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姫神  作者: 星長晶人
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世界初の男子

えっと、是非読んで頂けたらと思います。

「んー……」


 俺は大きく伸びをした。


 どうしてこうなったんだか。


 ため息をつきたい気分だ。


『……』


 沈黙。


「……」


 俺も、この雰囲気に耐えられず黙ってしまう。


 何でこんな雰囲気かって? そんなの決まってんだろ。


「では、SHRを始めます」


 担任かどうかは知らないが、女性の先生が言う。


『…………』


 しかし、空気は変わらない。


「ショ、SHRと言っても大して連絡はありません。入学式では臨機応変に行動しましょう。えっと、これでSHRを終わります」


 先生が戸惑い気味に言う。


 ちょっと可哀想に思えてきたが、いかんせんこの沈黙を破るつもりはない。


 ああ。何でこんな雰囲気なのかだっけ。


 それは、俺以外が全員女子だからだ。


 ここは姫神とか言うよく分からん力の使い方を教わったりするところだ。


 まあ、『姫』の『神』だか『神』の『姫』だかは知らないが、とりあえず姫なんだから女性しか使えない力だということは言わずとも分かるだろう。


 実際に女性しか使えないわけなんだが、俺は普通に男だ。


 俺が何でここに入学させられたのかは、多分分かると思う。


 俺が、姫神の力を使えるからだ。


 何でかは不明。種類、系統は今までにないものらしい。


 んで、俺はここにいるわけだ。


 ……かなりめんどいけどな。



 入学式の真っ最中。


「……」


 入学式にも関わらず、視線が俺に向けられているのが分かる。……だって、前にいる生徒もこっち見てるし。


 まあ、珍獣扱いも時が解決してくれるだろう。


「ふあぁ」


 思わず欠伸が出た。……さすがにきついな。眠くなってくる。


 パシャッ。


「ん?」


 何かシャッター音が聞こえなかった?


 ……まあいいか。良くないけど。多分時が解決してくれるだろう。


 それはさすがにないか。


「生徒会長挨拶」


 後半で生徒会長の挨拶があった。


 何故このタイミングなのかは分からないが、とにかく終わりに近い。


 いいから早く終わって欲しいが。


「え~っと、一応は今年から共学ということで、まあ、弥生月大河やよいづきたいがくんと仲良くしましょう」


 生徒会長が言う。


 名指しかよ。まあ、俺しかいないんだから普通に分かるか。


 そのせいで更に注目を浴びるが。


「……はぁ」


 小さくため息をついた。


 この先、どうなるんかね。



 戻って教室。


「じゃ、席着いてー」


 お気楽な声が言う。このクラスの担任らしい。


 クラスメイトの皆は大人しく席に着いた。


「このクラスの担任の篠原亜紀しのはらあきよ。よろしくー」


 どこまでも気楽に言う。


 そういえば、さっきの先生とは違うな。ただの案内役だったのか。


「んじゃ、とりあえず自己紹介しよっか」


 ホント、どこまでも気楽だな。


「じゃあ、とりあえず弥生月大河くんからしようか」


「何で俺なんですか?」


 出席番号順だったら最後、席順なら中間くらいなのに。


「だって、一番最初に聞きたいじゃん」


 そんな理由かよ。


「……はぁ。まあ、俺からやればいいんですね」


「そうよ。よろしくー」


 軽く言う。


「えっと、弥生月大河だ。よろしく」


『…………』


 あれ? 何でまだ終わってないよね? 何話してくれるのかな? 的な目で見られてんの?


 そんな期待してもらっても言うことがないんだが。


「以上だ」


 ガタガタッ。


 クラスメイトが一斉に椅子から落ちた。ったく。俺に何を期待してるんだか。


「弥生月くんは、どんな姫神の力なの?」


 先生がフォローをしてくれる。


「ん? 確か、カイザーと同じような能力だったな」


『うんうん』


「神話の存在を自分に取り込む……だったかな」


『ドラゴンとか?』


 全員がハモって言う。まあ、神話っていったらドラゴンだよな。


「まあな。他にも色々あって、使えるから」


『え? 一つじゃないの?』


 全員がきょとんとしていた。


「ああ。ドラゴンはもちろん、グリフォンやペガサスもそうだ」


『……ってことは――』


 ん?


『王子様も!?』


 そこかよ。


「あ、ああ。王子様っつうか、勇者の方が多いけど」


『……』


 奇妙な沈黙。


「じゃあ、ピンチの時に助けてくれるの!?」


「まあ、多分な」


 女子は守れるなら守りたいし。


「じゃあ、助けた人と結婚するの!?」


 何だよ、それ。


「それは自分で決めるだろ」


『え~』


 何故そこでブーイング?


「まあ、弥生月くんへの質問タイムは終わり」


 担任の先生が言う。……ふぅ。助かったような気がする。


「今日の授業全部使っていいから」


 全然助かってねえじゃん。むしろ、状況が悪化してるし。


「賛成の人ー」


 いやいや。学生の本業は学習ですよ? 何で俺への質問タイムが授業全部使っていいんだよ。まあ、賛成する人なんていないだろ。


『は―い』


 ーーと思ったら俺以外の全員、つまり女子全員が賛成する。幼馴染みの暁陽菜あかつきようなも、だ。


 陽菜はそういうことには首を突っ込まないのだが、どういう心境の変化だろう。


 何故か、冷静そうな人も賛成してるし。


 ……そこはキャラを合わせて欲しいなぁ。


 俺の幼馴染みである暁陽菜は、黒髪ポニーテールで腰あたりまで伸ばしている。ポニーテールをほどくともっと長いんだろうな。


 俺が小学一年の時から、小学六年までの幼馴染みだ。


「と、いうわけで、弥生月くんオッケー?」


 先生が訊いてくる。


「まあ、授業の予定が大丈夫なら」


「そう? 今日の授業は全部弥生月くんへの質問タイムにしてあるから」


 先生がさらりと言う。


「…………」


 最初から決まってたのかよ。俺の意志はどこにいった?


「具体的には、どんな質問をされるんですか?」


 俺は気になって訊いてみる。入学初日で授業があるこの私立姫神学園。つうことで、五時間授業があり、そんなに質問で使うのか疑問に思うところだ。


「興味があること」


 ……そりゃそうでしょ。


「そんなんで五時間ぐらい続きますか?」


「う~ん。まあ、交流会も兼ねて、ね」


 それなら五時間ぐらい使うか。


「まあ、それならいいですけど」


 仕方なく妥協する。


「と、いうわけで、午後は『弥生月大河の相部屋をゲットしよう大会』を開催しまーす」


『わーーーーーーー!!!!』


「はあ?」


 女子が言うのと俺が言うのが重なる。


 何言ってんだよ。女子だって嫌だろ、そんなの。


「先生ー。何で競うんですか?」


 一人の女子が言った。おおう? やる気満々なのか?


「ん? ここは何の学園でしょう?」


 先生が意味深に言う。


 ……そこまで言われたら分かるけどさ。私立姫神学園だし。


『姫神!?』


 女子が声を揃えて言う。


「もちろん」


 先生が当たり前のように頷く。


「このクラスだけですか?」


 一人の女子が言う。


「そうよ。三年生も一緒がいい?」


 先生が意地悪く言う。


「いえ! このクラスだけで十分です!」


 少し焦ったように言う。


 まあ、三年生が入ったら勝てないだろうけどさ。負けてもいいじゃん。俺と相部屋とか、嫌だろうな。


「で、ずっとそれでもいいけど、負けたら暇だから弥生月くんと雑談でもしてていいよ」


 先生が言う。


『本当ですか!?』


「あっ。でも、この学園に弥生月くんの彼女がいなければの話だけど」


「…………(じーーーー)」


 ん?


「いませんけど……」


 とりあえず、答えることにした。


『っし』


 何故か女子がガッツポーズをしていた。そんなに俺に彼女がいないことが嬉しいか? かなりひどいな。


「じゃあ、組み合わせを決めるから」


 早速進行していった。


「俺はどうすれば?」


 一応訊いておく。


「う~ん。じゃあ、参加する?」


 マジっすか?


「そうなると、組み合わせ、どうしよっか」


 ちょっと考えている先生。


「じゃあ、相部屋に決定した人と戦おっか」


 それって、このクラスで一番強い人とやるってことか?


「ついでに、勝った方がこのクラスの学級委員みたいなことをやってもらうから」


 さりげに重大なことを言う先生。って、俺の確率は二分の一かよ。


『(絶対に勝つ)』


 ちょっとはやる気出さないとなぁ。



 というわけで、クラス内弥生月大河の相部屋をゲットしよう大会兼学級委員決定戦が開催された。


「ーーーーーー」


 歓声が響く。第三アリーナで行われている。


「ねえねえ、弥生月くんは自分の能力をどう思ってるの?」


 俺はこんな感じで女子の質問攻めに遭っていた。


「別に。いいとも悪いとも思ってないな」


 一応真面目に答えておく。


「この学園に知り合いっている?」


 この学園に?


「う~ん。まあ、四、五人ってとこかな」


「それは多い方? 少ない方?」


「女子の知り合いなら他にもいるが、やっぱ少ない方かな」


 女子の知り合いってあんまりいないんだよな。


「このクラスには?」


 ん?


「暁陽菜と、今戦ってる恵ヶ原明音けいがはらあかねだな」


 陽菜だけだと思っていたが、二人だな。


「あの二人かぁ。手強いなぁ」


 あの二人ってそんなに強いのか?


「まあ、何とかなるんじゃないのか?」


 一応そんなことを言う。


 陽菜は『プレイヤー』の“侍”で、明音は『カイザー』の“ハリネズミ”だった気がする。二人共にぴったりな能力だと思う。


「そういえば、弥生月くんの能力名って何?」


 うん?


「能力名? 何だっけ?」


 考える。そんなのあったっけ?


「ないの?」


「……あっ。『アルティメイト』だ」


 思い出した。


「究極?」


 まあ、そういう意味だよな。


「んで、『アルティメイト』の一つ、“レジェンド”っつったかな」


「他にもあるの?」


「ん? あー……。言っちゃいけないんだろうが、どうしよっか」


『誰にも言わないので教えて下さい!』


 そう言われても……。


「……ま、いっか。俺以外の『アルティメイト』は存在するし、俺より強い能力もあるが、俺の力において、力は全く意味をなさないからな。だから、『究極の伝説』っつう大それた名称をつけるんだよ」


「力が意味をなさない?」


「まあ、見た方が分かりやすいからな」


 肩を竦めて言う。


「……力が意味をなさないってのは言い過ぎだな。結局は同じ姫神の使い手なんだし」


 意味深なことを言っといて自分で否定する。


「まあ、俺の力は説明するより目で見た方が分かりやすいから。最後の試合は見てくれると嬉しいな」


 少し笑って言う。


「……そう。じゃあ、次の質問いくね?」


 早いな、おい。そして、まだ続くのか。

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