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姫神  作者: 星長晶人


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合宿へ

 十六人が揃った時点で、俺と書記の科瀬(しなせ)真央(まお)先輩以外の十四人が円になって中央に俺と科瀬先輩がいる形で並んだ。円に並ぶ理由は魔方陣が円だから。発動する俺と科瀬先輩が中央にいる形がいいので、こんな布陣になった訳だな。


「……合わせて」


「……はい」


 科瀬先輩に言われて、俺は目を瞑り集中する。俺の右手は科瀬先輩の柔らかい左手を握り、二人の魔力で魔方陣を描いている。俺は遠い地なので頭に地図を思い浮かべてあの島に意識を集中させ、遠視で見た光景を思い描いてより鮮明に場所を特定する。すると科瀬先輩の魔力が流れてきて一緒にイメージを連れてくる。目の前に旅館がある景色が頭に浮かんできて、イメージの共有はしっかり出来ているようだ。俺は科瀬先輩に礼を込めて手をギュッと握り、転移のための魔力を込めていく。


「……行く」


「……はい」


 短く言われて頷き、空間転移を発動させた。二人で声を揃えて「テレポート」を唱える。


「「「っ!」」」


 空間転移は見事に成功し、目の前には旅館があり、距離は数十メートルで旅館の前にある土剥き出しの地面内に収まっていた。


「じゃあ荷物置いて着替えてきて。すぐに特訓を開始するから」


 会長は言って、真っ先に旅館に向かっていく。部屋割りも聞いてないが、俺は多分一人部屋だと思うし(そうでなきゃ困る)、俺も皆に続いて旅館に向かおうとすると、右袖を掴まれて引き止められた。


「……科瀬先輩?」


 そこにはさっきまで手を繋いで協力していた科瀬先輩がいた。姫神も近接タイプじゃなさそうだし荷物が重いから持ってくれということだろうか、と首を傾げる。


「……『せ』が二つ重なるから名前で呼んで」

? 

 科瀬先輩はジッと俺を見つめて言った。……まさかそれだけで引き止めたのか? いやきっとそうじゃないんだろう。俺が先輩をそう呼んだから言っただけで。


「……真央先輩?」


「……ん」


 俺が戸惑いながらそう呼ぶと、少し満足そうに頷いて去っていく。……それだけだったのか。


 俺は真央先輩に荷物持ちましょうかと声をかけようとするが、その前に荷物が浮遊して真央先輩についていった。……魔法を発動させて、一人だけ楽しているようだ。ってか俺も真似しようかな。


 呆れて思い、真似しようとしてから、これから特訓が始まるのだと自分に言い聞かせて出来るだけ消耗しないようにと思い直し、自分の手で運ぶようにした。


 受付には女将さんらしき妙齢の女性がいて、苦笑しながら「姫神学園には女生徒しかいなかったのでお手洗いは従業員用の一階奥にある場所をお使い下さい。弥生月大河様は三◯五号室になります」と言ってくれたので、トイレは一階の奥、従業員用のモノを使い、部屋が四階にあることも分かった。どうやらこの旅館では五階建ての一階が大浴場や広間になっていて、二階から一、五が四ではなく五になっているようだ。旅館内は高級感に溢れ、実際に自腹で泊まるとなると相当の金額が飛んでいくのではないかと思われる。


 エレベーターで四階まで上がり、三◯五号室を探す。隣の三◯四号室には名札に会長の名前が書いてあったので、もしかしたら何かあった時のために隣にしてくれたのかもしれない。もう一つの隣には二つ名前が書いてあったので、俺だけ男子で一人部屋にするので、十六人だと割り切れなくて会長が一人になっているのかもしれないと思った。


 キーを受け取ったので俺は自分の名前が書いてある名札のある三◯五号室の鍵を開けて、中に入っていく。


「……おぉ、広いな」


 ホテルではないのでベッドがある訳ではなかったが、一人部屋にしてはかなり広く和室になっていた。底をタオルで拭いて生徒会室に履いてきていた靴を脱ぎ、木製の入り口に足を踏み入れる。中の床は畳になっていて、机とテレビが置いてある程度。窓側に木製の床があってその前に障子の扉があり、そこには机と一対の椅子が置いてある。広々とした落ち着きのある空間。結構好みだった。


 俺はのんびりしていられないことを思い出し、荷物を適当に端に置いて左側で着替え始める。姫神学園の生徒に支給される体操着のようなモノを着るには全裸になる必要があるので、一人部屋は有り難い。袖は半袖シャツ程度で下の長さは膝までいかない。身体にピッチリくるタイプなので同世代の女子を見るのは気恥ずかしい思いに駆られるが、今更どうしようもない。最初は身体のラインが出るこれを恥ずかしがっていた女子も多かったのに、今更どうしようもないと思ったのだろう、もうほとんどが恥ずかしがらずに近付くまでになった。……こっちはまだ全然慣れてないんだけどな。


 伸縮性が高く首元も覆うデザインだがキツく締めつけてくる訳ではないのでかなり高価なモノだと思われる。


「……じゃーん! 実は相部屋でし……た?」


 俺が上を脱ぎ下を脱いで全裸になると、バン! と勢いよく開かないと思っていた襖が開けられて、すでに着替えた会長が姿を現す。そして俺が裸だったことに気付いたんだろう、頬を染めてだんだんと下に視線が動く。


「……っ」


 そこに視線が向けられ、俺は唖然としていたがようやく我に返るがもう遅い。


「…………きゃああああぁぁぁぁぁぁ!」


 普段の余裕ある態度はどこへいったのか、会長は顔を真っ赤にして襖をバタン! と閉めながら女の子らしい悲鳴を上げた。


 ……そりゃ女子校にいる人が男子の全裸を見たらこうなるよな。


 俺は会長の取り乱しっぷりに逆に冷静になり、しかも全部、とつけ加えて苦笑し、急いで着替えて外に向かった。俺を見ると顔を真っ赤にして余所余所しくなる会長にほとぼりが冷めたら謝ろうかと思いつつ、特訓が始まる。

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