけど、竜兵は初期デッキしかないからこれは省略ね」

 「ええと……?」意味がわからず質問しようとした竜兵に、イラッとしながら赤夜が割り込んだ。

「ボーナス・ポイントはパワーとフォースに振り分けるんだ。スキルは分身であるアバターのクラスによって使えるものが異なる。合計レベルが5以内なら組み合わせは自由だ」

「お、おお、さんきゅ」

 竜兵は改めて画面を見直す。なるほど、パワーとフォースの数値がチカチカと点滅し、上矢印を表示させている。試しにパワーのほうをつつくと数字が一つあがり、上矢印に加えて下矢印も現れた。

 そのまま押しっぱなしにするとパワーが11で止まり、下矢印だけが画面に残った。

「ボーナス・ポイントは10点みたいね。ふ〜ん、工作とか音楽は得意なほうなんだ?」

「え? なんでわかるんだよ」

「ボーナス・ポイントは図工・音楽・家庭科の成績の合計だもん。竜兵は家庭科が得意ってカンジじゃないし」

「ぐ……。成績丸裸かよ」

「だからわたしはやらないんだって」

 真矢は笑った。

「とにかく、これを振り分ければいいんだな?」

「うん。数値が確定するとアバターのクラスも選択できるようになるわ。肉弾戦のパワーメインか、特殊能力のフォースがメインかで選べるクラスも変わるからね」

「クラスって、この戦士ファイターとか魔術師ウィザードって書いてあるヤツだな」

「そうそう。能力がズバ抜けて高いと、上級クラスなんかも選べるから。といっても、竜兵じゃどうあがいても無理だけどね」

「ウルサイッ」

 竜兵は10点のボーナスを6と4で振り分け、パワーを7、フォースを6とした。クラスは下級クラスのファイターだ。

「お、クラスが決まったらスキル一覧が出たぞ」

「スキルはカードがなくてもAPさえあれば使用できるのよ。消費APはスキルのレベル」

「なるほど。じゃあ……」

 竜兵の指がタッチパネルの二カ所に触れる。横から見ていた真矢は「へぇ」と感心した。ゲームが得意というだけあって、いい選択をしている。

 続いてデッキ――ゲーム中に使える行動カード束の編集である。しかし竜兵は初プレイなので、あらかじめ用意されている二〇枚のカードをそのまま初期デッキとして使用するしかなかった。

「よし、できた。ゲーム開始と行こうぜ!」

「先攻・後攻を決めるわよ。画面をフリックして」

「ふりっく?」

「えーと、適当に撫でてみて。ルーレットが回るから」

 「こうか?」液晶画面を左下から右上に向けて勢いよく撫でてみる。すると、画面に出ていた二つの球が激しく転がりだす。球は壁に当たって跳ね返り、たがいに衝突して反転したりして徐々にスピードを落としていった。

「なんか数字を上にして止まったぞ。3と5だ」

「これはサイコロなのよ。ゲーム用語ではダイス。PFFではダイスを振ることをルーレットって呼ぶの。振る数によって2Dルーレットとか3Dルーレットとか言うわ」

「なるほど」

「このゲームではルーレットの結果が勝敗をわけるといっていいかな。運が良ければこれだけで勝てるわよ」

 竜兵が納得していると、赤夜が急かしてきた。

「こっちの合計は7だ。先攻はおまえだ。早くやれ」

「わかったよ。……で、画面の下に出てきた二枚のカードが手札だな」

「そう。まずはチャージ・フェイズね。おたがいにカードを一枚引く。それとAPもこのフェイズでたがいに2ポイントもらえる」

「おたがいに引くのか。めずらしいルールだな」

「そうなの? よくわかんないけど、とにかく初めは三枚でスタートすることになるわね」

 竜兵は液晶タブレットに映るカードのテキストをむさぼるように見つめた。〈ポーション〉とか〈追撃〉とか書かれている。

「なるほど。これを使って戦闘を有利に進めるんだな」

「竜兵、メイン・フェイズに移るわよ」

「あ、おう」

「メイン・フェイズでは攻撃したり、カードやスキルを使ったりできる。順番は決まってなくて、APやカードがあるかぎり何度でも行動できるの」

「それじゃ先攻が圧倒的に有利じゃん」

「といっても、はじめはAPも2しかないからできることは限られてるけどね。それにカードのタイミングがPのものは1ターン目は使えないし」

「たいみんぐ? ぴぃ?」

「えーと、竜兵のこのカード、灰色になってるでしょ?」

「ていうか、ぜんぶ灰色だけどな」

「い・い・か・ら、このカードだけ見て!」

 半分怒りながら、真矢が一枚を指差した。〈ストレングス〉という名のカードだ。

「灰色なのは今は使えないって意味で、カードのタイミングのところに『P/-』ってあるでしょ? これがタイミング・Pってやつね」

「ああ、書いてあるな」

「Pはプレイの略で、自分ターンのときしか使えない、行動始点のカードなの。このカードからアクションがはじまって、相手がカウンターしたり、さらに自分が行動を重ねたりする」

「う〜ん?」

「わかんなきゃ使えるときに使ってみなさい。そのうち覚えるから」

 「おう、そうする」改めて自分の場を眺めてみると、できる行動は「攻撃」のみらしい。スキルもカードも灰色で、ためしに触れてみても明らかな失敗ブザーが鳴るだけだった。

「なら攻撃あるのみ!」

 「え!?」真矢は驚き、赤夜は「ふっ」を嗤った。

「……なんだよ?」

「えと、いいんだけどさ、八神くんのアバター、かなり強いよ?」

 チラリと相手の大型ディスプレイを見る。圧倒的な凶暴さを全身から発する赤い巨竜――ブレイズ・ドラゴンが咆哮をあげている。数値からして、パワー10、フォース9と、竜兵のファイターより上だった。

「んなコト言ってたらゲームにならねーじゃんかっ。たかが3くらい、気合で突っぱねるぜ!」

「あー、そーですか」

 真矢は呆れ顔を浮かべた。

「てなワケで、パワー勝負!」

 竜兵の指が「攻撃」をタップし、画面に現れた二個のダイスを勢いよくフリックする。2Dルーレットが回る。

「ルーレット合計が8、パワーを加えて15だ!」

 「その程度」竜兵の叫びに呼応して、赤夜もルーレットを回す。

「返り討ちだ。ヘル・ファング、19!」

「マジか!?」

 赤夜のルーレットは4と5を上にして停止した。基本パワー10と加算して攻撃力19である。

 「ぐああっ!」3Dの大画面で迫る四枚翼の赤竜が巨大なアギトで竜兵の戦士を噛み砕く。ハデなエフェクトと無駄にリアルな音声が、作り物とは思えないほどの臨場感で竜兵を襲った。

「くっそぉ、ライフが4点減っちまった」

「竜兵、ここでカウンターよ。ほら、このカード、カラーになってるでしょ?」

「お、おお?」

 真矢にうながされて液晶タブレットを見ると、たしかに一枚のカードが使用可能になっている。

「レベル2〈ポーション〉、ライフを1D回復する……か」

「APを2点使うけど、相手の行動に対して反撃カウンターで使えるカードよ」

「ああ、これはタイミングがP/Cってなってるな。Cはカウンターってヤツか」

「そうそう。使ってみれば?」

 竜兵は「う〜ん」と考え込み、数秒後、行動をスキップした。

「え、なんで使わないの?」

「この程度ならまだ大丈夫だし、このカードのためにAPの温存もしておきたい」

「ふーん、考えてるんだ」

 真矢は二度目の感心をした。もっと単純かと思ったら、意外に冷静な判断力があるらしい。

「当たり前だろ。これでもデュエル王は強かったんだぞ」

「知らないわよ、そんなの」

「てなわけで攻撃終了。他にできることはないから、次のフェイズに移行だな」

「ターン終了宣言フェイズだ」

「ああ、これでおしまいか。手札上限処理とかないのか?」

「ない。APも手札も基本上限なしだ」

「気前いいな。後半一気に勝負ってヤツだな。ターン・エンド」

「長びかせるつもりはない。オレのターンだ」

 そう言って、赤夜が自分のタブレットをタップする。チャージ・フェイズでたがいにカードが一枚と、APが2点補充される。 


 紫堂竜兵……ファイター/P7/F6/ライフ21/AP4/手札4  

 八神赤夜……ブレイズ・ドラゴン/P10/F9/ライフ25/AP4/手札4


「早々に散れ!」

 赤夜がフォース攻撃のルーレットを回す。彼の気迫を受けるように、ダイスは6と4を表にして停止した。

「すっげぇダイス運だな、おいっ」

 竜兵が賞賛と嘆きの混じった声を上げる。彼自身のルーレットは8で、けして悪い目ではない。

「ヘル・ブレイズで5ダメージ!」

 今度のエフェクトは赤竜が吐き出す業火だった。戦士は楯を構えるが、炎の規模と威力の前には紙にも等しい。全身が炎に包まれ、人型であるのがかろうじてわかる程度だった。

「おい、5ダメージくらいでこの映像はねーだろ!?」

「フン、どうせすぐに現実となる」

「くっそぉ、まだ負けてねーぞっ」

「吠えてろ。ターン終了」

「なんで男の子ってこんなゲームで熱くなれるんだろ」

 無知な子供だったころならいざしらず、成長した真矢にはため息しか出てこない。

「オレのターン。チャージ!」

 手札とAPの補充。たがいにAPは6、手札は五枚となっていた。

「よし、カードがカラーになった。行くぜ、〈ストレングス〉カード使用!」

 タイミング・P、レベル3のスペル・カードだ。

「このターン、オレのアバターのパワーを1Dアップさせるっ。1Dルーレットで……4アップ!」

「八神くん、カウンターは?」

 アクションが起きたとき、相手にはカウンターの権利が発生する。赤夜は何らかのカードまたはスキルを発動してもよいのだが、今回は「スキップ」ボタンをタップして流した。

「たかが1点基本攻撃力が上回った程度で騒ぐほどか」

「そうかよっ。じゃ、攻撃いってみようかぁ!」

 勢いよく竜兵の2Dルーレットが走る。だが、ダイスの目はその気迫を汲み取らない。

「……ぐあ、2ゾロかよ!」

「ゾロ目!?」

「ブーストした!」

 落胆する竜兵に代わり、赤夜と真矢の表情が強張った。

「ん? なんだよ?」

「このゲームの一番恐ろしいところはここよね」

 真矢がダイスを凝視したままつぶやくと、赤夜は舌打ちした。

「だからなんなんだよ!?」

「PFF最大の特徴がブーストっていうゾロ目ルールなのよ」

「ぶぅすと???」

「そう。複数のダイスを一斉に振ったとき、すべてが同じ目……つまりゾロ目だったとき、さらにもう一回振れるの。2Dなら2Dルーレットでね。しかもこれ、ゾロ目が途切れるまで延々と加算されていくのよ」

「マジか!? チョー一発逆転ルールじゃねーか!」

「だから言ったでしょ? 運がよければ勝てるって」

「よっしゃ、それじゃまたゾロ目出すぜぇ!」

 先ほどよりもさらに勢いよくフリックする竜兵。だが、次の目は4と5だった。

「カーッ、おっしぃぃ!」

「そうそう出てたまるか」

「でも、スゴイ攻撃力よ、これ。基本の7+〈ストレングス〉の4+2ゾロ+4+5……24?」

「よっしゃぁ、赤夜、ルーレットしろ!」

「調子に乗るな、最弱が!」

 ムキになってフリックする赤夜。いつの間にか竜兵のペースに巻き込まれているのに気づいていない。

「クッ、合計16だと……?」

「一気に8ダメージ。竜兵、やるじゃない」

「おっと、褒めるのはまだだぜ。これにカウンター・カードだ」

 そういって竜兵が一枚のカードを場に出した。〈追撃〉と書かれている。

「うわ、さらに追い討ち? エゲツない……」

 2レベル・アクション・カード〈追撃〉は、攻撃のダメージを1D分追加する効果がある。竜兵は1Dルーレットで最高値の6を出し、総攻撃力を30にまで引き上げた。

「このままだとダメージ14点だよ?」

 なんだか気の毒になり、赤夜を心配げに見やる真矢。

 その表情がカンに触ったのか、赤夜は「黙れ!」と一喝した。

「おまえに同情されるいわれはない!」

 赤夜は一切の抵抗をせず、そのまま14ダメージを受けた。彼の背後のディスプレイでは、竜兵の戦士がドラゴンの翼を叩き斬るエフェクトが大音量とともに流れていた。

「ターン・エンドだっ」

 意気揚々と終了宣言をする竜兵を、赤夜は奥歯を噛んで睨んだ。

「……」

 静かに第4ターンをスタートさせる赤夜。


 紫堂竜兵……ファイター/P7/F6/ライフ16/AP3/手札4  

 八神赤夜……ブレイズ・ドラゴン/P10/F9/ライフ11/AP8/手札6


「チャージ・フェイズ終了。メイン・フェイズで2レベル・スキル〈ブレス・チャージ〉を発動。〈ブレス・チャージ〉を使用するとこのターン、攻撃ができなくなり、次のオレのターンまでパワーは0になる」

「おい、そんなことをしたら次のターンでオレが攻撃してたおしちまうぞ?」

 「できるものならやってみるがいい」赤夜の眼が鋭く光った。

「だが、次のターンでしとめられなかったとき、おまえの敗北は確定だ」

「ハッタリ……じゃないよな?」

「〈ブレス・チャージ〉の効果は、次のオレのターン、フォースの値はパワーの数値を加えたものになる。つまり、フォースは19になる」

「それは運が悪けりゃ即死だけど……」

 そうそううまくいくものだろうか。竜兵は考えてみる。こちらのフォースが6なので、ルーレットで3の差がつけば負けるだろう。けれど、こちらには〈ポーション〉もある。それほど分が悪いわけでもない。

「スキルに対するカウンターは?」

「え、ああ、えと……ないな」

 手札を忙しく眺め、使えそうなカードがないのを確認。竜兵はスキップ・ボタンを押した。

「これでターン終了」

「なにやら賭けに出たようだけど、オレのが一手早かったかもな」

 竜兵がチャージ・フェイズを終える。


 紫堂竜兵……ファイター/P7/F6/ライフ16/AP5/手札5  

 八神赤夜……ブレイズ・ドラゴン/P0/F9/ライフ11/AP8/手札7


 〈ストレングス〉のようなカードが手札にはないので、素直にパワーによる攻撃を宣言した。

「ルーレットは9。攻撃力は16だぜ!」

「八神くんはルーレットで6以上出さないと負ける……」

 真矢は我がことのようにドキドキしていた。ゲームだとわかっていても、あの八神赤夜が敗北する姿をさらすかもしれないのだ。あの、昔から何でもできたスーパーマンのような少年が――

 そんな過去を振り返っている間にも、ゲームは進んでいた。

 ルーレットが停止する。

「3と……2?」

 運命が、決する。真矢は目の前が真っ暗になった。あの八神赤夜が、負けた……

「オレの、勝ち――!」

「カウンター発動! 〈竜鱗の加護〉」

「なにぃ!?」

「このカードは、2ターンの間、クラス・ドラゴンの受けるダメージを3点減少させる!」

 「あ……」赤夜が画面に登場させた3レベル・カードに、真矢は安堵していた。自分でもわけがわからないほど心底から。

「くっそぉ、オレがルーレットで9を出した時点でおまえは生き残りを確信してやがったな」

「フン、〈竜鱗の加護〉(これ)があるかぎり、6以上は確定だからな」

 1ゾロでも2ではなく、ブーストが発動する。最低値である1と2の合計3でも、〈竜鱗の加護〉で6は確実だった。

「けどな、こっちもこれで終わりじゃないぜ! カウンター・スキル〈クリティカル〉発動」

「!」

「このゲーム暦はオレより長いんだ、知ってるよな? 3レベル・ファイター・スキル〈クリティカル〉は、2Dルーレットで12以上出たとき、総攻撃力を二倍にするスキルだ」

「クッ……」

「はじめは6ゾロなんて出るかと思ったけど、ブースト・ルールでわかったぜ。なんで12『以上』なのかさ。……いくぜ」

 竜兵がダイスを回す。

 竜兵は自信に満ちた顔を浮かべた。

 赤夜は無表情だった。

 真矢は――祈っていた。その祈りがどちらに向いているか、彼女以外は知らない。

「キたぜ、3ゾロ!」

「……運だけはいい」

「そうさ、これはゲームだ。勝ち負けは基本能力なんかじゃ決まらない!」

 再びルーレットがはじまる。

「勝つのは――」

 「オレだ!」二人の叫びが重なる。と、同時にダイスは一方にとって無情の解を示した。

「くっそぉぉぉぉぉぉっ!」

 竜兵が頭を抱えてもんどりうつ。

「フン、運だけで勝てるほどこのゲームは甘くない」

 言葉と裏腹に、赤夜の声に余裕はなかった。

「……八神くんが残った?」

「あー、そうだよ! あと3点だってのに、う〜っ、マジで悔しいぜぇぇぇぇっ」

 竜兵の泣きそうな顔が、真矢にはおかしかった。安心したからだろうか? それとも、二人の一喜一憂ぶりが楽しかったからだろうか? 自分でもわからない。

「あー、うー、ターン・エンド……」

 ヘナヘナと脱力しながらも、ゲームのルールに則って終了宣言する竜兵。

 そのぶんの活力を引き受けるように、赤夜がターン開始を宣言した。

「オレのターン! そして、これが最終ターンだ!」


 紫堂竜兵……ファイター/P7/F6/ライフ16/AP4/手札6

 八神赤夜……ブレイズ・ドラゴン/P0/F19/ライフ3/AP7/手札7


「なにをぅ? まだこっちにはライフが16もあるんだぞ!」

「そんなもの、オレのブレイズ・ドラゴンが溶かしきってやる! 5レベル・スペル・カード〈ブレイズ・カース〉!」

「カース? 呪い?」

「そうだ、おまえには業火の呪いを受けてもらう。このカードの対象になったアバターは、1ターンの間、炎属性のダメージが二倍になる!」

「ちょ、ちょっと待てぇ! こっちの〈クリティカル〉はルーレットで12以上とか条件あったのに、そっちはなしかよ!」

「〈クリティカル〉はレベル3だし、スキルだし、属性無視じゃない」

 「ぐっ……」真矢のツッコミに竜兵は反論ができなかった。

「それにダメージ二倍と攻撃力二倍だと意味が違うわ。ダメージ二倍は最終計算されたダメージが二倍になるから、攻撃力二倍よりもダメージは低くなる」

「なんで?」

「あとでゆっくり計算しなさいっ」

 二人の漫才解説を無視し、赤夜が攻撃宣言をする。 

「燃え散れ、ヘル・ブレイズ・バースト!」

 スキルの影響を受けたのか、画面エフェクトがさらにハデに強烈になった。炎の濁流が画面いっぱいに迫り、熱波まで再現するように周囲を赤く、白く染める。

 ルーレットは8を示した。総攻撃力は27。

「えーと、ダメージが二倍だから……」

「ルーレットの結果が13以下なら負け」

「マジか!?」

「大マジ」

「なら、やってやるぜ! ここを乗り切れば、オレにも勝機があるっ」

 竜兵がタブレットをフリックする。ルーレットがスタートし、数秒後にとまった。

「3コたんねー!」

 再びもんどりうつ竜兵。ダイスの目は惜しいことに5と6だった。5ゾロ、もしくは6ゾロならば14以上は問題なかっただろう。

「小芝居はいい。〈ポーション〉があるのはわかっているんだ」

 「あ、知ってた?」竜兵がニヤリと笑う。真矢が「さっき使うかどうか聞いたじゃない……」と呆れた。

「あー、そっかそっか。それじゃ遠慮なく使うぜ。……よし、4だ。ギリギリ助かり!」

 ふぅ、と一息つく竜兵に、赤夜のカウンターが炸裂する。

「〈追撃〉。説明はいらないな」

「あーっ!」

 ご丁寧に1Dルーレットで5を出し、竜兵はとどめを刺された。


 「どうだった、初対戦・初敗北は?」

 悔しがる竜兵に真矢がたずねた。

「悔しい……。たとえ初プレイだろうと能力が低かろうと関係ない。負けは悔しい」

 赤夜は一瞥だけ残してとっくにこの場を離れている。その見えない背中を追うように、竜兵は勝者の消えた扉を見つめていた。

「竜兵……」

「けど、楽しかったぜ。運の要素がデカイけどさ、逆にいうとそれがハラハラしてワクワクした。あのときブーストすれば、あのときアイツの目が1でも少なければ、って思い出しても興奮する」

 少年は自分の手を見た。かすかな震えがある。

「今回は負けだ。けど、勝てない相手じゃない。今度はオレが勝つ!」

「……竜兵は、前向きだね」

「まぁな。楽しいものは楽しまないともったいないだろ?」

 ニッと笑う。真矢はその無邪気さにつられた。

「だけど、基本能力差は前向きさだけでどうにかなるものじゃないわよ?」

「うー、それを言うなよ……」

「アハハハハ」

 真矢が声に出して笑う。今度は竜兵がつられて大笑いした。

「よぉし、これからは片っ端からいろんなヤツとゲームして、腕を磨くぞ!」

「強くなりたいなら、まずはカード集めからね」

「カード集め? これ、TCGなのか?」

「TCG? ああ、トレーディング・カード・ゲームのこと? うん、そうよ。対戦すると必ずカードが一枚もらえるの。竜兵の今のデッキは構築済みの初期のものだから、レア・カードはないはずよ。そういうのを集めないとね」

「おおー、学校公認ゲームのくせに、そんなところに凝ってるとは!」

 竜兵はさっそくカード・リストを検索した。たしかにカードが一枚、アルバムに追加されている。

 〈マジック・シールド〉と書かれたカードで、レア度は五段階中・星三つでめずらしいというほどでもない。けれどカード効果は汎用性が高そうだった。

「これがさっきあれば、負けなかったかもなぁ」

「それもまた楽しさってヤツでしょ?」

「それもそうだな。よし、さっそくこれをデッキにいれて、ひと勝負だ。真矢、やろうぜ!」

「ええ、わたし!?」

「もともとおまえが相手してくれるはずだっただろ? 一回くらい付き合えよ」

「あー、もー、あんたって人の迷惑、なにも考えないわよね!」

「気にすんな。さぁ、ゲームしようぜ!」

 「ハァ〜……」 もうなにを言ってもムダ。真矢は悟り、仕方なくIDカードを取り出した。けれど不思議と不快ではなかった。どうやらこの短時間で能天気な竜兵菌に感染してしまったらしい。

「付き合ってもいいけど、一つ約束よ」

「なんだよ?」

「わたしの成績、みんなにバラさないでね」

「なんだ、そんなことか。大丈夫、そんなの興味ないから」

「興味なくても見ればわかるじゃないっ。いい、ゼッタイだからね!」

 念を押して真矢はタブレットを叩いた。

『パワー・フォース・ファイト、フリー・モードで起動。レッド・コーナー、五年三組ソウル・ランキング八七位、月浦真矢……』

 ゲーム・マシンから合成音声が響く。この日から、竜兵の新しいゲーム生活がはじまった。

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