襲撃へ
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今朝、会長と何やら危うい体勢になってしまっていて一悶着あったが、誰一人として欠けることなく作戦の最終確認が行われていた。師匠は時間になったら一人で来るらしい。
何故夜中の暗い時間に襲撃して、奇襲という形を取らないのかというと、実はこの作戦、世界中で今まさに行われようとしている大規模なモノなのだ。
そのため、基準にしている時間と重ねるために、世界中なので時差があって、露の出ている早朝ということになっている。
国によっては昼間などの明るい内に襲撃することになり、危険だがそうするのが一番いいという結論になった。
その理由が敵であるネオス同士の連携だ。海上に拠点の艦船を置いている訳だが、日本と韓国や中国のように隣の国だと、ピンチの時に駆けつけられてしまうかもしれない。ヨーロッパの隣り合わせの国々なんて以ての外だ。すぐに合流されてしまい、作戦失敗なんてことになったらマズい。一回の襲撃で仕留めるのが一番だ。
一応俺と『プレイヤー』の“魔導司書”である生徒会書記の真央先輩とで遠視を使い、偵察は行っている。だが兵器はまだ中に隠してあるのか見えないように姫神の力を使っているのかは兎も角として、分からなかった。姫神の力を機械で感知する研究も進められており、あまり近付けないこともあって意味はほとんどなかった。
姫神使いが何人いるかを感知しようとすると逆探知でこっちが気付かれてしまうので、やってない。ほとんどぶっつけ本番という形になっている。
念のため相手が持っていそうな、奪われた研究成果について対策を練っていたし特訓でもその兵器に対する訓練は行ってきた。それでも充分とは言えないが、これ以上の対策はないと思われる。
出来るだけのことはやった。あとは実行に移して作戦を成功させるだけ。
「……じゃあ皆、この場の最高責任者として、生徒代表の生徒会長として、ホントに一言だけ言うわよ」
三年の生徒会役員、二年生代表、俺達一年生の順で右から縦に整列している。その前に立って少し固い笑みを浮かべるのは生徒会長の音緒さんだ。
「……全員生き残って作戦成功させて、明日も思いっきり遊ぶわよ!」
「「「……はいっ!」
音緒さんらしい激励に、全員で応えた。
そう簡単に上手くいかないとか、人生が苦しむように出来てるとかは考えない。ただ自分達が明日もまた今回の合宿のように笑って楽しく過ごせるように、頑張るだけ。
多分仕事とかでも頑張る、戦ってるって人は皆こうなんだろう。
俺には分からないが仕事後の一杯が美味いから、その日の仕事を頑張ったり。
入った給料で何か欲しい物を買いたいから、仕事を毎日頑張ったり。
頑張る時は、頑張った後のことを考えてる人がほとんどだと思う。終わった後を、明日を、その先を。
未来のために頑張るのは当然のことなんだろう。
きっと、頑張る時は未来のことを考えている。未来があるから人は頑張れる、ともいえる。
だから俺も、今こうしている皆(とここにいない師匠)が明日も揃って元気でいられるように、頑張ろう。
「……そろそろ移動を開始するわよ。グループに分かれて、作戦を実行し始めて」
「「「はい」」」
音緒さんの言葉に全員が緊張した面持ちで頷き、学年毎に集まって会話する。
「……じゃあ皆、やるわよ。特別に一年生だけど参加させてもらって、出来ませんでした、じゃカッコつかないんだから」
明音が最初に口を開く。
「……特別だったのはあなた達だけでしょ。私は一年生でもちゃんと参加することになってたわ」
だがアリシアが出鼻を挫かせた。
「……うっさいわよ。言っとくけど今回の特訓であんたに勝てるぐらいにはなったんだから、今の実力なら呼ばれて当然よ」
明音はすっかり仲良くなったアリシアに対して刺々しいがトゲのない口調で言う。
そう。本来なら一年生で呼ばれるのはフランスの国家代表、アリシア。世界で唯一の男姫神使い、俺。俺達のクラスで(アリシアが転入してきたので今は分からないが)一番強い女子の、梨華。この三人だけだったらしい。だが本人の希望もあって、陽菜、明音、美咲の三人は参加したのだった。そのため作戦に参加する十七人の中では断トツと言っていい程に弱く、訓練も三人にとってはキツいモノが多かった。
だがそれを乗り越えてきて、試合をしても国家代表のアリシアや梨華に勝つことがあるくらいにまで強くなってきている。もちろんそれは明確な目標があって、その目標に向かっていく強い意志があって、それ以前に元々の才能があったからだろう。
女将さんは姫神のエンジニアも兼任しているらしく、強化や進化をしてくれた。俺は強化や進化が出来ないのであまり意味はないが、それでもこの一週間の特訓で姫神についての理解を深め、どれとどれを組み合わせればより強力になるかを試したりもしていた。
「……よしっ、姫神を展開するぞ」
俺は言って五人が頷き、それぞれに姫神を展開する。
強化や進化もあって、かなり変わっているのは陽菜と明音だ。陽菜は細部のデザインが変わっているのはほとんどの人がそうなので除くと、二刀流になっているのが一番の変化だろう。あとは背中に生えた烏の翼だろうか。陽菜の欠点の一つでもある機動力。それをカバーするために強化してつけた部品である。明音が一番変わっているのはその武器だ。巨大なランスだったのが、先端が途中で折れたようになっており穴がある。ガンランス、というヤツだ。それ以外にも背中にランスではなく槍を扇状に広げて背負っており、もちろん武器としても使える。防御力のなさは改善されてない、というかしてないが、飛行する能力もつけて、左手に針を射出する籠手も着けている。
俺が展開したのは白虎、朱雀、青龍、玄武の四神に黄龍、麒麟、鳳凰、霊亀を足した八聖獣である。
「……さあ行くわよ、皆!」
全員の準備が整ったのを確認した音緒さんが言って、三つのグループに分かれた十六人が飛翔する。
俺はこの皆を守るために、戦う。そしてまたここに誰一人欠けることなく戻ってきて、明るい笑顔を浮かべて欲しい。
決意を新たにして、作戦決行間近を過ごす。




