九話 任務
「今日はもう寝るとしよう。典子の見張りは1時間交代で行う。最初は私がやるからみんなは寝てるといい。」
あの後俺たちは朝が来るまで寝ることにした。男組は床で、ルイは壁にもたれかかって寝ている。典子には俺のベッドを利用させた。
数時間経って、篤男さんに起こされた。
「ほら、お前で最後だ、7時まで頼むぞ。」
「、、、、?、、、あ、はい。」
そういうと篤男さんはあくびをしながら床に寝転がった。
見張りっていっても誰もこないと思うんだけどなぁ。今は6時ちょうど。朝までぼーっと典子を見ておくか。
だんだん日がのぼりはじめる。そういえば、ケイルシールの心臓の1つはおれの爺ちゃんが潰したのか。冥斬士だったのか?爺ちゃんについてもほとんど記憶がない。顔も、、全く覚えていない。今は鹿児島の病院で入院してしていると母さんに聞いたが、今度久しぶりに会いに行くか。
「ん、、、、うん、、」
典子が体を起こして、目を擦りながらこちらを見てきた。何か話しかけるべきか?
「典子はいつもこんな早くに起きるのか?」
周りに気を遣いつつ小声で話すかける。
「、、、うん、、、」
まだ頭がまわっていないのか、返事が曖昧だ。
「にしてはいつも学校ギリだよな。」
「、、、うん、、えっ!い、いや、今日はちょっと早く起きちゃっただけで、いつもはギリギリだよお!」
「そうなのか。」
「あの、内貴君、、、も、もしかして、私の部屋の壁見た?」
「壁?いや、暗くてなにも見えなかったな。」
「ならよかった、、、、、その、推しのアイドルのポスター貼ってたから恥ずかしくて、、」
「お、おう。」
典子と話すのってこれが初めてだよな。
「前から気になってたんだけど、そのお守りなに?」
典子は俺の机を指差してそう言った。
「昔誰かから貰ったんだよ、それでなんとなくつけてる。でもこれすごいんだぜ、あらゆる災いから守ってくれるんだよ!いやまじで。」
「へぇー!すごいんだね。」
「なんだ憧也君達もう起きたのか。」
「ったく早いんだよ、あれから一睡もできてないんだぞ。」
「篤男さんすみません。」
みなが続々と目を覚ます。
「では少し早いが、これからの動きを伝える。憧也君、ルイ、典子は学校へ行ってくれていい。学校まではミミが見張っておくから心配するな。」
「私にまかせてね!」
「、、、勝手にでてくるな。そして涼、篤男、ウォルフは行ってもらいたい場所がある。場所は後から伝える。」
「おう!わかった!」
「俺とウォルフ、またパシリかよ、、」
涼と違って篤男さんは乗り気ではないみたいだ。
「あの、俺たちもなにかしましょうか?」
「大丈夫だ。憧也君たちは出来る限りいつも通りの動きをしてくれ。」
「分かりました。」
その後俺たちは3人で学校へ向かった。朝食の時に母さんが典子を見て驚いていたが、なんとか誤魔化した。
典子の荷物を取るべく、3人で一度典子宅に向かう。
「そういえばルイの荷物はどうなんだ?」
「安心して、私のは収納してあるから。」
「なるほど。」
「???」
典子がぽかんとしているがスルーする。
「あのー、2人とも、結局なんで私って内貴君の家に連れて行かれたんですか?命が危ないって言われたんだけど。」
そういえば奈織さん説明してないな。うーん、全部言っていいのやら、、
「劇の練習だよ。僕らは文化祭で誘拐犯の役をするからね。」
いやいや、さすがに無理があるだろ。ピッキングもばっちりこなしちゃってるし。
「ほぉーー!すごいんだね!!それなら結構上手だったよ!」
馬鹿でした。ちゃんと天然でしたわ。
「そ、そうなんだよー、えへへへ。」
「そういえば今日の午後、文化祭の準備だね!お化け屋敷成功するといいなぁー。」
今までだとケイルシールはこの時間で典子にとりつくんだ。ルイも目を光らせて周りを警戒している。
いつものカーブミラーを過ぎ、そしてコンビニも通りすぎる。
学校まで着いてしまった、、、。未来が変わった?やはりケイルシールは典子に取り憑く必要があったが、俺たちが匿っていることに気づいて諦めたのか?それなら話がはやい、典子を常に奈織さんの管理下におけば、あいつは動けない。
あれ、今日は陽、休みか、、、。
チッ、チッ、チッ、、、
今は8時41分。確かループ経験前はこの時に典子が遅刻できて、、、。
「すみません!遅れました!」
「っっっ!!」
なんだ、陽か、、
「陽、珍しいな、、早く席に着け。」
「はいっ!」
その後も時間は過ぎていき、今は8時43分。
乗り越えた、、、。ここからは未知の領域。臨機応変に対応してけ。
休み時間。
「陽、お前なんで遅刻したんだ?」
「いや、道ですれ違ったお婆さんの荷物を持って一緒に隣町まで行ってたら遅くなっちまった。」
「ふーん。で、ほんとは?」
「ほんとだよ。」
「いやいや、おかしいだろ。陽はいつも6時登校なんだ。だから家は5時30分に出るとして、着いたのが8時41分、隣町に歩いて行ったことがあるが、おれでも往復2時間もかからなかった。ほら、辻褄があわないだろ?何人のお婆ちゃん助ければこんな遅くなるんだよ。」
「、、、お前、オブラートに包むと、なんか、こう、すごいキモいな。」
「包みきれてねえよ。オブラート突き破ってるじゃねえか。」
「昨日ちょっと夜更かしして、寝坊したんだよ。だから家出たのも7時くらいだったんだ。そんなことより、ノート貸してくれ!」
「あ、、、今日やってねぇ。」
2人揃って今日は立たされた。
午後になり、各々文化祭の準備を始めた。
俺と陽は窓拭きだ。せっかくならお化けの仮装とかしてみたかった。
「なあ、憧也。今日時間あるか?」
「、、?まあ、あるにはあるけど。」
「ちょっと付き合ってほしくてな。というのもな、森の中に古い小屋を見つけたんだよ。中に入りたくても怖くてな。」
正直そんな遊びに付き合ってる暇ないんだけどな。
「なんだ、そんなことかよ。俺も暇なわけじゃねえからそれは無理だ。」
「頼むよぉ、気になって仕方ないんだよぉ。1時間で終わるから。な?」
「わかったよ。行けばいいんだろ?」
「さすが親友だ!」
「こっちだ!」
「この森の中にこんな道があったとはな。よく見つけたなこんな所。」
「へへっ、まあな。、、、ここだ。」
森の中を体内時計で23分歩いたところには、今にも崩れそうな民家が1つ建てられてあった。
「なんだ、ここ、、ま、入ってみるか。、、、失礼します。、、、ものすごくあついな。」
「本当にな、、水持ってきたんだ、飲めよ。」
「ありがとう。」
ゴクゴクと水を飲み干す。うまい。
「てか、なんだ、ここ、、、」
そこは明らかに人が住める場所ではなかった。というか、ヤバい空気がぷんぷん漂っていた。壁には斧やナイフ、狩猟銃までかけてある。訳のわからない道具もちらほらある。
「なあ、ここ明らかヤバいんだが、俺たち殺されたりしないよな?だってこの椅子なんて拷問するためだけに作られたみたいな見た目し、、、」
そこで俺の意識が途切れた。