早朝の秋原梨華
二ヶ月振りくらいです
あまり話は進みません
「……んぅ」
俺の上で寝ている梨華が艶かしい声を漏らす。……起きてくれないかな。
「……えへへへへ」
俺の右腕を枕にして身体に寄り添うように寝ているリーヴェンハートさんがだらしない笑顔を浮かべて口端から涎を垂らしていた。……だらしないな。通常状態だとしっかりしているように見えるのに。
「……すぅ」
俺の左腕を抱えるようにして静かに寝息を立てている師匠はやはり全裸なので目に毒だ。……やっぱり慣れない。師匠は男勝りだが、確かに美人でスタイルがいい。目のやり場に困るし、二の腕に柔らかいモノが当たっているので今も困っている。
「……はぁ」
俺は一人溜め息をつく。
珍しく梨華が起きるよりも早かったのは、三人に囲まれて寝苦しかったからかもしれない。
「……どうしようか」
起きたはいいが、まだ薄暗い時間帯だ。まだ寝ていたいが、こんな状況から寝られる程俺の神経は図太くない。気にし始めたら気になって仕方がないからな。
……四時か。
俺は首を回して枕下にあるデジタル時計を見やると、四時五十七分を示していた。……四時っていうよりは五時だな。
五時か。そういえば、梨華はいつもこれくらいの時間に起きるとか言ってたな。師匠は修行中は四時半とかだったが、基本ずぼらな人なので通常は遅い。放っておいたら昼まで寝ているぐらいだ。
「……んっ」
ピクッと梨華が反応し、顔を上げてコシコシと目を擦る。かなり眠そうだが、凄いな。丁度五時になった時に目を覚ましたぞ。
「……」
梨華はまだ寝惚けているのか、ボーッとして、俺を――詳しく言えば俺の胸元辺りを見ている。俺が起きていることにはまだ気付いていないようだ。
「……ぅ」
梨華はボーッと、寝惚けたままの瞳でじっとしていたが、急に俺の寝巻きを剥がし始めた。
俺の寝巻きは基本ジャージだ。黒か青。今日は黒のジャージを着ているのだが、梨華は上のジャージのチャックを外し、シャツを着ていない俺の上半身を露わにさせる。
「……っ」
梨華が俺の腹に馬乗りになり、ゆっくり倒れこんでくる――その途中でバッチリと、目が合ってしまった。
「……えーっと……」
「……」
「……何て言うかその……」
「…………」
俺が何か弁明しようとしていると、梨華はボッと首まで真っ赤にし、コテリと俺の方に倒れた。
「……だ、大丈夫か?」
両腕が塞がれているので起こしたり頭を撫でたりは出来ないが、顔だけを上げて聞く。
「……もう死にたい」
「何で!?」
梨華が急にネガティブなことを言い出したので、慌ててツッコんだ。
「……べ、別に気にしてないからな?」
俺はとりあえず恥ずかしいのかと思い言う。
「……ホント?」
梨華は僅かに顔を上げ、目を潤ませて聞いてくる。
「……あ、ああ」
別に実害がある訳じゃないからな。冬で脱がされたらさすがに風邪引きそうだから止めて欲しいが。
「……ん。じゃあこれからもいい?」
……それはこれからも服を脱がすということだろうか。ってか今までもされてたんだろうか。なら俺は何で起きなかったんだろうか。俺ってそんなに熟睡してたのか。
「……いつもやってるのか?」
俺は寸前まで聞くのが躊躇われたが、聞いてみた。
「……ん」
梨華は顔を真っ赤にしてこくん、と小さく頷いた。
「……何で?」
さらに聞くのが憚れるが、聞いた。
「……写真の合成疑ってた」
梨華はそっぽを向いて言う。……ほう。なるほどな、梨華もファンクラブ会員らしいし、俺の写真が本物かどうか確かめていたと。
……師匠、パソコンとか全然使えない機械音痴だから無理だとは思うけど。
「……で、合成なのか?」
俺としてそっちの方が有り難いが、師匠の詐欺を疑われるので合成じゃない方がいいという微妙さだが、聞いた。
「……合成じゃない。ちゃんと腹筋割れてる」
答えつつ、梨華は俺の腹を指でなぞった。少しゾクリとするが、顔には出さない。
「……そこなのか?」
梨華は俺が腹筋割れてないと思っていたらしい。……いや、確かに女性主流のスポーツである姫神が流行ってはいるが、別に男性が身体を鍛えていない訳じゃない。特に俺は姫神が出来るので身体を鍛えている。元々身体を動かす他のスポーツも嫌いではなかったのでやっていたし、春休み師匠に鍛えられてさらに筋力はアップしてると思う。俺の姫神は肉体にかかる負担が大きいからな。特に二重に展開するヤツとか。
「……ん」
梨華はこくんと頷く。
「……いや、俺だって姫神やってるんだから、身体ぐらい鍛えてるって」
「……仕方ない。私、男の人の身体見たことない。女の人はあんまり腹筋割れてないから」
梨華はそう言ってキュッと抱き着いてくる。……俺は脱がされて腹だけが出ているので、梨華の柔らかな膨らみが確かに感じて少しドキッとする。
「……退かないのか?」
「……ん。日課は変えないから日課」
……それはそうなんだが。
俺が聞くと梨華は無表情に答え、目を閉じる。……まさか、寝る気じゃないだろうな?
「……そっか」
俺は何かもう面倒になって、目を閉じる。
「……ん」
俺は久し振りに早起きしたせいか眠くなってきたので、再び寝ることにする。
……こんな状況が長く続いたら、さすがに身が持たない。
俺は何とかしないと、と強く思いつつ、睡魔だけに集中して眠ることにする。




