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二十一話 収拾

「涼、グレイスはきたか?」

 

陽の家が気になったため帰り道によることにした。

 

「なーんもない。せっかくやる気だったのにつまんな」

 

陽の家に到着した頃には涼は玄関で寝そべっていた。

 

「困ったなあ、いつくるかわからない来訪者を待ち続けるわけにもいかないしな……」

「結界はっておいたから大丈夫だと思うぞ。」

「結界?」

「うん、悪魔が入れないうえ、少し触れただけで俺に知らせがくる仕組みになってる。」

「すげえな、じゃあ今日は帰るか。」

「それといろんな魂に聞き込みしたんだけどあの赤い目の子供は誰も知らないってさ。」

「う〜ん……みんなに情報共有したほうが良さそうだな。奈織さんなら何か知ってるかも。」

 

陽は来なかったか……


 

「なあ、トウヤこの部屋暑くないか?」

「仕方ないだろ、夏なんだし。」

「エアコンつけていいか?」

「え〜、俺なぜかアレルギーでるんだよ。窓開けるからそれで我慢してくれ。」

「ちぇっ」

 

俺たちは部屋にもどり寝る準備をしていた。確かに暑いし扇風機でも買いたいな……

 

「ん?…………うううわぁ!お前!あの時の!!」

 

 窓を開けた瞬間見計らったとばかりにボロボロの布切れを被った子供が部屋に侵入してきた。

 

「お前、何者な」

「黙れ。殺されたくないならこれ以上詮索するな。お前らは全てが終わるまでじっとしていろ。」

「…………は?」

 

そのまま窓を飛び出てどこかへ行ってしまった。

 

「ちょっ、おい!!」

「トウヤ、追うか!?」

「くそっ、はやすぎんだろあいつ……やめとこう。もうどこにいるかもわかんねぇ……」

「なんなんだよあいつ。」

 

詮索するなって、事情くらい教えてくれたっていいだろうに。



 

「おーい、起きろー、今日文化祭なんだろ?おーい」

「……うーん……にゃむ、にゃむ、あと10分……くかー」

 

 よし、イタズラチャンス到来!この前はトウヤママに見られたからな、なるはやで準備しよう。

 

「これを……こうしてって……うんバッチリ。おーい、起きろー。おーい、おーい、おーい、」

「うーん、うるさい……うわぁぁぁぁああ!!誰だ!!」

「くっくっくくくくく、誰だ!!だって……ぷぷぷっ……」

 

 そこでは俺がこちらを凝視していた。あっちの俺も戸惑っているように見える。……鏡か…………。


殺す。

昨日のチャンスをものにできなかった俺をタコ殴りにしてやりたい。こいつはそういうやつだった。

 

「知能が一切成長しない猿め。末代まで呪い殺してやる。」

「こっっっわ!!違う角度で怖いわ!!やめてやめてそういうの!!もう死んでるし。」

「トウヤー、起きたのー?母さんも文化祭いく準備したいから早く朝ご飯食べてちょうだい。」

「ちっ…………はーい。」


 

「おはよう憧也くん。」

「おう、ルイも早いな。…………って典子!?」

「あはは、おはよう。」

 

そこには車椅子の女がいた。それをルイが押している。

 

「体は大丈夫なのか?」

「まだ安静にしとかないとダメだけど、先生に無理言って今日だけはって。」

「僕が同伴するからって許可してもらったんだよ。そへと憧也君ちょっといいかな。この件について質問がいくつかあるんだけど。」

「あ、はい。」

 

そういえば誰にも言ってなかったな。

その後一通りの説明をした。

 

「赤い目の子供……ね。僕も聞いたことないかな。わかった、こっちでも探ってみるよ。」

「いやいやそれはいいんだ、なんか命が危ないっぽいし。」

「?」

「憧也!!!」

 

陽……かなり急いできたのか肩で息をしている。

 

「昨日はすまねえ!!俺が間違ってた!!自分を犠牲にすればいいなんてよくなかった、やっぱ俺は……俺は家族と一緒に生きたい!!…………さあ、思う存分殴ってくれ!!」

 

手を大の字に広げて目を逸らしてそう叫ぶ。

 

「ちょっ、陽、みんな驚いてるから……」

「いや、これは俺の決意だ!!頼むからブってくれ!!」

 

非常に困る。廊下でこんなことやめてくれよ。俺と陽(あとルイと涼)を囲うように人の円ができている。

 

「昨日は俺も悪かったから……な?お互い様ってことにしないか?」

「お前が悪いところなんて一個もないだろ!!俺を目覚めさせてくれたんだ!!」


 知ってるよ。俺が悪いことなんてちょっともないよ。この状況を打開するために言った嘘だというくらい理解しろよ、この脳筋め!!

 

「……あっ、あれ俳優の……えっと、ひ、と、だあーー。文化祭、きてくれたんだ、ねーー。」

 

 典子!!ナイス!!人だかりが一気に消えて窓から外を見よう見ようとしている。

 

「歯くいしばれよ!!」

 

俺は強烈なグーパンチをかましてやった。

陽が床に倒れる。

ついでに勢いあまって俺も倒れる。恥ずかしい。思いっきり人殴ったことなんてないから仕方ないだろ。

 

「……」

「……」

「……はっはははははは!!」

「……ぷっ……はははは!!」

「ありがとうな!おかげでスッキリしたぜ!!これで気兼ねなくグレイスとかいうくそ悪魔もぶっとばせる!!」

「……よかったよ、お前が戻ってきてくれて。」

 

こいつもこいつなりに考えた結果なんだろう。

 

「よかったね、2人とも。」

「陽のやつ、いいところあるじゃねえか!!」

 

ルイと涼が声をかけてくる。

 

「はーい、ホームルームはじめるぞー。」

 

先生のご到着だ。

 

「午後一緒に回ろうぜ!1時食堂集合な!」

 

初めての平和な文化祭が始まった。

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