相部屋ゲットしよう大会の開催!
三話目です。
どんどん支離滅裂になっている気がしますが、読んでみていただけたらと思います。
「はぁ!」
明音は気合いの声と共に針をいくつも飛ばす。
「っ!」
弥生月大河の相部屋をゲットしよう大会は一回戦を終え、二回戦に突入していた。
明音と対峙しているのは陽菜。奇しくも新旧幼馴染み対決となっていた。
ハリネズミと侍という一見ミスマッチな組み合わせでも、各自の力量によって大分変わってくる。相性で言うなら、この場合は陽菜が不利だった。それは二人の姿を見れば分かると思う。
明音は、白い毛皮のマントのようなものを着ていて、鋼鉄と言える程の強度を持っている。マントで針を飛ばすという攻撃も出来るのだが。ハリネズミは基本的に可愛い動物だが、それをイメージさせない巨大なランス。右手一つで軽々と持っているそれは明音の主力武器だ。基本である針を飛ばすのは、何をしても飛ぶし、何もしなくても飛ぶ。
陽菜は、鎧を纏っている。さすがに顔までは覆ってないが、身体のほぼ全体を覆っている。侍と言えば鎧に刀。鎧とくれば陽菜の主力武器は日本刀で決まりだろう。『プレイヤー』は『カイザー』とは違って姿形が分かりやすい。侍には刀で斬るしか基本攻撃がないので、斬撃の種類が多い。要するに、技の種類だ。
これだけだと分かりづらいと思うので簡単に言うと、威力はあまりないが精密な攻撃が出来る明音と、威力はあるが大きな攻撃しか出来ない陽菜とでは、相性が悪い。
それでも一見互角に見えるのは、陽菜が針を豪快に斬撃で相殺しているからだ。
まあ、明音も主力武器はあるので接近戦という手もあるが。
◇
「やってるな~、あの二人」
俺は陽菜と明音の試合を見て言った。
陽菜が強引に互角にするという、かなり面白い試合だった。
二人は面識がないと思うし、俺としてはどっちが勝っても別にいいんだが、見てる側としては面白い試合だ。
相殺し切れなかった針が地面に落ちてるし、時間の問題だな、言っちゃ悪いが。
「お?」
とか考えてる内に試合が動いた。
片膝を着く陽菜と、何とか立ってる感じの明音。
「実力は拮抗してるんだろうな」
それもかなり。
だが、相性がちょっとな。
勝敗を分けたのは、防御の差だな。大きい攻撃を防げるマントと、小さい隙間のある鎧。その差が勝敗を分けた。
ビーーーーーッと、試合終了のサイレンみたいのが鳴る。
「ふぅ」
「お疲れ」
かなり疲れている様子の明音に言う。
「わっ! ……びっくりしたぁ。何よ、大河」
ボーッとしていたらしい明音は驚いたように言った。
「何って……。お疲れっつっただけだ」
ホントに聞いてなかったのか。
「あっ、そう」
そんなことかという風に言う。……ったく。相変わらずのマイペースさだな。
「む? 大河、その女とは知り合いなのか?」
微妙なタイミングで陽菜が来る。
「ああ。久し振りだな」
「そうだな」
頷く陽菜。
「大河? その負け犬さんと知り合いなの?」
若干怖いんだが。
「あ、ああ」
「へぇ? 幼馴染みのあたしを差し置いて誰と話してるの?」
「おかしなことを言うやつだ。大河の幼馴染みは私だろうに」
「……」
一触即発。怒っている二人に挟まれてしまった俺はとりあえず黙っておこうと思うが。
「大河、どういうことよ」
「説明してもらおうか」
二人の様子を龍虎あいまみえるとしたら、龍と虎に挟まれて睨まれた俺は何と小さな存在か。
「あー、だからな。陽菜が小学校の時の幼馴染みで、明音が中一から中二までの幼馴染みなんだって」
二人と同じクラスになるとはな。
ちなみに、姫神は神らしいから姫神の攻撃で本人が傷つくことはない。さすがに永久にもつわけじゃないのでちょっとずつ壊れていくが。結界みたいなもんだ。
まあそれが姫神のRPGでいう体力になるわけだ。
「なら、このじゃじゃ馬より私と話そうではないか。久し振りの再会だろう」
じゃじゃ馬って……。火に油を注ぐようなこと言うなよ。
「じゃじゃ馬……! へぇ。私に負けるような落武者の癖に?」
明音が怖い笑みを浮かべて言う。
「落武者……! 私が負けたのは偶然だ。次やれば勝てる」
……負け惜しみにしかなってないぞ、陽菜。
「負け惜しみにしか聞こえないわよ? 私に負けたんだから、私よりも弱いってことじゃん」
「くっ」
負けたことは事実なので、陽菜も反論出来ないようだ。
「あんたと戦うにはあと何回勝てばいいの?」
陽菜との口論(?)に勝って上機嫌に訊いてくる。
「ん? 確か、あと四回じゃないか?」
俺抜いて四十人だし。
「四十が二十、二十が十、十が五、五が三、三が二、二が一っと。確かに四回ね」
一から計算しやがって。俺の言うことがそんなに信じられないか。
「まあ、楽しみにしてなさいよ」
言って、明音は去って行く。
「まったく。大河の知り合いにはろくな奴がいないな」
陽菜が呆れて言う。って、それは陽菜も含まれてんじゃないのか? ま、言わないけど。
「……私は含んでないだろうな」
ギロリ。小さな虫なら視線だけで仕留められるかもしれない。ってか、相変わらず鋭いな。
「ま、のんびりとしてようぜ。一時間くらいは掛かるだろうしな」
「……二人でか?」
「まあ、他の人の名前と顔を一致させないといけないしな。歩いて回ろうかと思う」
俺は人の名前とか覚えるの苦手だしな。
「……はぁ。まあ、大河は人の名前を覚えるのが苦手だしな。仕方がないから大目に見てやろう」
うんうんと頷く陽菜。……何で上から目線なんだよ。
「……そりゃどうも」
俺は適当に返事をしておく。無視すると陽菜が怒るからな。
「どこから行く?」
陽菜が訊いてくる。
「ん? 陽菜も来るのか?」
「私が行くと何かまずいことでもあるのか?」
ギロッ。……また睨まれた。ったく。
「別に」
言って、第三アリーナの入り口側の方へ歩いて行く。
「ちょ……、私を置いて行くな」
陽菜が戸惑い気味に言って追いかけてくる。
◇
「へぇ」
俺は感心して一つの試合を見ていた。
「大河?」
近くにいた明音が怪訝そうに訊いてくる。陽菜も疑惑の視線を向けていた。
「面白いな」
ニヤリと笑って言う。
「?」
わけが分からないという風に首を傾げる。
「多分、あの姫神は決勝までくるな」
もう準決勝の試合途中だが、そう言った。
「どっち?」
「あの、『ギャラクシー』の方だ」
試合をしている二人の内片方を指差して言う。
「? あー、“ペルセウス”ね。けど、そんなに強いの?」
明音が不思議そうな顔をして言う。
「ん? そんなに強くはないと思うが、使ってるやつが強いな」
それもかなり。
「何それ? 戦い方を知ってるってこと?」
「あり大抵に言えば、な」
強敵だな。
「姫神の使い方をよく知ってるんだろうな」
まあ、俺とはいい勝負だが。
俺は姫神の根本から叩き込まれたからな。そりゃあ知ってて当然なんだが。
「……私がうまく姫神を使えてないっていう風に聞こえるけど?」
怖い笑みを浮かべて言う明音。
「まあ、言い様によっちゃあそうかもな」
「……!」
怒り心頭の明音。
「ってか、俺でも姫神の全ては理解してないんだよな」
複雑怪奇な構造で。
「姫神のことを師匠さんからめっちゃ叩き込まれたからな。俺はかなり姫神に詳しいんだよ」
苦笑して言う。
「師匠さん?」
明音が怪訝そうに訊いてくる。
「ああ、俺に姫神の使い方と戦い方と構造を教えてくれた人だよ」
懐かしいな。まだ一ヶ月も経ってないが。
春休みで全部叩き込むもんだから、かなり印象に残ってる。
「いつ?」
「春休み」
簡潔に答える。
「えぇっ!? あんな短い期間で姫神を叩き込める人がいるの!?」
明音が微妙な方向に驚いていた。
「あの人はスパルタだからな。まあ、実力が半端ないから……」
俺は苦笑して明音に言う。
「そんなに強いの? じゃあ、有名なんじゃない?」
「ん? まあ、有名っちゃ有名だよな」
曖昧に答えることにした。
「誰?」
明音が言って、その他の女子が詰め寄ってくる。
「え~っと、雨釣木恵っつうんだが……」
観念して言うことにした。
『えぇっ!? あの最強の名を欲しいままにする伝説の!?』
声を揃えて言う。まあ、かなり有名だよな。師匠さんは世界最強だし。
「……弟子はとらないって聞いたけど?」
「まあ、例外なんじゃないか?」
よくわからんが。
「まあ、七月には会えるからいっか」
「七月?」
「知らないの? 雨釣木さんはここに来て指導してくれるのよ」
マジか。
「あの性格悪師匠、真面目に指導出来んの?」
不安だ。
「あの人はスパルタだしな。まあ、実力が半端ないから……」
本気でやったら地球が壊れるんじゃないかって不安になるし。ってか、師匠さんは姫神の深いとこで関わってんじゃねえの?
「大河の何億倍……いや、何兆倍の強さ?」
何兆って……。俺と世界最強の師匠さんを比べるなよ。
「俺の八千倍くらいじゃないか? 師匠さんが言うにはあと八十年修行すれば勝てるってよ」
俺は苦笑して言う。八十年後っつったら九十五歳じゃねえかよ。師匠さんが百一歳だから老化のおかげで勝てるんだろうな。じいさんと婆さんじゃねえか。ってか、師匠さんは百歳まで生きるつもりなのか。
「……大河は早死にするタイプだから無理だな」
陽菜が軽くひどいことを言う。
「……悪かったな」
早死にしそうなタイプで。
「あれ? 雨釣木さんって何歳だっけ?」
明音が首を傾げて言う。
「師匠さん? 二十一歳だけど?」
「えっ? 私達と六歳しか違わないの?」
明音が目を少し見開いて言う。他の皆も同意見のようだ。
「何歳だと思ってたんだよ」
半分呆れて言う。
「三十くらい?」
それはちょっと……。
「確かに師匠さんは年齢をあんま言わなかったが、三十ってことはないぞ。普通に大学に通ってるし」
ちゃんとした大学生として。
「ホント?」
「嘘ついてどうするよ」
「……」
「納得いかないんだったら、師匠さんに直接訊けばいいんじゃないか?」
最悪の場合殺されるかもしれんが。
「い、いいって! そこまでしなくてもいいから! ね?」
焦ったように明音が言って、他に同意を求める。
『う、うん!』
他も勢いよく頷く。……師匠さんの怖さと強さは知られてるしな。一人で軍隊三つを全滅させたとか、物騒な噂ばっかだ(マジの話が九割だが)。
どうでしょうか?
次の話も読んでいただけたらと思います。