四十九話 勝利の味
「ここで大人しくしていろ。」
「…………」
行ったか?
「よし、爺さん複製できたか?」
「うむ。」
「ここに出せるか?」
「うむ。」
爺さんが手をかざすと壊す前の薄いタイムマシンが現れた。
「っしゃー!!」
悪魔と人が混ざっている俺はこれに乗れると信じたい。
ゆっくりとタイムマシンに手を伸ばす。
ピトッ。
人差し指が触れる感覚……いける!!
「爺さんまじでサンキューな!!あんたと出会っててよかったぜ!」
「うむ。」
「あとは理央奈とジークに無事戻れたことを伝えたいが……爺さんに頼もうにも、他の人には見えないし……」
「それなんじゃが、ジークとやら、わしのことを見ておったぞ。」
「まじか!じゃあ、それも頼めるか!?」
「うむ。」
「あそこです、タイムマシンを作ったという人間を捕まえてあります。」
「……時間ないっぽいな……行くか。」
「気をつけての。」
「ああ!」
『タイムマシン起動。2025年7月2日8時26分にタイムスリップします。3・2・1...……』
「……いない!?なんで……」
「逃げたぞ、探せ!!」
重力はあんまりかからないな。
これが技術の進歩ってやつか……。
俺は行くんだ。
2025年7月2日に。
全ての真実を知り、唯一、皆を助けられる時間に。
視界が徐々に明るくなる。
「ここは……篤男さんとウォルフが死んだ場所!!」
俺はタイムマシンの窓越しに景色を眺めていた。
タイムマシンは宙を浮いている。
「ちょっ!嘘だろ……」
タイムマシンが透けて消滅し始めていた。
複製品だからなのか……?
パッ!
完全に消滅し、身が宙に放りだされる。
おそらくあと1分もしないうちにケイルシールが現れる。
目を凝らし、典子、ウォルフ、篤男を探す。
…………
「いた!!」
2人は典子を追跡していた。
そして、
視界の端に黒く蠢く物体が写る。
「ケイルシール!!」
右手に電気を溜め、篤男さん達を殺そうとしている。
空気抵抗をなるべく受けない姿勢をとり、最速で救助に向かう。
「間に合えよ!!!!」
ドゴォォォォォン……
「…………」
《貴方……何故ココニ……》
「憧也!?……は?さっきまで電話して……って……は?」
「憧也君!?」
「間に合ったか……。よお、ケイルシール。これで最後だ!!」
《何故貴方ガ……マアイイデショウ、ドッチミチ殺スツモリデシタカラ。》
「0.25秒」
《ハ?》
「誰にも言ったことねぇ俺の特技の話をしてんだよ!!」
《何ヲ言ッテイルノカ理解シカネル。》
ドンッ!
奴の姿が消える。
だが……
キンッ!!
《何ッ!》
「だろうな……やっぱり最初は腹狙うよな。」
《小癪ナ!》
「台詞まで一緒かよ……」
散々シミュレーションでやってきたこと。
もう迷いはなかった。
あとはこいつを、今までの全てをのせて……
ぐちゃぐちゃにするだけだ。
「ははッ!!ぶっ殺してやるよ!!」
《無駄デス……私ノ心臓ハ……》
「この中にあるんだろ!!」
《ッッ!!》
「………悪魔にはそれ相応の死をくれてやる!!」
チッ……チッチッ……
3分まで残り、30秒。
村正による斬撃を早める。
《グハァッ!!》
「っっ!!あったぞ!!これかっ!!じゃあな化け物!!」
《フザケルナァァァァァァァ!!》
グチャッ!
「……はあ、はあ……」
もうそろそろか
「憧也、お前……」
「憧也君……」
「トウヤナンデ……」
あと5秒、4秒……
「みんな、生きててよかった。」
0
最後は満面の笑みでそう言った。
*
「こっちだ!」
「涼、お前場所わかるの…………」
突如、今までの記憶が流れ込んでくる。
「トウヤどうした……急に立ち止まって……」
「どうしたの?憧也君……」
……成功だ。
俺は……世界を書き換えた。
この血に塗れた夏を描き直したんだ。
「よかった……本当に、よかった……」
「ちょっ、離れろよ気持ち悪りぃ!」
「……//」
気づけば2人を抱きしめていた。
「あっ!憧也、お前どういうことだよ!!」
「篤男さん……それにウォルフさんも……」
「い、い、か、ら、説明しろ!」
「いひゃい、いひゃいれす、あつおひゃん!」
篤男さんにほっぺをつままれる。
「その、信じてもらえるかわからないですけど……俺、未来から来たんです。」
「「「「未来!?」」」」
「み、み、み、み、み、未来って、あの未来か!?」
「トウヤ、俺どうなってた?イケメンだったか?」
「トウヤスゴイネ。」
「憧也君、それはループとはまた違うってこと?」
「みなさん、ちょっと落ち着いてください!……ただ1つ言えることは」
そう、
俺たちが自身を犠牲にしてまでも欲しかったもの。
たくさんの人が命をかけて、次の世代に託してきたもの。
それが手のひらの中に溢れんばかりに広がっていた。
「俺たちは……勝ちました!!」




