師匠の姫神
※三話連続更新です
作戦を無視して艦船に突撃してしまい、音緒さんには説教されたが作戦が無事に終わったら一緒にどっかへ行く約束をした。……またこの死亡フラグか。
二十歳という若さで現役を引退したリナードさんがいるとは思わなかったが、強化してつけ加えた回復機能で俺を助けてくれた。
俺と大体十歳ぐらい歳が離れているため、師匠より大人の色気なのか何なのか、押されると弱くなりそうだ。……さすがにこんな戦場で何かした訳じゃないが。
そんなこんなあったものの、無事制圧作戦も上手くいったようで、残りは一隻とまだ三十人近く残っている暗黒狂戦士だけだ。
六隻中五隻の制圧が完了し、作戦はほぼ順調。
だが何故か、気持ちが晴れなかった。エルナの言葉をそのまま鵜呑みにする訳じゃないが、残りの一隻にいるというもう一人の男姫神使いが気になっているからだろう。
潜入組が元暗黒狂戦士達を捕えて艦船に乗せ、回収していく中、俺達五人が残りの暗黒狂戦士を片付けていた。
「……ふぅ」
俺達五人、特に俺自身の消耗が激しい。暗黒狂戦士だけなら何とかなるだろうが、もしかしたらまだ六隻目に強敵が乗っているかもしれない。そんな不安もあった。
「……師匠」
俺は師匠の傍に寄って声をかける。そろそろ終わりにしないか、という相談だ。
「……分かってる。私があの一隻を攻撃するから、残りの雑魚は頼んだ」
師匠は俺の意を汲み取り頷いて、
「……森羅の帝」
全ての属性をまとめた、一対の大剣。師匠が持つ最強の力だ。
師匠が大剣を振るって火水雷土木風氷光闇を混ぜ合わせた巨大な斬撃を放ち、俺達は周囲の暗黒狂戦士を一掃する。アリシアの姫神が解除されかけ、俺が浮遊で皆がいる艦船に送った。
「……そうはさせねえ!」
師匠が放った最強の斬撃を、真っ二つにした人影が艦船の前に立ち塞がる。
「「「……っ!?」」」
その人物に、全員が驚いた。
「……久し振りじゃねえか、恵」
ニヤリと歯を見せて笑うその美女は、黒い袴姿に日本刀を一本携えているだけだった。ただ斬るだけに特化し、世界最強の座に着いた姫神使いであり、負けたら引退するとまで言った戦闘狂であり。
そして、世界最強の座を師匠に奪われた人であった。
“狂乱の鬼神”とまで呼ばれた彼女の名は、ツバキ・アルメイサ。艶やかな黒髪に赤い瞳を持つ、ハーフだ。
「……ツバキ!」
師匠が途端に険しい表情になる。
「……ツバキだけじゃないわよ」
続いて現れたのは、金髪の美女。だがその顔にも見覚えがあり、美女は虚空から無数の大砲を出現させると、俺達に向けて放ってきた。師匠が全てを一振りで薙ぎ払うが、表情には驚きが隠せない。
「……フラン・スウェルト」
呟いたのはフランスの国家代表、アリシアだ。元フランス最強の姫神使いと言われ、たった一人想像から創造する『プレイヤー』の一つ“創造主”の姫神を持つ“銃創姫”だからだろう。
「……まさかまた隠居した姫神使いが出てくるとはね」
音緒さんが冷や汗を浮かべて苦笑していた。……リナードさんに続き、かつて引退したトップクラスの姫神使いがこうも連続で出てくると、さすがにキツいモノがある。
「……悪いけどあの子に手は出させないわよ」
フランさんが言って、砲撃の準備を無数の大砲にさせる。
「オレら二人以外に護衛はいねえが、倒せるもんなら倒してみろよ、恵ぃ!」
ツバキさんが戦闘狂らしく笑いながら言って、飛び出してくる。飛行能力をつけ足した以外は全て姫神を強化もせずにただ己の力のみで戦うツバキさんい引導を渡したのが、強化と進化しまくりの師匠だったってのは皮肉だよな。まさに世代交代と言われた二人だ。
新旧の世界最強が戦う中、フランさんと戦う俺、音緒さん、セスティア先輩。消耗した俺達だが、現実に縛られるフランさんの姫神では、俺の姫神を超えられず、武器ということもあって音緒さんのマグマや霧(水)に弱く、次第に押していく。
「……くっ。こうなったら仕方がないわね。その人の姫神を完全コピーするこの装置で」
次第に傷が増えるフランさんだが、このままでは勝てないと踏んだのか懐から何やら腕輪のようなモノを取り出す。
「……っ! 大河君の姫神をコピーする気!?」
音緒さんが狙いを読んで俺の前に立ち塞がる。……音緒さんでもそれが適応されればどっちかなのか両方かによってヤバいかどうかが決まるんだが。
「……いいえ。確かに彼の姫神は強いけど、もっと強い人があそこにいるじゃない」
フランさんは意味深に言って腕輪を嵌め、師匠に向けて腕輪を嵌めた手を伸ばす。
「……っ、師匠!」
俺は焦って師匠を呼ぶ。師匠はツバキさんとの戦いで余裕がない。
「……貰ったわ!」
隙を見て腕輪から光線が放たれ、師匠に当たり師匠の全身を覆う。
「……なっ」
驚く師匠と、焦る俺。……だって師匠の姫神がバレてしまう。師匠が必死に隠蔽してきたってのに。
「……あははははっ! これで私達の勝ちよ! だって最強の姫神が二つ共あるんだか、ら――?」
師匠を覆う光が情報を読み取ったのか、光線を伝ってフランさんに吸収され、フランさんが光り輝く。
だが、フランさんは途中から首を傾げた。
そして、コピーが完了し変化が訪れる。カッと光が一層強くなり――光が収まる頃には姿を変えたフランさんがいた。
フランさんは元々ラフな格好ではあったが防具も着けていてしっかりした格好だった。
それが、黄色いビキニのような服で頭に三角突起のついたカチューシャをつけ、手と足にモフモフの毛が生えた動物の手足をつけて、尻辺りから備えつけの細長い尻尾があった。
それはどこからどう見ても猫で、猫以外にあり得なかった。
「……ね、猫?」
誰かが呆然として呟く。
「……ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!! な、何してくれてるんだ! せっかくずっと秘密にしてきたのに!」
師匠がこの世の終わりみたいな顔で叫ぶ。……ほとんど欠片もないから、バレないんだよな。頭の上についてるヘルムんとこの突起二つとパンツみたいなアーマーの後ろについてるちょこんとした突起しか残っていない。最早別の姫神だった。
「……お前、猫だったのか」
ツバキさんから同情の視線を向けられる師匠。……最初の武器が爪と身体能力しかない状態からどうやって今の姿になったのか、誰にも分からない。
「……う、うるさい!」
師匠は顔を真っ赤にして怒鳴り、大剣を振るう。
「……う、嘘。まさか猫だったなんて……」
落ち込むのはフランさんだ。だって滅茶苦茶弱くなったんだからな。ピンチから大ピンチになった訳で。
「……悪いけどフランさん。師匠を辱めたことも含めて、ボコボコにしますね?」
にっこりと笑みを浮かべて一言。俺はその後フランさんを瞬殺してやった。




