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第1話 同じ朝

朝は、いつも同じだった。


目覚ましが鳴る三秒前に、俺は目を覚ます。

カーテンの隙間から差し込む光の角度も、外を走る電車の音も、まるで昨日の続きのように正確だ。


いや、昨日と同じなのだ。


顔を洗い、コーヒーを入れ、テレビをつける。

ニュースキャスターが同じ事件を、同じ順番で読み上げる。

俺はその内容を、すでに知っている。


「またか……」


小さく呟いても、世界は何も変わらない。


最初は偶然だと思った。

次は疲れているせいだと考えた。

三度目で、ようやく理解した。


――これは、繰り返されている。


日付は進んでいる。

時計もカレンダーも正常だ。

だが出来事だけが、同じ場所を回り続けている。


会社へ向かう途中、駅の階段で老人が転ぶ。

俺が手を伸ばせば助かり、伸ばさなければ骨を折る。

どちらを選んでも、夕方には別の場所で、別の誰かが倒れる。


結果は変わらない。

ただ、順番と理由が違うだけだ。


俺は試した。

わざと違う選択をした。

遅刻もしたし、仕事をサボった日もある。


それでも夜になると、必ず同じ感覚に襲われる。


――また一段、下りた。


説明のつかない確信だけが、胸の奥に残る。

これは円ではない。

同じところを回っているようで、確実に深く沈んでいる。


ある夜、夢を見た。


巨大な螺旋の底で、誰かが言った。


「選択していると思うな」

「選ばされているだけだ」


目が覚めたとき、スマートフォンに知らないメモが残っていた。


《スパイラル・オブ・フェイト

 抗うほど、速く回る》


俺はその言葉を消せなかった。

なぜなら――

次の日の朝も、俺は同じ三秒前に目を覚ましたからだ。

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