五話 襲撃
「失礼します」
俺の家にきたルイは執事のような挨拶をした。どんな育ち方したらこうなるんだよ。
「まあ!憧也がこんなに綺麗な人連れてくるなんて、夢でも見てるのかしら」
「母さんただの友達だよ」
「もちろん夜ご飯はうちで食べるわよね!母さんちょっと買い物してくるから2人でゆっくりしてて♡」
「かーさーーん、こいつー、おとこだからーーー」
誤解されてはまずいと思い、走って買い物に行く母にそれだけ告げた。
「とりあえず俺の部屋こいよ」
「憧也君、大胆...///」
「母さんのに乗っからなくていいから」
2階にあがり、部屋のドアをひらく、
そこには
ドレッドヘアで色黒の巨漢が黙想して座っていた。
「なっ!」
次の瞬間その男は俺の目の前に瞬時に移動しメリケンサック付きの拳で殴りかかってきた。
「ウォルフさん。どういうつもりですか?」
どこから出したかわからない紫の模様つきの刀でそれをうけとめルイはそう言った。
(なんなんだよ、完全にヤクザじゃねぇか)
「ルイコソナンデソイツノミカタ、スル」
「彼が救世主だからです」
「イミ、ワカラナイ」
「…………っ!!憧也君伏せて!」
バンッッ!
銃声!?窓が割れて銃弾がとんでくる。痛っ、頬にかすったのか血が飛びちる。
「坊や、外のもう1人を頼めるか?」
「まかせろ!行ってくる!」
そう言って涼は外へ飛び出した。大丈夫なのかよ。ルイは部屋を傷つけないように立ち回っているのか男の攻撃を受け流すことに必死になっている様子だ。
……っはやっ!ルイが目にも止まらぬ動きで動き剣の柄頭で男の脇腹を突く
「グォッ」
「ウォルフさんは大人しくしといてください」
か、カッコいいーー!!ドラマとかで良く見るやつだ。剣先を男の首元にあてたままルイはそう告げた。あとは涼がうまいことやってくれれば、
「ただいまー」「ひぃ、ごめんなさいもうしません。ゆるしてくだひゃい」
涼が帰ってきた。何か別の声も聞こえる。
「ほらよ!」
涼は蜂にでも刺されたようにボコボコに膨れ上がった顔の男を連れてきた。
「あなたは……篤男さんですか?」
「おお!ルイひゃん、助けて、このガキにやられてよ〜」
「いやです。2人とも一体何してるんですか。一般人を突然襲うなんて」
「いやこいつの中に悪魔が、、ってあれ半分生きてんのか?」
「はぁ、とりあえず話をしましょう」
そう言って俺たちは話し合いをはじめた。
「まずあなたたち2人は誰なんですか?」
「俺らはルイと同じく冥斬士の篤男、こっちは」
「ウォルフ、ダ、ヨロシク」
「はあ」
「篤男さんたちはなぜ憧也君を襲ったんです?」
「いや、本当は明日の予定だったんだがな悪魔の気配がしたから予定を変更して、」
「理由になってません」
ルイが篤男を詰める。怒らせると怖いんだな。ん?
「篤男さん。俺が悪魔ってどういうことですか?ルイも言ってたけど……」
「あ?あぁ、悪魔っていわば死の象徴みたいなもんなんだよ。だから俺らはそれを勘違いして間違えておそっちまった。すまん。」
すまんで済まんで?危うく死にかけたんだからな。
「そもそも悪魔ってなんなんですか?涼からもそんなこと聞いたんですけどいまいち分からなくて。」
「僕から説明しよう。悪魔はかつて天界で禁忌を犯した神が処刑されたことで誕生したと言われている。言わば負の感情の集合体みたいなものだ。そして最初に誕生した悪魔ケイルシールが各地に自身を分裂させたものを送り込み勢力を拡大させていった。それは今になっても変わらない。つまり弱い悪魔から強い悪魔全てがケイルシールの一部であり、それを倒し切るまで悪魔は滅亡しない。」
「……」
なんとなくは理解できた。ただ、なんだよそれ。むちゃくちゃじゃないか。
「それでルイちゃんのさっきの返答としては、俺たちも詳しくはしらないんだけどよ、上からの命令でな内貴憧也を殺せって言われた。そんだけだ。」
「もしかして奈織さんもいるんですか?」
「あ、ああ俺たちに内貴家を見張っとけって命令してからどっかいっちまったけどな」
「なるほど、状況がみえてきました」
うん、どこが?とつっこみたくなるけど我慢。
「なあなんでルイちゃんはそいつの味方すんだよ」
「……彼がループしてるからです」
「なっっ……!」「ナニッ?」
ウォルフと篤男が目を皿にする
「彼が半分だけ死んだ状態になったいるのが何よりの証拠です」
篤男がおれをまじまじとみる。
「……死んだのは1回目か」
そんなことまでわかるの?冥斬士すげぇ
「ただ奈織さんが上の命令を鵜呑みにするとは考えられない。おそらく別行動して上の情報を探ってるのでしょう。たぶんですが上層部に悪魔の味方をしている者がいます。」
「俺らは騙されてたったことかよ。……あとそこのちびっこは何者なんだ?恐ろしいほど強かったけど。」
「それは僕も気になるな。憧也君説明を頼む。」
「そう言われても……俺も今朝会ったばかりでよくわかんないんだけどよ、俺を救うためにやってきた魂で、神を自称している。くらいかな。あと、多少の魔法が使えるって。」
「「神ぃ?」」
そりゃそうなる。俺だってそうなった。
「トウヤ、まだ疑ってんのか?もういい、みんな見てよろ」
そう言って涼は何かを唱えだした。
「とうっ!」
「ま、眩しいっ!」
あたりが輝いて、涼の頭の上にキラキラした漢字の『神』が浮きあがった。
「とにかく俺は奈織さんと話してみる。ウォルフ帰るぞ」
「お、おい無視すんなよ」
「わかった。憧也君今日はお邪魔した。また明日くる。」
「あ、ちょっ、俺明日の朝には死ぬんですけど……守ってほしいんですけど……」
「そういえばそんなこと言っていたな。わかった僕たちに任せてほしい。ただ、ループ前の世界線の僕がそんなことを見過ごすはずないんだがね。まあいい憧也君を殺したのは誰だい?」
「典子です」
(典子か。少なくとも今日はあの教室の中にトウヤ君のほかに悪魔の気配はなかった。)
「了解した。明日また学校で会おう。」
そう言ってみんな帰っていった。
「……とんでもない日だったな。涼はどこで寝泊まりするんだ?」
「ぐすんっ……僕、そんなにつまらなかったかなあ?結構面白いとおもったんだけどなぁ…………」
体操座りしながら涙で地面に『神』と書いている。
「みんな涼の神々しさに恐れ慄いて声も出せなかったんだよ。気にすんなって。冷蔵庫にアイスあるからそれでも食おうぜ?」
「……僕、ハーゲンダッツがいい……いちご味」
「お前、落ち込んでないだろ」
その後俺たちはパピコを半分ずつにして食べた。




