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姫神  作者: 星長晶人


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16/42

三つ巴

二ヶ月振りくらいです

 ……。

 …………。


 ……ん~。


 ……悩むなぁ~。


 俺は寮の自室で、首を百八十度になるんじゃないかってぐらいに捻って悩んでいた。


「……こっち」


 梨華が何故か妙にはだけさせたパジャマを着込み、ベッドの上で手招きをする。羞恥からか頬が赤いため、かなり色っぽい。


「……早く来い」


 師匠が全裸に布団を被っただけの格好で手招きをしてくる。仄かな明かりに照らされた師匠の身体は妙に艶っぽい。


「……来て、欲しいな」


 アーヴェンハートさんが男子のチビキャラ(師匠の話によると俺のファンクラブ会員限定の)パジャマを来て胸元を大胆に開け惜しげなく豊満な胸の谷間を晒しながら、羞恥か頬を艶っぽく赤らめて上目遣いを向けてくる。


 ……三人の美女美少女にベッドに誘われるようなシチュエーションになってしまっていた。


 昨日から俺を含めたこの四人で寝ている訳だが、色々と問題が起こった。


 昨日はほぼ不可抗力だったのでまだマシだが、今日は違う。


 今日の朝師匠とリーヴェンハートさんについては説明があったが、それから何故俺と同じ部屋なのかを俺を含めて聞かれた。


 ……いや、俺は関与してないんだが。


 まあそれは兎も角何で俺と同じ部屋にいるのかと根掘り葉掘り聞かれ、


「弟子と一緒に寝るのは師匠の特権だ」


 と師匠が爆弾を投下し、


「大河様と一緒にいたくて何が悪いのよ!」


 とリーヴェンハートさんがこの日最大のファンクラブ会員的暴露をし、何とか他を押し切った感じになった。


 ……まず師匠について言いたい。


 言葉を選べ、と。


 皆は何で俺と同じ部屋なのかを聞いているんだから、弟子と一緒に過ごす、くらいでいいだろうに。わざわざ寝る、なんていう表現を使うから急に親近感持たれて質問攻めに遭うんだよ。


 寝るって一緒のベッドに入る的な? みたいな質問が来ても寝食を共にする的な意味だ、ってはっきり言えばいいのに、あそこで照れるから師匠が友人にコイバナ相談したら周囲に知られていて根掘り葉掘り聞かれる女子みたいば感じになっちゃってるんだよ。


 世界最強の姫神使いってことで結構憧れや尊敬が強かったのに、普通の女子大生みたいになってるし。まあそれでもいいんだろうけど。


 そしてリーヴェンハートさんに言いたい。


 隠すのか隠さないのかはっきりしろ、と。


 ファンクラブ会員なら会員でいいから、それを隠したいのかそれともアピールしたいのかがよく分からない。


 今朝ファンクラブ会員番号一だということを堂々と宣言したにも関わらず、何かと聞かれるとはぐらかすという。だがどうやっても本性(?)がバレているので質問攻めに遭ってボロが出る。


 だから「じゃあ弥生月君と別の部屋でいいんじゃない?」とか言われてそんなことを言っちゃうんだよ。


 中途半端に隠そうとするから。


 ……まあ俺もぐいぐい来られなくて安心してるから、悪いことばっかりじゃないんだが。


 梨華はそこまで色々言われなかったが、言われた時は「……これは私が正当に手に入れた権利」と言って両断していた。


 さすがにそう言われては勝てなかった自分を恨むしかないので、梨華についてはあまり聞かれない。


 ……そして他の皆を押し切った三人は、ベッドをもう一つ入れ、ギリギリなので三つ隙間なくくっつけると、一つに一人が寝そべり俺の寝る場所がねえなぁ、と思っていたらこんな状況になってしまった。


「……早く」


「早くしろよ」


「……来て?」


 三人は催促してくる。……いやぁ、どうしようか?


 まさかベッドを三つ共取られるとは……。いっそ俺が別の部屋で、しかも個室なら文句ないんじゃないだろうか? そもそも男と女が同じ部屋にいること自体が間違いなんだよ。


 まあとりあえず俺もベッドで寝たいし、一人ずつ検討してみよう。


 まず、師匠は無理。春休み修行をつけてもらったので一緒に寝泊りしていたんだが、さすがに慣れることもなくしかも早寝早起きが基本だったので、師匠より早く寝て師匠より遅く起きることがほとんどだったので、特に意識することもなかったが、今回は完全にアウトだろ。


 リーヴェンハートさんは色々と不安定で危ういので止めておく。


 梨華は……判断しにくいな。師匠の熱烈なファンかと思えばファンクラブに入ってるし。あれだな、師匠がやってるから入ったとかかもしれないな。だけどこんな危うい状況になるのもどうかと思うし……。


「……やっぱ俺床で寝るわ」


 俺はもうベッドを諦めて床で寝ることにする。


「……私のベッドで寝ればいい。迷うことなんてない」


 梨華が少し唇を尖らせて言う。……そこで迷ってるんだよ。


「……そうだぞ、大河。私とお前の仲だろう」


 師匠は今にも布団が剥がれそうなくらい上体を起こして不満そうに睨んでくる。……俺と師匠の仲って弟子とその師匠だし。裸の付き合いが出来る程親しい訳じゃないし。


「……大河様。私なら初回限定版の大河様抱き枕といつも一緒に寝てるので大丈夫です!」


 リーヴェンハートさんが何やら熱弁してくる。……それはそれでヤバい気がするのは俺だけか?


「……いや、別にいいから」


 俺はそう言って床にごろん、と寝転がる。……絨毯が敷いてあるとはいえ固いな。まあこれくらいは我慢するか。


「……そういうことなら私が布団になる」


 床で寝転がった俺を覗き込むようにしてベッドから梨華が顔を出した。


「ちょっ」


 俺が止める暇もなく、梨香は俺の上に覆い被さるようにして下りてきた。


「……これで温かい」


 梨華はいつもの無表情で俺を見上げてくる。……理性が危なくなるから止めて欲しいんだが。


「……はぁ。分かったから。梨華が床で寝るなら俺もベッドで寝るから。な?」


「……うん、それでいい」


 俺がため息をついて諦めると、梨華はすんなり離れてくれた。……さすがに女子を床で寝かせる訳にはいかないからな。最悪、皆が寝てから床とか椅子に移ればいいだろう。


「……こっち」


 奥から梨華、師匠、リーヴェンハートさんの順番で並んでいるんだが、梨華は自分の左、つまりは一番端に俺を招いた。


「……おい。そこはせめて私の隣だろう」


 それを咎めたのは師匠だ。


「……私が大河様と隣じゃないなんて有り得ないでしょ」


 さらに不満そうなのはリーヴェンハートさんだ。……誰か助けて。何かよく分からないけど取り合いになってるんだけど。


「……しょうがない。じゃあ真ん中で」


 少し目を細めて梨華は妥協案を出す。


 ……結果、これが採用された。


 俺は真ん中のベッドに横になり、さすがに師匠だけは遠ざける必要があったので梨華とリーヴェンハートさんを隣にして寝た。


 ……だが朝起きた時には梨華が俺の上に乗っていて、左腕を抱えて全裸で眠る師匠がいて、俺の腕を枕にして右から抱き着くように寝ているリーヴェンハートさんがいて、昨夜のゴタゴタが何の意味もないことが判明した。


 ……俺は、どうしたらいいんだろうか。


 頭の痛い毎日だ。

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