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姫神  作者: 星長晶人


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20/42

大切なのは

メリークリスマス


という訳で書き上がってるのをいくつか更新します

「……私達が上手くいかない理由って何なのよ?」


 師匠が去った後、明音が不躾に聞いてきた。他も明音程ではないが気になっているようだ。


「……じゃあ聞くけど、何で上手くいってないと思う?」


 一回目の失敗から全員が、どう動けばいいかを考えるようにはなった。だがそれだけでは師匠に攻撃は当てられない。


 世界最強の師匠に攻撃を当てるには、見た目からは想像も出来ないくらいの際どい攻防を繰り返す必要がある。


 フェイントの一つ一つ。気合いの入れ様。攻撃の一つ一つ。フォーメーション。


 これら全てが伏線となってやっと、攻撃が当たる。


 もちろんそれを意図して出来るヤツなんてほとんどいない。師匠だって最強さの一割は天性の勘、つまりは反射神経で出来ているからだ。


 戦闘の全てを読んで攻撃を当てるなんて芸当は出来ない。残る九割は努力と経験であるが、皆が師匠の経験に追いつくには長い年月が必要で、その間、常に最前線で強いヤツと戦い続ける必要がある。


 それを補うために、仲間がいる。


 師匠だって手足四本頭一つ、心臓一個の人間だ。数的有利は皆にある。


 師匠は一騎当千以上の実力を持っているが、一回攻撃を当てるくらいなら出来なくはない。


 それが出来ないのは皆の方に原因があるのだが。


「……何でって、連携が取れてないから、とか?」


 浅島さんが首を傾げながら言った。


「……思い通りにいかないから」


 続いて梨華がポツリと言った。


「……まあ、それもあるよな」


 俺は二人に頷く。……確かにそれもある。それもあるんだが、それが一番の原因じゃない。それは一番の原因から派生した要因だ。


「じゃあ何で連携が取れなくて、思い通りにいかないんだと思う?」


 俺はさらに質問を重ねる。……どんどん気付きに近付かせないと、埒が明かない。今のままでは一生かかっても師匠に攻撃を当てるなんてことは出来ないだろう。師匠は上手いからな。誰かが極端に突出していたところで、上手く誘導して上手くいかないように出来る。


「……作戦とか、話し合ってないからか?」


 陽菜がかなり惜しい答えを出す。


「……でもそれくらいなら自分で考えて動けばだんだん作戦が出来てくるもんでしょ?」


 リーヴェンハートさんは惜しいところにも納得出来てないようだ。


「……自分で考えて動いてるとは思うぞ? でも、それだけじゃダメなんだ。じゃあ聞くが、さっきの――最後の戦いで、何を狙った?」


 俺はリーヴェンハートさんのまるで他が考えて動いてないからだというような物言いに対して言い返し、質問を加える。俺は一人ずつ指名して答えを聞いていく。


 最後の戦いの流れはこうだ。


 まず、リーヴェンハートさんが正面から突っ込んでいく。その後に続いて陽菜と浅島さんが並んで突っ込んでいき、左右から波状攻撃を仕掛けようとしたのか、二人はリーヴェンハートさんを避けるように左右に分かれる。その後ろからは明音と梨華の二人が突っ込んでいた。師匠はリーヴェンハートさんを自分左から突っ込んでくる陽菜の方に弾き、二人を当てて転ばせると浅島さんと一対一で戦う。浅島さんは見たところ自分から攻撃することはなく、何とか防御に徹して師匠の気を引こうと思っているらしく、リーヴェンハートさんのように簡単に弾かれることも体勢を崩されることもなかった。そうして浅島さんが師匠の攻撃に耐えている内に後続の二人が到着し、梨華は素早さを活かし背後に回ろうとする。しかし進行の右方向は二人が転んでいていけないため浅島さんのいる左を大きく回って攻撃しようとする。だが師匠は技を使って浅島さんごと明音を薙ぎ払って起き上がろうとしている二人の上に飛ばす。そのため梨華は師匠と一対一でやり合わなければならず、師匠の猛攻にあえなく撃沈。結果、最初のように五人が折り重なる形で倒れているところに師匠の技をくらって全員倒された。


 ……こうしてみるとかなり酷いのがよく分かる。


「……私は、受け流しや反撃が出来るから正面で攻撃を捌こうと思っていた。だがリーヴェンハート……さんの方が速いため遅れて右の攻撃を引き受けようと思った」


「……何それ。私が悪いって言うの?」


「……そうは言ってない。速さは私自身にも問題があるからな」


 陽菜は上手く言えないみたいだが、一応リーヴェンハートさんに遠回しだが言いたいことは言えたみたいだ。


「……私は鎧じゃないから三人より速くいけるけど、正面から槍一本で雨吊木さんの攻撃を受けられるとは思ってないから隙を見て後ろから突っ込もうと思ったんだけど。その前に壁が崩されたから見え見えの状態で突っ込んで、結局はやられたのよ」


「……私が悪いって言いたいの?」


「……そうよ。真っ先に突っ込んでいなされて、考えてないのはあんたの方じゃないの?」


「っ……!」


 明音はずけずけと言いたいことを言うタイプだからな。リーヴェンハートさんに対して言いたいことを言っていた。……関係は悪化しそうだが。


「……私は正面からやり合えない。だから防御してくれてる内に攻撃しようと思った。速さでは雨吊木様にも負けないと思うから」


 梨華は言った。誰に言う訳でもなく、全員に。攻撃力より速度を優先出来るスタイルだからこそ、それを伝えなければならない。


「……私はその、攻撃より防御の方が得意だから、攻撃を引き受けられれば誰かが攻撃出来るかなって思って。これは攻撃というより防御の方が使い勝手のいいモノだから防御に専念しようかと思って」


 浅島さんが言う。左手にある蛇髪の女の生首の石像を掲げて。……確かあれには石化の能力が備わっているハズなんだが、ホントに防御向きなんだろうか。俺も石化能力は使えるが、あれはどう考えても攻撃に繋げる能力だろう。まあ、浅島さんにしか分からない使い方があるんだろうが。


「……私は盾と剣で雨吊木さんの攻撃が受けられるし、この中では実力が一番あると思ってるから正面を受け持とうと思ったんだけど」


 リーヴェンハートさんも皆に続いて控えめに言う。


「……で、結果だが。リーヴェンハートさんは受け切れずに陽菜の邪魔をし、浅井さんが防御に専念してる間に梨華が背後に回ろうとしたら右には二人が転んでいて邪魔で浅島さんの後ろから大回りして、浅井さんが左側にいたため丸見えの明音ごと薙ぎ払われて、それが陽菜の武者鎧の重さで起き上がれない二人の上に乗っかり、梨華一人で師匠の攻撃に耐えなくてはならず、あえなく撃沈されもたつく四人の上に投げられ大技で倒された、と」


「「「……」」」


 俺の言い方が酷いせいか、五人は俺をジト目で見てきた。


「……つまり現状から言えば互いが互いの邪魔になってる訳だよな?」


 俺はそれに構わず聞く。すると五人が気まずそうに視線を逸らした。


「……何で上手くいかないか、何で連携が取れないか、何で互いが邪魔になるか。答えは一つだ。まあこれ以上は師匠に言われたことに反するから言えないが。――お前達さ、互いの得手不得手とか姫神について何も知らないのに連携出来ると思ってんの?」


 そして俺はついに、聞いた。……いやだって、自分の中で思ってるだけじゃ相手に伝わらないのは当然で、そこに連携なんて生まれるハズがない。


「「「……っ」」」


 俺に言われてやっと、五人はハッとしたような顔をする。……ようやく分かってくれたみたいだな。


「……じゃ、俺はこれで。あとはお前達がやることだからな」


 俺はそう言って座り込んでいたのを立ち上がり、師匠のいなくなった方へ歩いていった。

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