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姫神  作者: 星長晶人


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七聖獣の力

 俺は傷付いた会長を抱えて、漆黒のドラゴンを見据える。……こいつに国家代表が二人もやられたっていうんだから、相当強いと見ていいだろう。


「……気をつけて。あいつ、姫神の力を吸収するから。一定の容量があるけど」


 会長は掠れた声で忠告してくる。……吸収はさっき見た。俺の雷光をそれなりに強く放ったのに無傷だったんだからな。


「……分かってます。会長は休んでて下さい」


 俺は言って、慈愛の炎を使い生徒会のメンバーを回復させつつ、そよ風を起こして四人を少し離れた場所に移動させる。モンスターが来ても俺が対処出来る位置だ。ってかもうすぐ他の皆も来るハズなので、問題ない。


 ……何で俺だけ先に行かせたのかは分からない。ってか何で俺が会長を名前で呼んで飛び出さなきゃいけなかったのかがよく分からないんだが。アレン先輩の言うことはよく分からん。


 今の俺は短期決戦用の姫神展開をしている。


 白虎、朱雀、青龍、玄武。加えて鳳凰、麒麟、黄龍。俺が七聖獣と一括りにして展開した七つだ。


 七聖獣は世界最強の師匠とさえ一時は互角に戦えるだけに力を持っている。その分消耗が激しく普段はあまり使わないんだが、会長のピンチだったので仕方がない。それに、切り札はまだある。俺の『アルティメイト』に制限はないんだからな。


 格好もかなり色々詰め込まれた形になっている。


 鳳凰の赤が多いが黒と白と青と黄の五色がある鮮やかな鳥の翼を背に生やし、その下にもう一対、少し小さめの朱色をした鳥の朱雀の翼が生えている。黄金の装束を上に着ていて、襟には白金のフワフワした毛がついている。これは麒麟の部分だ。尻辺りには尻尾も生えていて、これは青い。青龍の部分だ。鱗がビッシリ生えていて尾ビレもある。二の腕には何も纏ってないが肘から手先にかけて白い毛に覆われ、人間の手を元に虎の手となっていた。白虎の部分だ。両目は縦に瞳孔が開き赤くなっていて、目の周りには黄色い鱗が生えている。髪も黄色に変わり、少し長くなっている。黄龍の部分になる。ズボンは淡い緑色となっており、靴もそうだがあまり特別には見えない。だがその分を補っているのか俺の身体には白い蛇が巻きついていた。これらはおそらく玄武の部分だろう。


 これで七聖獣全部の装備が展開された訳だ。一つだけだと結構ゴツいことになる玄武も、大人しくズボンと蛇だけに留まっている。……蛇が大人しいといってもいいのかは分からないが。


「……これでも怒ってるんだ、一撃で決めさせてもらうぞ」


 俺は怒気を孕んだ声音で言い放ち、全身に七聖獣の力を溜める。


 四神または四獣などと呼ばれる白虎、朱雀、青龍、玄武。そして四霊と呼ばれる鳳凰、麒麟、黄龍、そして霊亀。霊亀は結構鈍重なので、素早く駆けつける必要があった今回は外してある。


 いずれも中国の伝説で、他にも四凶や四罪がいる。


「……くらえ。七聖獣嵐豪鬼陣」


 俺は呟くと、全身に溜めていた七聖獣の力を一斉に漆黒のドラゴンに向けて解き放った。


「グオオオオォォォォォォォォ!!」


 漆黒のドラゴンは断末魔を上げる。一切吸収なんてさせずに、ただ七聖獣の力で蹂躙しただけだ。


 白虎の風、朱雀の炎、青龍の雷、玄武の水、麒麟の光、黄龍の土、鳳凰の氷、闇、炎、木など。鳳凰は何かと属性が多いため、重複してるのもあるくらいなんだが、その分強くなった。


 着弾してから、内側から蹂躙するモノもあり、漆黒のドラゴンは内と外から圧倒的な力に蹂躙され、呆気なく倒れた。吸収する暇なんて与えずに、だ。


「……ふぅ」


 俺は無事倒せたので姫神を解く。


「……っ」


 だがガクッと力が抜けて、片膝を着いて座り込んでしまう。……せっかくカッコ良く駆けつけたと思うのに、最後の最後でカッコつかない。まあカッコつけてもあんまり意味はないんだけどな。


「……あ、ありがと、大河君」


 疲労で膝を着いた俺に、会長が躊躇いがちに礼を言ってくる。……会長とは着替えの時の一件で気まずくなっていたんだし、声をかけるのは躊躇するだろう。


「……いえ。無事で何よりです、会長」


「………そういえば、大河君って私のこと名前で呼んだ?」


 俺は少し微笑んで返す。だが会長はあんまり覚えて欲しくないことを覚えていたようだ。……いや、まだだ。聞いてくるってことは確信が持てないんだろう。ならここは白を切れば何とかなるハズだ。


「……いえ。それより皆さんの方は大丈夫ですか? 一応回復させましたけど」


 俺はポーカーフェイスを保って否定し、話を変える。


「……大丈夫よ。ホントにありがとね、大河君」


 会長は何故か少しムッとしたようだが、すぐに微笑んでまた礼を言った。


「……それなら良かったです」


 俺は笑って言い、立ち上がろうとするが思うように足が動かない。


「……無理しなくていいわよ。大河君が回復させてくれたから肩貸せるし。あんなに重ねがけしたら相当キツいだろうから、無理しちゃダメよ」


 そんな俺を見て会長が少し真剣な表情で言ってきた。……あんまり肩を借りるとかは乗り気がしないのは、男としての古典的で変なプライドからだろうか。


「……すみません。頼めますか?」


 だが俺も短時間の戦闘しかしてないが、満身創痍だ。情けないとは思うが仕方ない。もしかしたら無駄に重ねちゃったかもしれないんだから、自業自得だ。


「……しょうがないわね」


 会長はそう言いながらもどこか嬉しそうに俺に近寄ってくる。……もしかしたら頼りにされるのが嬉しいんだろうか。まあ会長なら頼りにされることも多いだろうし、それならピッタリの地位だとは思うが。


 ……でもかなりヤバいな、俺。倦怠感と疲労感が多すぎて辛い。何だか頭がボーッとしてきたような気もする。


「……ほら、肩貸してあげるから。掴まって」


 会長は俺の前に来て言い、手を伸ばしてくる。……肩を貸すなら横がいいんじゃないかということも告げられず、意識が朦朧としてくる。


「……」


 ついには、前に来てくれた会長の手で俺に触れる前に、前へ倒れてしまう。


 むにゅっ。


「……っ!」


 柔らかく程良い弾力のある二つのモノが俺の顔に当たるが、それが何かを思考する暇もなく、意識は遠退いていく。


「……ちょっと、大河君!?」


 会長の慌てたような声が聞こえた気もするが、俺はそのまま意識を失った。

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