[プロローグ] 悲劇と始まり
当サイト『小説家になろう!』では初投稿となります。まだまだ未熟な点は多々ありますがよろしくお願いします。
キキィィィ!!
タイヤの摩擦する音が響き渡る。
『春っ!』
『新斗君!』
やがて訪れる、衝撃音。
二つの人影が宙を舞った。
***
『どうにかならないんですか!?』
そこは病院の一角。
一人のがたいのいい男が叫ぶ。
その前にいる白衣を着た医者の男性は首を横に振る。
『そ、そんな……』
医師はそのまま踵を返し、扉の向こうに戻っていった。
“手術中”と書かれた赤いランプが点灯し、再び長い戦いが始まる。
***
少年は暗闇にいた。
どこまでも続いていそうな深い闇。
『ここは……どこだ?
……春?春!?』
少年の声は闇の中では響いているのかさえわからない。『新斗君……』
ふと後ろから聞こえた声に少年は勢いよく振り返る。
するとそこには探し求めていた少女の姿があった。
『春!』
少女の元へと走り出そうと足を動かす。
しかし、足は動いているのにいっこうに距離は縮まらない。
『新斗君……。あなたは生きて?』
『は?な、何言ってるんだよ?一緒に帰ろう!?』
少年は必死に懇願するが少女は首を横に振り、きっぱりと否定する。
そして、二人の距離が少しずつ離れていく。
『春っ!春ぅっ!』
少年は走るが、距離はどんどん離れていくだけ。
その闇の中で少年が見たのは――
『ばいばい、新斗君……』
目尻に涙を溜めながら、輝くような笑顔を見せる彼女の姿だった。
***
『春!』
勢いよく体を起こす。
するとそこは見慣れない部屋。
体にはいくつものケーブルが刺さっていて、それが繋がっている機械からはピッピッピッと電子的な音が鳴っていた。
周りを見渡してみても彼女の姿はない。
『新斗君……!』
『おじさん……』
彼女の代わりに立っていたのは男性。
『おじさん……春風は……?』
声が震える。嫌な予感しかしない。
彼の表情を見たらそんなことは一目瞭然だった。
『春は……
――死んでしまった……』
***
それは、もう一つの始まり。
『おい』
『…………』
『おい、起きろ。
こんなとこで寝てると風邪ひいちまうぞ』
『…………』
『……ったく。しょうがねえなぁ……』
彼女は眠っていた。
ある学園の屋上で。
男は見つけた。
その少女を。
『こんなとこ誰かに見られたら大変なことになるな……』
『………………』
『…………うおっ!?』
『………………』
『よ、よう。調子はどうだ?』
『………………誘拐犯?』
『…………!』
『………………あ、逃げた』
その少女は見ていた。不思議な格好をした女の子を。
そして感じた。不思議な力を。
***
願い。
それは未来を望むこと。
全ての世界にはあらゆる願いが溢れている。
願いは力。 糧として宿主に希望を与える。
その世界には一つの石があった。
青く透き通る水晶のように綺麗な石。
それは、強い願いを叶える。
良い方にも悪い方にも。未来をねじ曲げる力を持つ。
その石を巡る物語がここに始まる。
タリスマン
願いを叶えるために人は強くなる。